フレックスタイム制とは、始業・終業の時刻を労働者の決定に委ね、清算期間(3箇月以内)を平均して週40時間を超えない範囲で働く制度。導入の要件、総枠の計算(40時間×暦日数÷7)、1箇月超の週50時間・届出・有効期間を、労働基準法32条の3・32条の3の2と施行規則12条の3で整理します。
目次
結論:フレックスタイム制とは、就業規則等で始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねたうえで、労使協定で定めた清算期間(3箇月以内)を平均して週40時間を超えない範囲で働かせる制度です(労働基準法32条の3第1項)。清算期間の総労働時間の上限(総枠)は、当サイトの計算では「40時間×清算期間の暦日数÷7」。清算期間が1箇月を超えるときは、1箇月ごとの平均が週50時間を超えないことも必要で(同条2項)、協定には有効期間の定めが要り(労働協約による場合を除く。施行規則12条の3第1項4号)、所轄労働基準監督署長への届出も要ります(同条4項)。
「フレックスタイム制」は、会社員として働く人も、社労士試験を受ける人も検索する言葉です。この記事は、労働基準法・同施行規則(e-Gov 法令検索)の条文と、厚生労働省の公開ページだけをもとに、制度の意味・要件・総枠の計算・清算期間が1箇月を超える場合の追加ルールを整理します。個別の会社や個人の事情に当てはめた助言はしていません(導入や運用の相談先は、記事末尾の「相談先」に載せています)。
フレックスタイム制とは:始業・終業の時刻を労働者に委ねる制度
厚生労働省の「フレックスタイム制とは」のページは、フレックスタイム制を「3か月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で各日の始業及び終業の時刻を自主的に決定し働く制度」と説明しています。1日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、その中ならいつ出社・退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)に分ける形が典型ですが、コアタイムは必ず設けなければならないものではなく、全部をフレキシブルタイムにすることもできる、とされています。
| 言葉 | 意味 | 根拠 |
|---|---|---|
| 清算期間 | その期間を平均し1週間当たりの労働時間が週の法定労働時間(40時間)を超えない範囲内で労働させる期間。3箇月以内に限る | 労働基準法32条の3第1項2号 |
| 総労働時間 | 清算期間における総労働時間。労使協定で定める | 同項3号 |
| コアタイム | 労働者が労働しなければならない時間帯(定める場合のみ、開始・終了の時刻を協定で定める) | 施行規則12条の3第1項2号、厚生労働省のページ |
| フレキシブルタイム | 労働者がその選択により労働することができる時間帯(制限を設ける場合のみ、開始・終了の時刻を協定で定める) | 施行規則12条の3第1項3号、厚生労働省のページ |
| 標準となる1日の労働時間 | 協定で定める事項の1つ | 施行規則12条の3第1項1号 |
労働基準法・同施行規則(e-Gov 法令検索)には「コアタイム」「フレキシブルタイム」という言葉の記載がありません(2026-10-09 時点)。条文の言葉は「労働しなければならない時間帯」「選択により労働することができる時間帯」です(施行規則12条の3第1項2号・3号)。
導入の要件:就業規則等と労使協定の2つ
フレックスタイム制の根拠は、労働基準法32条の3第1項です。条文の構造を、要件ごとに分けます。
| 要件 | 条文の内容 |
|---|---|
| ① 就業規則その他これに準ずるもの | その労働者に係る始業および終業の時刻を、その労働者の決定に委ねることとした労働者について |
| ② 書面による労使協定 | 当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)との書面による協定で、次の事項を定める |
| 協定事項(1号) | この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲 |
| 協定事項(2号) | 清算期間(3箇月以内) |
| 協定事項(3号) | 清算期間における総労働時間 |
| 協定事項(4号) | その他厚生労働省令で定める事項 |
| 効果 | 清算期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間が32条1項の労働時間(40時間)を超えない範囲内で、32条の規定にかかわらず、1週間で40時間または1日で8時間を超えて労働させることができる |
4号の「厚生労働省令で定める事項」は、施行規則12条の3第1項が次のように定めています。
- 1号:標準となる1日の労働時間
- 2号:労働者が労働しなければならない時間帯を定める場合には、その時間帯の開始・終了の時刻
- 3号:労働者がその選択により労働することができる時間帯に制限を設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻
- 4号:清算期間が1箇月を超えるものである場合にあっては、協定(労働協約による場合を除き、労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む)の有効期間の定め
また、施行規則12条の2第1項は、32条の2から32条の4までの規定により労働させる場合には、就業規則その他これに準ずるもの、または書面による協定において、これらの条が規定する期間(フレックスタイム制では清算期間)の起算日を明らかにするものとする、と定めています。
総労働時間の上限(総枠)の計算:40時間×暦日数÷7
清算期間を平均して週40時間を超えない、という条件を総労働時間に直すと、清算期間の総労働時間は「40時間×清算期間の暦日数÷7」を超えられません(当サイトの計算。条文は「平均し一週間当たりの労働時間が…を超えない」と書いているだけで、この式そのものは条文にありません)。
| 清算期間の暦日数 | 計算 | 総枠(小数第2位以下を切り捨て) |
|---|---|---|
| 28日 | 40×28÷7 | 160.0時間 |
| 29日 | 40×29÷7 | 165.7時間 |
| 30日 | 40×30÷7 | 171.4時間 |
| 31日 | 40×31÷7 | 177.1時間 |
| 91日(4月1日〜6月30日) | 40×91÷7 | 520.0時間 |
| 92日(7月1日〜9月30日) | 40×92÷7 | 525.7時間 |
検算(当サイトの計算・2通り):30日は、1週間当たり40時間の30日分は、1日当たり40÷7=5.714…時間×30日=171.42…時間。逆に171.4時間を30日で割って7を掛けると、171.4÷30×7=39.99…時間で、40時間を超えません。91日は、91÷7=13週ちょうどなので、40×13=520時間で、式と一致します。
週所定労働日数が5日の労働者の特例(32条の3第3項)
1週間の所定労働日数が5日の労働者については、32条の3第3項があります。労使協定で、労働時間の限度について、清算期間における所定労働日数を32条2項の労働時間(8時間)に乗じて得た時間とする旨を定めたときは、1項の「32条1項の労働時間」(40時間)が、その時間を「清算期間における日数を7で除して得た数」で除して得た時間に読み替えられます(2項の週50時間の読替えをする場合も同じ)。平均の基準をこう読み替えると、清算期間の総労働時間の上限は「所定労働日数×8時間」になる計算です。たとえば、暦日数30日で所定労働日数が22日の清算期間では、総枠の式は171.4時間ですが、この定めをしていれば22×8=176時間が上限になります(当サイトの作例。検算:読み替えた週の基準は176÷(30÷7)=41.06…時間で、これに30÷7を掛けると176時間に戻ります)。この読替えは、1週間の所定労働日数が5日の労働者に限られます。
清算期間が1箇月を超えるときのルール:週50時間・届出・有効期間
清算期間が1箇月を超える場合は、次の点が加わります。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 週50時間の上限 | 清算期間を平均して週40時間を超えないことに加え、清算期間を開始日以後1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間が生じたときはその期間)ごとに、その期間を平均して1週間当たり50時間を超えないこと | 32条の3第2項 |
| 労使協定の有効期間 | 協定に有効期間の定めが必要(労働協約による場合を除く。労使委員会の決議・労働時間等設定改善委員会の決議を含む) | 施行規則12条の3第1項4号 |
| 届出 | 協定を所轄労働基準監督署長に届け出る(様式第三号の三) | 32条の3第4項、施行規則12条の3第2項 |
| 途中で入社・退職した場合の割増 | 清算期間が1箇月を超えるものであるときの当該清算期間中に労働させた期間が清算期間より短い労働者を、その期間を平均して週40時間を超えて労働させたときは、その超えた時間(33条または36条1項により延長・休日労働させた時間を除く)に、37条の例により割増賃金を支払う | 32条の3の2 |
1箇月ごとの週50時間の上限を総枠に直すと、31日の月は50×31÷7=221.4時間、30日の月は50×30÷7=214.2時間、28日の月は50×28÷7=200.0時間が目安になります(当サイトの計算。小数第2位以下を切り捨て。検算:221.4÷31×7=49.99…時間)。
当サイトの作例:4月1日〜6月30日(91日)を清算期間とし、総枠は520.0時間。各月の労働時間が4月120時間・5月230時間・6月170時間なら、合計は120+230+170=520時間で総枠の範囲内です。ところが5月(31日)は、1週当たり50時間に当たる221.4時間を超えているので、32条の3第2項の条件を満たしません(検算:230÷31×7=51.9…時間)。総枠だけを見て合計が収まっていれば足りる、という理解は、1箇月超の清算期間では誤りになります。
清算期間が1箇月以内のときは、届出の対象外です。32条の3第4項は32条の2第2項(協定の届出)を準用しますが、ただし書で「清算期間が一箇月以内のものであるときは、この限りでない」としているからです。届出の義務違反は、120条1号に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
1箇月単位・1年単位の変形労働時間制との違い
32条の2(1箇月単位)・32条の3(フレックス)・32条の4(1年単位)の違いを、条文の言葉で並べて比べます(1年単位の限度や1週間単位は変形労働時間制の記事、専門業務型・企画業務型の裁量労働制は裁量労働制の記事で扱っています)。
| 項目 | 1箇月単位(32条の2) | フレックスタイム制(32条の3) | 1年単位(32条の4) |
|---|---|---|---|
| 期間 | 1箇月以内の一定の期間 | 清算期間:3箇月以内 | 対象期間:1箇月を超え1年以内 |
| 平均の基準 | 1週間当たり32条1項の労働時間(40時間)を超えない | 同じ(32条1項の労働時間) | 週40時間を超えない |
| 定め方 | 労使協定または就業規則その他これに準ずるもの | 就業規則等で始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねる+労使協定 | 労使協定 |
| 労働日・時間の特定 | 特定された週・日 | 労働者が各日の始業・終業の時刻を決める | 協定で定める(対象期間を区分する場合は一部を後で特定) |
| 届出(条文) | 協定で定めたときは、その協定を届け出る(32条の2第2項) | 1箇月超の清算期間のみ(32条の3第4項ただし書) | 32条の4第4項(32条の2第2項を準用) |
社労士試験での問われ方と、間違えやすいポイント
出題の型を、問題文は載せずに、条文の言葉で整理します。
- ① 清算期間の上限(3箇月以内)と、1箇月を超えるときの追加条件(週50時間)を問う型
- ② 協定の届出の要否(1箇月以内か、1箇月を超えるか)と、有効期間の定めの要否を問う型
- ③ 総枠の計算(40時間×暦日数÷7)に数字を当てはめる型
- ④ 32条の2・32条の3・32条の4の期間・定め方・届出の違いを問う型
- ⑤ 清算期間の途中で入社した労働者に対する割増賃金(32条の3の2)を問う型
間違えやすい点は次のとおりです。
- 清算期間は「3箇月以内」です。1箇月以内ではありません(現在の条文は3箇月以内です。「1箇月以内」と書かれた古い資料に注意してください)
- 有効期間の定めが必要なのは、協定の清算期間が1箇月を超えるときです(施行規則12条の3第1項4号。労働協約による場合を除く)。1箇月以内の協定には、この号による有効期間の定めは要りません
- 届出が必要なのも、清算期間が1箇月を超える協定です。1箇月以内なら、32条の3第4項ただし書により、届出の対象外です
- 週50時間は、清算期間全体の平均ではなく、1箇月ごとに区分した各期間の平均です
- コアタイムの設定は必須ではありません。協定事項として定めるのは、定める場合に限られます
- 1箇月超の清算期間で、清算期間より短い期間しか働かなかった労働者の割増(32条の3の2)は、清算期間全体ではなく、働いた期間を平均して週40時間を超えた時間が対象です
この論点の問題を解く
相談先と、法令基準日
導入の可否や協定の書き方といった個別の相談は、この記事ではお答えできません。厚生労働省の次のページから窓口を探せます。
この記事が引用した労働基準法32条・32条の2・32条の3・32条の3の2・120条と、施行規則12条の2・12条の3は、e-Gov 法令検索の2026年4月1日現在の版と2026年10月9日時点の現行の版で、本文が同じです。社労士試験の法令基準日と日程は、受験年ごとに試験実施側が公表する受験案内で決まります(社労士試験の日程)。当サイトの社労士の問題は、過去の出題論点をもとに作成した論点別問題です。
まとめ
- フレックスタイム制は、就業規則等で始業・終業の時刻を労働者の決定に委ね、労使協定で定めた清算期間(3箇月以内)を平均して週40時間を超えない範囲で働かせる制度(32条の3第1項)
- 協定事項は、対象労働者の範囲・清算期間・清算期間の総労働時間・省令事項(標準となる1日の労働時間、コアタイム・フレキシブルタイムを定める場合はその時刻、1箇月超の清算期間では有効期間)
- 総枠の計算は「40時間×暦日数÷7」(当サイトの計算)。30日で171.4時間、31日で177.1時間
- 清算期間が1箇月を超えると、1箇月ごとの平均が週50時間を超えないこと、有効期間の定め(労働協約による場合を除く)、所轄労働基準監督署長への届出(様式第三号の三)が加わる
- 清算期間が1箇月以内の協定は、32条の3第4項ただし書により届出の対象外
本サイトは社会保険労務士試験の実施機関とは関係ありません。条文は e-Gov 法令検索の労働基準法・労働基準法施行規則にもとづき、厚生労働省のページの内容は2026年10月9日時点のものです。個別の事情に当てはめた助言は行っていません。
よくある質問
Qフレックスタイム制では、コアタイムを必ず決めなければなりませんか?
必須ではありません。厚生労働省の「フレックスタイム制とは」のページは、コアタイムは必ず設けなければならないものではなく、全部をフレキシブルタイムとすることもできると説明しています。労働基準法施行規則12条の3第1項は、労働者が労働しなければならない時間帯を「定める場合には」その開始・終了の時刻を協定で定める、と書いています(2号)。一方で、コアタイムがほとんどでフレキシブルタイムが極端に短い場合などは、始業・終業の時刻を労働者の決定に委ねたことにならず、フレックスタイム制とはみなされない、とも書かれています(同ページ)。
Q清算期間は最長で何か月ですか?
3箇月以内です。労働基準法32条の3第1項2号は、清算期間を「三箇月以内の期間に限るものとする」と定めています。1箇月を超える清算期間では、32条の3第2項により、清算期間を開始日以後1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間が生じたときはその期間)の平均が週50時間を超えないことも必要です。
Qフレックスタイム制の労使協定は、労働基準監督署に届け出る必要がありますか?
清算期間の長さで分かれます。労働基準法32条の3第4項は、32条の2第2項(協定の届出)を準用しますが、ただし書で「清算期間が一箇月以内のものであるときは、この限りでない」としています。つまり、清算期間が1箇月以内の協定は、同項の届出の対象ではありません。1箇月を超える清算期間の協定は、施行規則12条の3第2項により、様式第三号の三で所轄労働基準監督署長に届け出ます。届出をしなかった場合の罰則は、労働基準法120条1号に、32条の3第4項が準用する32条の2第2項の違反として挙げられています。
Q自社でフレックスタイム制を導入できるかどうか、この記事で判断できますか?
この記事は、労働基準法・同施行規則の条文の内容を試験の学習向けに整理したもので、個別の会社や個人の事情に当てはめた判断はしていません。導入の可否や協定の書き方といった個別の相談は、厚生労働省の「相談窓口等」のページから探せる窓口や、最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください(リンクは記事末尾)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月9日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

