宅建士

宅建の意思表示心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫・公序良俗と善意の第三者

更新 ・書いた人 合格ナビ 編集長(運営者)

この記事でわかること

宅建の意思表示を民法90条〜98条の2の条文で整理します。心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫・公序良俗の効果(無効か取消しか)と、第三者を守る条件(善意か、善意無過失か)の違いを表で確認できます。

目次
  1. 宅建の意思表示:6つの類型を1枚の表で(早見表)
  2. 用語の意味:表意者・善意・過失・重大な過失・第三者・対抗できない
  3. 心裡留保(93条):本心でないと知りながらした意思表示
  4. 虚偽表示(94条):相手方と通じた偽りの意思表示
  5. 錯誤(95条):勘違いによる意思表示
  6. 詐欺・強迫(96条):だまされた・脅された意思表示
  7. 公序良俗(90条)と、任意規定・慣習(91条・92条)
  8. 無効と取消しの違い:効果と追認
  9. 意思表示の効力発生:到達主義と公示(97条〜98条の2)
  10. 試験での問われ方:出題の型
  11. 間違えやすいポイント
  12. まとめ
結論:宅建の意思表示は、民法93条〜96条を「無効か取消しか」と「第三者を守る条件」の2軸で整理します。心裡留保(相手方が知り、または知ることができた場合・93条)・虚偽表示(94条)・公序良俗違反(90条)は無効、錯誤(95条)・詐欺・強迫(96条)は取消しです。第三者の保護は、心裡留保と虚偽表示が「善意の第三者」、錯誤と詐欺が「善意でかつ過失がない第三者」と、条文の言葉が違います。強迫は、96条3項の第三者保護の対象に書かれていません。

この記事は、e-Gov 法令検索で読んだ民法の条文だけをもとに、宅建(宅地建物取引士資格試験)の権利関係で問われる意思表示を整理したものです。権利関係の全体像は宅建の権利関係の攻略(14問の内訳と論点別の記事)にまとめてあり、ここでは意思表示を民法90条〜98条の2で掘り下げます。代理は宅建の代理、制限行為能力者は宅建の制限行為能力者で扱っています。

宅建の意思表示:6つの類型を1枚の表で(早見表)

先に、6つの類型の効果と第三者保護を並べます。

類型条文効果第三者の保護
心裡留保93条原則は有効。相手方が真意でないことを知り、または知ることができたときは無効無効は善意の第三者に対抗できない(93条2項)
虚偽表示94条無効無効は善意の第三者に対抗できない(94条2項)
錯誤95条取り消すことができる取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗できない(95条4項)
詐欺96条1項取り消すことができる取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗できない(96条3項)
強迫96条1項取り消すことができる96条3項は「詐欺による」取消しだけを書いており、強迫は含まれない
公序良俗違反90条無効90条に第三者保護の定めはない

用語の意味:表意者・善意・過失・重大な過失・第三者・対抗できない

意思表示の論点は、用語の意味が分かれば条文が読みやすくなります。

用語意味(条文の使い方に沿った説明)
表意者意思表示をした人
相手方意思表示を受ける人
善意ある事情を知らないこと(「善い心」の意味ではない)
悪意ある事情を知っていること(悪だくみの意味ではない)
過失不注意によって、ある事情を知らなかったこと
重大な過失条文は、過失と重大な過失を別の言葉として使い分けている(95条3項は「重大な過失」、95条4項・96条3項は「過失」)
第三者条文に定義はない。ここでは、当事者(表意者と相手方)以外の人と読む。誰が第三者に当たるかの細かい線引きは、判例の考え方による論点
対抗できない無効や取消しを主張しても、その第三者には認めてもらえない、という意味
欺罔(ぎもう)人をだますこと。詐欺(96条)の中身にあたる言葉

「善意」と「善意でかつ過失がない」の違いが、第三者保護の核心です。93条・94条は「善意の第三者」とだけ書いています。95条4項・96条3項は「善意でかつ過失がない第三者」と書いています。

意思能力がないとき(3条の2)

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効です(3条の2)。心裡留保や錯誤とは別の問題で、意思表示をした人の判断能力そのものがない場合の規定です。

心裡留保(93条):本心でないと知りながらした意思表示

心裡留保は、表意者が、真意でないと知りながらする意思表示です(冗談で言う・本心を隠す、といった場面)。民法93条は、2段で定めています。

場面効果条文
表意者が、真意でないことを知ってしたそのために効力を妨げられない(原則は有効)93条1項本文
相手方が、その意思表示が真意でないことを知り、または知ることができた無効93条1項ただし書
上の無効を主張する場面善意の第三者に対抗できない93条2項

相手方に悪意または過失がある場合だけ無効になる点が、次の虚偽表示との大きな違いです。

虚偽表示(94条):相手方と通じた偽りの意思表示

虚偽表示は、相手方と通じてした虚偽の意思表示で、無効です(94条1項)。この無効は、善意の第三者に対抗することができません(同条2項)。

当サイトの作例:虚偽表示と善意の第三者

AとBが通じて、Aの土地をBに売ったことにする仮装の契約をしたとします。その後、BがCにその土地を売りました。

Cの事情AはBとの契約の無効を、Cに対抗できるか条文
Cが、Aの契約が仮装だと知らなかった(善意)できない94条2項
Cが、仮装だと知っていた(悪意)できる(94条2項の保護を受けない)94条2項の反対解釈

94条2項が保護しているのは「善意」の第三者です。善意であれば足り、無過失は条文に書かれていません。第三者が保護されるために登記などの要件が必要かどうかは、条文に書かれておらず、判例の考え方による論点です。

錯誤(95条):勘違いによる意思表示

錯誤は、勘違いに基づく意思表示です。民法95条1項は、次の2つの錯誤に基づく意思表示で、その錯誤が法律行為の目的と取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができるとしています。

類型条文中身
意思を欠く錯誤95条1項1号意思表示に対応する意思を欠く(例えば、言い間違いや書き間違い)
基礎事情の錯誤(動機の錯誤)95条1項2号表意者が法律行為の基礎とした事情についての認識が、真実に反する

95条の要件と例外を整理します。

項内容
1項取り消すことができる。錯誤が法律行為の目的と取引上の社会通念に照らして重要なものであること
2項基礎事情の錯誤(1項2号)による取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限る
3項表意者に重大な過失があった場合は取り消せない。ただし、①相手方が表意者の錯誤を知り、または重大な過失によって知らなかったとき、②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときを除く
4項取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗できない

95条2項の「表示されていた」という条件は、基礎事情の錯誤(2号)だけにかかり、意思を欠く錯誤(1号)には書かれていません。

詐欺・強迫(96条):だまされた・脅された意思表示

詐欺または強迫による意思表示は、取り消すことができます(96条1項)。次に、詐欺をした人が誰かで、取消しの条件が分かれます。

詐欺をした人取消しの条件条文
相手方取り消すことができる(条件なし)96条1項
第三者(相手方に対する意思表示)相手方が、その事実を知り、または知ることができたときに限り、取り消せる96条2項

96条2項は、第三者が詐欺を行った場合の規定です。96条2項は詐欺についてだけ書かれていて、強迫については同じ条件が書かれていません。

当サイトの作例:詐欺による売買と第三者

AがBにだまされて、Aの土地をBに売りました。その後、BがCにその土地を売りました。

Cの事情AはBとの売買の取消しを、Cに対抗できるか条文
善意でかつ過失がないできない96条3項
善意だが過失があるできる(善意でかつ過失がない者ではない)96条3項の反対解釈
悪意できる96条3項の反対解釈

96条3項は、詐欺による取消しの場面で、善意でかつ過失がない第三者を保護します。強迫による取消しは、この条文の対象に書かれていません。

公序良俗(90条)と、任意規定・慣習(91条・92条)

民法90条は「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と定めています。どんな行為が公序良俗に反するかは、条文に具体例が列挙されておらず、事案ごとの判断になります。

条文内容
90条公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は、無効
91条法律行為の当事者が、法令中の公の秩序に関しない規定(任意規定)と異なる意思を表示したときは、その意思に従う
92条法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合に、当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う

91条・92条は、公の秩序に関しない規定と違う内容を、当事者が決めたり、慣習があったりするときの規定です。

無効と取消しの違い:効果と追認

試験では、「無効」と「取消し」を取り違えさせる選択肢が出ます。条文で確認できる違いを表にします。

取消権の期間と公示の効力発生:取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは時効によって消滅し、行為の時から20年を経過したときも同様(民法126条)。公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日(または掲載に代わる掲示を始めた日)から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなされる(民法98条3項)。最終確認日:2026-10-07。出典:e-Gov 法令検索 民法126条・98条。
項目無効(93条ただし書・94条・90条・3条の2)取消し(95条・96条)
効果初めから効力がない取り消されると、初めから無効であったものとみなされる(121条)
追認追認しても効力を生じない。ただし、無効と知って追認したときは、新たな行為をしたものとみなす(119条)取消権を有する者が追認したときは、以後、取り消せない(122条)
主張できる人条文に限定の規定はない錯誤・詐欺・強迫は、瑕疵ある意思表示をした者またはその代理人もしくは承継人に限る(120条2項)
期間—(126条が期間を定めているのは取消権)追認できる時から5年、行為の時から20年(126条)
取消しの方法—相手方が確定している場合は、相手方に対する意思表示でする(123条)
返還原状回復の義務(121条の2第1項)取り消された行為は初めから無効とみなされるため、121条の2が当たる。無償行為に基づく給付を受けた者が、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すればよい(同条2項)

取消しの追認について、124条1項は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後でなければ、追認の効力は生じない、と定めています。法定追認(125条)は、追認をすることができる時以後に、次の6つの事実があったときに、追認をしたものとみなす規定です(異議をとどめたときを除く)。全部または一部の履行、履行の請求、更改、担保の供与、取り消せる行為で取得した権利の全部または一部の譲渡、強制執行です。

この論点の問題を解く

意思表示の効力発生:到達主義と公示(97条〜98条の2)

意思表示が、いつ効力を生じるかは、97条〜98条の2が定めています。

条文内容
97条1項意思表示は、その通知が相手方に到達した時から効力を生じる
97条2項相手方が、正当な理由なく通知の到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす
97条3項表意者が通知を発した後に、死亡し、意思能力を喪失し、または行為能力の制限を受けても、そのために効力を妨げられない
98条相手方を知ることができない、またはその所在を知ることができないときは、公示の方法によってできる。公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日(または掲載に代わる掲示を始めた日)から2週間を経過した時に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を知らないこと、またはその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない
98条の2意思表示を受けた時に、相手方が意思能力を有しなかった、または未成年者もしくは成年被後見人だったときは、その意思表示をもって相手方に対抗できない。ただし、相手方の法定代理人、または意思能力を回復し、もしくは行為能力者となった相手方が、その意思表示を知った後は、この限りでない

試験での問われ方:出題の型

宅建の権利関係では、意思表示は次のような型で問われます(当サイトの整理で、実際の問題文の引用ではありません)。

1. 事例を示して、無効か取消しかを選ばせる型。心裡留保(原則有効)と虚偽表示(無効)の区別が前提になります

2. 第三者が出てくる事例で、表意者が無効・取消しを対抗できるかを問う型。善意だけでよいか、無過失まで要るかが分かれ目です

3. 錯誤で、表意者の重大な過失の扱いと、2つの例外を問う型(95条3項)

4. 第三者が詐欺をした事例で、相手方が善意か悪意かで取消しの可否を問う型(96条2項)

5. 公序良俗違反の無効と、追認や時間の経過の関係を問う型(90条・119条)

6. 意思表示の到達や、表意者が通知後に死亡した場合の効力を問う型(97条)

間違えやすいポイント

  • 心裡留保を、原則として無効と読む。条文は「その効力を妨げられない」が原則(93条1項本文)
  • 第三者の保護要件を一緒にする。93条・94条は善意だけ、95条4項・96条3項は善意でかつ過失がない
  • 強迫にも96条3項が及ぶと読む。96条3項は「詐欺による意思表示の取消し」だけを書いている
  • 95条の重大な過失の例外を2つとも覚えず、片方だけで答える(相手方が知り、または重大な過失で知らなかった/同一の錯誤)
  • 96条2項を、強迫にも当てはめてしまう
  • 無効な行為は追認しても有効にならない(119条本文)。取り消せる行為の追認(122条)と取り違える
  • 基礎事情の錯誤(1項2号)で、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限る」という95条2項の条件を落とす

まとめ

  • 無効になるのは、心裡留保のうち相手方が知り、または知ることができたとき(93条1項ただし書)・虚偽表示(94条)・公序良俗違反(90条)。取消しになるのは、錯誤(95条)・詐欺・強迫(96条)
  • 第三者の保護は、心裡留保と虚偽表示が善意の第三者、錯誤と詐欺が善意でかつ過失がない第三者。強迫は96条3項に書かれていない
  • 錯誤は、重大な過失があると取り消せないが、相手方が知り、または重大な過失で知らなかったとき、同一の錯誤に陥っていたときは取り消せる(95条3項)
  • 第三者が詐欺をした場合は、相手方が知り、または知ることができたときに限り取り消せる(96条2項)
  • 無効な行為は追認しても効力を生じず(119条)、取り消せる行為は追認すると以後取り消せない(122条)
  • 意思表示は、通知が相手方に到達した時から効力を生じる(97条1項)

同じ科目の時効は宅建の時効、抵当権は宅建の抵当権で確認できます。どの科目が弱いかは、次の診断でも調べられます。

本サイトは一般財団法人 不動産適正取引推進機構とは関係ありません。掲載している問題は、機構が公表する出題範囲を参照して合格ナビが作成した論点別問題です。条文は e-Gov 法令検索の民法(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)を2026年10月7日に読んだものです。

よくある質問

Q心裡留保と虚偽表示は、何が違いますか?

分かれ目は、相手方と通じているかどうかです。心裡留保(民法93条)は、表意者が真意でないと知りながら一人でした意思表示で、原則として有効です。相手方が、真意でないことを知り、または知ることができたときに限り、無効になります。虚偽表示(94条)は、相手方と通じてした虚偽の意思表示で、無効です。どちらも、無効を善意の第三者に対抗することはできません(93条2項・94条2項)。

Q錯誤は、表意者に重大な過失があっても取り消せますか?

原則として取り消せません。民法95条3項は、錯誤が表意者の重大な過失によるものだった場合には、取消しができないと定めています。例外は2つで、①相手方が、表意者に錯誤があることを知り、または重大な過失によって知らなかったとき、②相手方が、表意者と同一の錯誤に陥っていたとき、のどちらかに当たる場合は、取り消せます。

Q強迫による取消しは、第三者に対抗できますか?

民法96条3項が、善意でかつ過失がない第三者に対抗できないと定めているのは、「詐欺による意思表示の取消し」です。強迫による取消しについて、第三者を保護する規定は96条にありません。取消しの前と後で第三者の扱いが分かれる論点は、条文に直接の定めがなく、判例の考え方による論点です。

Q公序良俗に反する契約は、追認すれば有効になりますか?

なりません。民法90条は、公の秩序または善良の風俗に反する法律行為は無効と定めています。無効な行為は、追認によっても効力を生じません(119条本文)。ただし、当事者が、その行為が無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなされます(同条ただし書)。

この資格の問題を解く宅建 科目別問題集
解いてみる

法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

合格ナビ 編集長・運営者

宅建の出題範囲・法令・公式の統計を参照して書いています。プロフィール・編集方針