問題
事例を読んで,A介護老人保健施設のB支援相談員(社会福祉士)によるCさんの特性への理解として,次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。 〔事 例〕 Bが担当する入所者のCさん(86 歳,女性)は,定年退職まで約40 年の間,幼稚園教諭として勤め,5 年前に夫を亡くし,自宅で一人暮らしをしていた。1 年前にアルツハイマー型認知症と診断され要介護1 の認定を受けたが,介護サービス等の利用はなかった。1 か月前から,夜間に近所を歩き回り,自宅に戻れなくなることが何度かあり,民生委員と主治医の助言で10 日前にA施設に入所した。入所後,Cさんは夜間に十分な睡眠ができるようになり,昼間は他の入所者と趣味活動で交流し,穏やかに過ごしている。今日,A施設を小学校の児童が訪問して童謡を合唱した際,Cさんが「私がピアノを弾いてもよいか」と言い,見事に合唱のピアノ伴奏をした。CさんはBに向かって満面の笑みを浮かべた。
【出典】公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「第38回社会福祉士国家試験(令和7年度)」問題85
※問題文は同センター公表のものを改変せずに掲載しています。
※解説・補足は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※本問は出題当時の法令・制度に基づいています。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
※この解説は goukaku-navi.jp が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。
※出題当時の法令・制度に基づく問題です。現在の制度と異なる場合があります。
正解は 4 です。
結晶性知能とは、長年の経験や学習で積み重ねてきた知識・技能にもとづく知能で、年をとっても比較的保たれやすいといわれます。Cさんは約40年間幼稚園教諭として働いており、童謡のピアノ伴奏を見事にこなしました。認知症があっても、長年身につけてきた力が保たれていると理解できます。
ほかの選択肢の誤り:夜に歩き回って家に戻れなくなる行動は、中核症状そのものではなく、行動・心理症状(BPSD)として理解します(1)。まだら認知症は血管性認知症で見られやすい特徴です(2)。感覚記憶はごく短い記憶で、事例からは判断できません(3)。心気症状(体の不調への過度なこだわり)は事例に出てきません(5)。
なぜこれが正解か
正解は 4。結晶性知能は、経験や学習によって蓄積された知識・技能・判断力にもとづく知能で、加齢による低下が緩やかとされる。約40年の幼稚園教諭としての経験に裏打ちされたピアノ伴奏ができたことから、アルツハイマー型認知症があっても、Cさんの結晶性知能の低下は緩やかであると理解できる。
各選択肢の解説
- 1(不適切)夜間に歩き回り自宅に戻れなくなる行動は、記憶障害や見当識障害などの中核症状を背景に生じる行動・心理症状(BPSD)と理解するのが一般的である。入所後に睡眠が整い穏やかに過ごせていることも、環境の影響を受けやすいBPSDの特徴と合う。
- 2(不適切)まだら認知症(障害される機能とされない機能が混在する状態)は、血管性認知症に典型的な特徴であり、アルツハイマー型認知症の典型例とはいえない。
- 3(不適切)感覚記憶は、感覚器から入った情報を数秒以内だけ保持する記憶で、事例の内容から判断できるものではない。
- 5(不適切)心気症状は、身体の不調を過度に気にする状態であり、事例にはそのような訴えは示されていない。
正解の根拠
正解は 4。知能は、キャッテルらの理論で流動性知能と結晶性知能に分けて説明される。
- 流動性知能:新しい場面に適応する力、情報処理の速さ、推論など。比較的早い時期から加齢に伴い低下しやすい。
- 結晶性知能:経験や教育を通じて蓄積された知識・語彙・技能・判断力。高齢期まで維持されやすく、低下は緩やかとされる。
Cさんのピアノ伴奏は、幼稚園教諭として長年繰り返してきた技能の発揮であり、蓄積された経験にもとづく力が保たれていることを示す。厳密には、楽器の演奏のように体で覚えた技能は手続き記憶にも関わり、手続き記憶はアルツハイマー型認知症でも比較的保たれやすい。いずれの観点からも、「長年培った力は残っている」というストレングスの理解が導かれる。
誤りの選択肢の掘り下げ
- 1 中核症状とBPSD:中核症状は脳の神経細胞の障害で直接生じる症状(記憶障害、見当識障害、理解・判断力の障害、実行機能障害、失語・失認・失行など)。BPSDは中核症状を背景に、環境や心理状態、身体状況などが影響して生じる症状(徘徊とされる行動、不安、焦燥、妄想、暴言、睡眠障害など)。Cさんの歩き回りは、入所後に睡眠が整うと落ち着いており、環境調整で変化しうるBPSDとして理解できる。
- 2 まだら認知症:脳血管障害の部位によって障害される機能に差が出るため、「できること」と「できないこと」が混在し、症状に日内変動がみられることもある。アルツハイマー型認知症は、記憶障害を中心に全般的にゆっくり進行するのが典型である。Cさんにできることが残っていることだけを根拠に「まだら」と判断するのは誤りである。
- 3 感覚記憶:記憶は、感覚記憶(数秒以内)→短期記憶(作業記憶)→長期記憶(エピソード記憶、意味記憶、手続き記憶など)と分類される。事例のピアノ演奏が示すのは長期記憶に属する技能の保持であり、感覚記憶について判断する材料はない。
- 5 心気症状:高齢期のうつ病などでみられることがある、身体の不調への過度のとらわれである。
支援への活かし方
介護老人保健施設の支援相談員としては、Cさんの「幼稚園教諭としての経験」「音楽や子どもとの関わり」を本人の強みとして捉え、レクリエーションでの役割づくりなど、本人の自尊心と生活意欲を高めるケアにつなげることが大切である。パーソン・センタード・ケアの考え方とも一致する。
関連論点
- アルツハイマー型、血管性、レビー小体型(幻視・パーキンソン症状・認知機能の変動)、前頭側頭型(人格変化・常同行動)の特徴の区別は頻出である。
- 加齢による知能の変化は、横断研究と縦断研究で結果に差が出ることも論点になる。
出典と作り方
本問は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターが公表した「第38回社会福祉士国家試験(令和7年度)」の問題85です。同センターの「過去問題利用にあたっての留意事項等」(https://www.sssc.or.jp/pastissues/index.html)に従い、問題文は文言を変えずに掲載しています(PDFの折り返しによる改行位置の違いのみ)。 原本は同センターの「過去の試験問題」でご確認ください。
解説・補足は合格ナビ(goukaku-navi.jp)が独自に作成したもので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターとは一切関係ありません。 本問は出題当時の法令・制度に基づいています。社会福祉に関する法令・制度は改正されるため、現在の制度と異なる場合があります。最新の内容は厚生労働省などの公的な情報でご確認ください。
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