宅建の代理を民法99条〜118条の条文で整理します。顕名の効果、復代理人を選べる場合、無権代理で本人・相手方・無権代理人がとれる手段、表見代理3つの要件、追認3種類の違いを表で確認できます。
目次
結論:宅建の代理は、民法99条〜118条を3つの塊で整理します。①代理行為が本人に効果を生じる要件(権限内・本人のためにすることを示す=顕名、99条・100条)、②代理権がない場合の無権代理(本人の追認・相手方の催告と取消し・無権代理人の責任、113条〜117条)、③代理権があるように見える場合の表見代理(109条・110条・112条)です。同じ「代理権がないのに契約された」場面でも、誰が何をできるかは条文ごとに違うため、表で整理するのが近道です。
この記事は、e-Gov 法令検索で読んだ民法の条文だけをもとに、宅建(宅地建物取引士資格試験)の権利関係で問われる代理を整理したものです。権利関係の全体像は宅建の権利関係の攻略(14問の内訳と論点別の記事)にまとめてあり、ここでは代理だけを99条〜118条で掘り下げます。同じ民法の意思表示は宅建の意思表示、制限行為能力者は宅建の制限行為能力者で扱っています。
宅建の代理の基本:顕名と本人への効果(99条・100条)
代理とは、代理人が本人のために意思表示をして、その効果を本人に生じさせる仕組みです。民法99条1項は、代理人が「その権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる」と定めています。この「本人のためにすることを示す」ことを、一般に顕名(けんめい)と呼びます。
| 要件 | 条文 |
|---|---|
| 代理人に代理権がある(その権限内の行為である) | 99条1項 |
| 代理人が本人のためにすることを示した(顕名) | 99条1項 |
| 効果 | 本人に直接その効力を生じる |
99条2項は、第三者が代理人に対してした意思表示にも1項を準用しています。つまり、相手方から代理人に対する意思表示も、本人に効果が生じます。
顕名がないとき(100条)
| 場合 | 効果 |
|---|---|
| 代理人が本人のためにすることを示さなかった(原則) | 自己のためにしたものとみなされる(100条本文) |
| 相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、または知ることができた | 99条1項が準用され、本人に直接効力を生じる(100条ただし書) |
代理行為の意思表示に問題があるとき(101条)
代理人が相手方にした意思表示が、意思の不存在・錯誤・詐欺・強迫、または、ある事情を知っていたこと、もしくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合は、その事実の有無を代理人について決めます(101条1項)。相手方が代理人にした意思表示の効力が、意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと、または知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合も、代理人について決めます(同条2項)。
一方、特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張できません。本人が過失によって知らなかった事情についても同様です(101条3項)。
代理人の行為能力(102条)
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限を理由に取り消すことはできません(102条本文)。ただし、制限行為能力者が、他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は、取り消すことができます(同条ただし書)。
代理権の範囲・濫用・自己契約と双方代理(103条・107条・108条)
代理権の範囲と、代理権が制限される場面について、条文は次の4点を定めています。
- 権限の定めのない代理人は、保存行為と、代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲内で、利用または改良を目的とする行為だけをする権限を有します(103条)
- 代理人が自己または第三者の利益を図る目的で、代理権の範囲内の行為をした場合に、相手方がその目的を知り、または知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなされます(代理権の濫用・107条)
- 同一の法律行為について、相手方の代理人として、または当事者双方の代理人としてした行為(自己契約・双方代理)は、代理権を有しない者がした行為とみなされます。ただし、債務の履行と、本人があらかじめ許諾した行為は除かれます(108条1項)
- 108条1項本文のほか、代理人と本人との利益が相反する行為も、代理権を有しない者がした行為とみなされます。ただし、本人があらかじめ許諾した行為は除かれます(同条2項)
107条・108条はどちらも「代理権を有しない者がした行為とみなす」という書き方です。そのため、後で説明する無権代理(113条以下)の扱いを受けます。
この論点の問題を解く
復代理:復代理人を選べるのはどんなとき(104条〜106条)
復代理は、代理人が、さらに代理人を選任することです。選任できるかどうかは、代理権のもとが「委任」か「法律の規定」かで分かれます。
| 区分 | 復代理人を選任できる場合 | 選任した代理人の責任 |
|---|---|---|
| 委任による代理人(任意代理人・104条) | 本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるとき | 104条は、選任できる条件だけを定めている |
| 法定代理人(105条) | 自己の責任で選任できる | やむを得ない事由があるときは、本人に対して、選任と監督についての責任のみを負う |
復代理人の権限は、106条が次のように定めています。
- 復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する(106条1項)
- 復代理人は、本人と第三者に対して、その権限の範囲内で、代理人と同一の権利を有し、義務を負う(106条2項)
つまり、復代理人は「代理人の代理人」ではなく、条文上は、権限の範囲で本人を代表する者です。
無権代理:本人・相手方・無権代理人がそれぞれできること(113条〜118条)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じません(113条1項)。これが無権代理です。
誰が何をできるかを、条文ごとに並べます。
| 立場 | できること | 条文 |
|---|---|---|
| 本人 | 追認して、契約の効力を本人に生じさせる | 113条1項 |
| 本人 | 追認を拒絶する(効力は本人に生じない) | 113条1項・2項 |
| 相手方 | 本人に、相当の期間を定めて追認するかどうかの確答を催告する。期間内に確答がなければ、追認を拒絶したものとみなされる | 114条 |
| 相手方 | 本人が追認をしない間は、契約を取り消す。ただし、契約の時に代理権がないことを知っていたときは取り消せない | 115条 |
| 相手方 | 無権代理人に、履行または損害賠償を請求する(相手方が選択する) | 117条1項 |
追認の効果と相手方への表示(113条2項・116条)
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じます。ただし、第三者の権利を害することはできません(116条)。追認またはその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗できません。ただし、相手方がその事実を知ったときは別です(113条2項)。
相手方の取消権:「知っていた」だけが除かれる(115条)
115条ただし書が取消権を失わせているのは、相手方が契約の時に「代理権を有しないことを知っていたとき」だけです。過失で知らなかった相手方は、条文の文言上、取り消すことができます。これに対して、次の117条では、過失で知らなかった相手方に追及を認めない扱いが別にあります。
無権代理人の責任:除外される3つの場合(117条)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、または本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従って、履行または損害賠償の責任を負います(117条1項)。次の3つの場合は、この責任を追及できません(117条2項)。
| 除外される場合 | 内容 |
|---|---|
| 1号 | 相手方が、代理権がないことを知っていた |
| 2号 | 相手方が、代理権がないことを過失によって知らなかった。ただし、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない |
| 3号 | 無権代理人が、行為能力の制限を受けていた |
当サイトの作例:相手方の主観で変わる手段
次は、条文に当てはめた当サイトの作例です。Bが、Aの代理権を持たないのに「Aの代理人」としてCと契約したとします(Bは行為能力に制限がない)。
| Cの事情 | Bの事情 | Cが取り消せるか(115条) | CがBに責任追及できるか(117条) |
|---|---|---|---|
| 契約の時に、Bに代理権がないと知っていた | どちらでも | 取り消せない | できない(2項1号) |
| 過失で知らなかった | 自分に代理権がないと知っていた | 取り消せる | できる(2項2号ただし書) |
| 過失で知らなかった | 自分に代理権があると思い込んでいた | 取り消せる | できない(2項2号) |
| 知らず、過失もなかった | どちらでも | 取り消せる | できる |
照合のしかた:取消権(115条)は、相手方が契約の時に知っていたかどうかだけで決まるので、1行目だけが取り消せません。責任追及(117条2項)は、1行目が1号、3行目が2号本文に当たり、2行目だけが2号ただし書で除外から外れます。
単独行為の無権代理(118条)
契約でない単独行為(相手方の同意なしに効果が生じる行為)の無権代理は、118条が、113条〜117条を準用できる場合を限っています。その行為の時に、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、またはその代理権を争わなかったときに限られます。代理権を有しない者に対して、その同意を得て単独行為をしたときも同じです。
表見代理:代理権があるように見えるときの3つの類型(109条・110条・112条)
表見代理は、代理権がない(または代理権の範囲を超えている)のに、代理権があるような外観がある場合に、本人に責任を負わせて、取引の相手方を守る仕組みです。条文は3つあり、それぞれ書かれている言葉が違います。
| 類型 | 条文 | 本人が責任を負う場面 | 相手方の主観の書き方 |
|---|---|---|---|
| 代理権授与の表示 | 109条1項 | 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者が、その代理権の範囲内で、その他人が第三者との間でした行為 | 第三者が、代理権が与えられていないことを知り、または過失によって知らなかったときは、責任を負わない |
| 権限外の行為 | 110条 | 代理人がその権限外の行為をした場合(109条1項本文を準用) | 第三者が、代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき |
| 代理権消滅後 | 112条1項 | 他人に代理権を与えた者が、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内でその他人が第三者との間でした行為 | 代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対して責任を負う。第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、責任を負わない |
条文の言葉が違う点が、試験で混乱しやすいところです。109条・112条は「知り、または過失によって知らなかった」第三者を除き、110条は「正当な理由」を要件にしています。「正当な理由」の具体的な中身は条文に書かれておらず、判例の考え方による論点です。
重ねて適用される場合(109条2項・112条2項)
表示した代理権や消滅した代理権の範囲外の行為についても、条文があります。
- 109条2項:他人に代理権を与えた旨を表示した者が、その代理権の範囲外の行為について責任を負うのは、第三者が、その行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限られます
- 112条2項:代理権の消滅後に、その代理権の範囲外の行為がされた場合も、第三者が、その行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、責任を負います
代理権の消滅事由(111条)
代理権は、次の事由によって消滅します(111条1項)。
| 事由 | 条文 |
|---|---|
| 本人の死亡 | 1号 |
| 代理人の死亡 | 2号 |
| 代理人が破産手続開始の決定を受けたこと | 2号 |
| 代理人が後見開始の審判を受けたこと | 2号 |
委任による代理権は、これらのほか、委任の終了によっても消滅します(111条2項)。111条の列挙に挙がっているのは「後見開始の審判」で、代理人が保佐開始や補助開始の審判を受けたことは挙がっていません。
似た制度との違い:追認・無権代理・表見代理
「追認」という言葉は、民法で3つの場面に出てきます。場面ごとに効果が違うので、区別して理解しておきます。
| 追認の種類 | 条文 | 効果 |
|---|---|---|
| 無権代理の追認 | 113条・116条 | 契約の時にさかのぼって、本人に効力を生じる(第三者の権利を害せない) |
| 取り消すことができる行為の追認 | 122条〜125条 | 追認した後は、取り消せなくなる |
| 無効な行為の追認 | 119条 | 追認しても効力を生じない。ただし、無効と知って追認したときは、新たな行為をしたものとみなす |
取り消すことができる行為の追認は、宅建の制限行為能力者で、無効な行為は宅建の意思表示で扱っています。
次に、無権代理と表見代理、そして無権代理とみなされる行為を比べます。
| 項目 | 無権代理(113条〜117条) | 表見代理(109条・110条・112条) | 代理権の濫用・自己契約など(107条・108条) |
|---|---|---|---|
| 代理権 | ない | ないか、範囲を超えている | 形式上はある |
| 効果 | 本人が追認しなければ、本人に効力を生じない | 要件を満たすと、本人が責任を負う | 代理権を有しない者がした行為とみなされる |
| 相手方の保護 | 催告・取消し・無権代理人への責任追及 | 本人への責任追及 | 無権代理の規定による |
| 追認の規定 | 113条・116条で、本人が追認できる | 109条・110条・112条には、追認の定めはない | 「代理権を有しない者がした行為とみなす」ため、113条以下の対象になる |
107条・108条の行為は、条文が「代理権を有しない者がした行為とみなす」と書いているため、113条以下の無権代理の規定の対象になります。
試験での問われ方:出題の型
宅建の権利関係では、代理は次のような型で問われます(当サイトの整理で、実際の問題文の引用ではありません)。
1. 無権代理の場面で、本人・相手方・無権代理人の主張のうち、条文に合うものを選ぶ型。相手方の知・不知(悪意・過失)が、取消しと責任追及で効き方が違う点が分かれ目です
2. 表見代理が成立する場面か、どの類型に当たるかを選ぶ型。109条・110条・112条の「第三者の主観の書き方」が違う点が前提になります
3. 復代理人を選べるかを、任意代理と法定代理で比べる型(104条・105条)
4. 顕名の有無が効果を左右する型(99条・100条)
5. 代理人の側の事情(制限行為能力者・破産・後見開始・死亡)が、代理行為や代理権にどう響くかを問う型(102条・111条)
6. 自己契約・双方代理・利益相反が、本人の許諾でどう変わるかを問う型(108条)
間違えやすいポイント
- 無権代理人の責任(117条)と相手方の取消権(115条)の除外事由を混同する。115条は「契約の時に知っていた」だけが除外で、117条2項は「知っていた」「過失で知らなかった」「行為能力の制限」の3つ
- 117条2項2号ただし書を落とす。相手方に過失があっても、無権代理人が自分に代理権がないと知っていたときは、責任追及できる
- 114条の催告で、本人が確答しないときの扱いを逆にする。条文は「追認を拒絶したものとみなす」で、追認とみなされるわけではない
- 追認はさかのぼって効力を生じる(116条)が、第三者の権利は害せない、という但書を落とす
- 表見代理の3条文で、相手方の主観の言葉を一緒にする(109条・112条は「知り、または過失によって知らなかった」を除外、110条は「正当な理由」)
- 108条の例外を広げて読む。1項(自己契約・双方代理)の除外は「債務の履行」と「本人があらかじめ許諾した行為」、2項(利益相反)の除外は「本人があらかじめ許諾した行為」だけ
まとめ
- 代理の効果は、権限内で、本人のためにすることを示した(顕名)意思表示が、本人に直接生じる(99条1項)。顕名がなければ自己のためにしたものとみなされ、相手方が知り、または知ることができたときは本人に効果が生じる(100条)
- 復代理人は、任意代理人なら本人の許諾かやむを得ない事由が必要で、法定代理人は自己の責任で選任できる。法定代理人は、やむを得ない事由があるときは、本人に対して選任と監督についての責任のみを負う(104条・105条)
- 無権代理は、本人が追認しなければ本人に効力を生じない。相手方には催告(114条)・取消し(115条)・無権代理人への責任追及(117条)がある
- 表見代理は109条・110条・112条の3類型で、相手方の主観の書き方が条文ごとに違う
- 追認は、無権代理・取り消すことができる行為・無効な行為で効果が違う(116条・122条・119条)
- 自己契約・双方代理・利益相反は、原則として無権代理とみなされる(108条)
同じ科目の時効は宅建の時効、抵当権は宅建の抵当権で確認できます。どの科目が弱いかは、次の診断でも調べられます。
本サイトは一般財団法人 不動産適正取引推進機構とは関係ありません。掲載している問題は、機構が公表する出題範囲を参照して合格ナビが作成した論点別問題です。条文は e-Gov 法令検索の民法(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)を2026年10月7日に読んだものです。
よくある質問
Q代理人が「本人のため」と示さずに契約したら、効果は誰に生じますか?
民法100条本文は、代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす、と定めています。そのため原則として、効果は代理人本人に生じます。ただし書があり、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、または知ることができたときは、99条1項が準用されて、本人に直接効力が生じます。
Q無権代理人に責任を追及できないのは、どんな場合ですか?
民法117条2項は、次の3つの場合に、無権代理人の責任(履行または損害賠償)の規定を適用しないとしています。①相手方が、代理権がないことを知っていたとき、②相手方が、代理権がないことを過失によって知らなかったとき(ただし、無権代理人が自分に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない)、③無権代理人が行為能力の制限を受けていたとき。このほか、無権代理人が自分の代理権を証明したときと、本人の追認を得たときも、責任を負いません(同条1項)。
Q制限行為能力者は、他人の代理人になれますか?
民法102条は、制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない、と定めています。ただし、制限行為能力者が、他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は、この限りではなく、取り消すことができます。なお、代理人が後見開始の審判を受けたときは、代理権は消滅します(111条1項2号)。
Q本人が追認したのに、相手方に伝えていない場合は、どうなりますか?
民法113条2項は、追認またはその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない、と定めています。ただし、相手方がその追認や拒絶の事実を知ったときは、この限りではありません。追認の効果そのものは、別段の意思表示がなければ契約の時にさかのぼります(116条本文)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

