問題
次の文章は,図1の回路の動作について述べたものである。 図1は,演算増幅器(オペアンプ)を用いたシュミットトリガ回路である。この演算増幅器には+5Vの単電源が供給されており,0Vから5Vまでの範囲の電圧を出力できるものとする。 (図1:入力電圧v_in[V]を演算増幅器の反転入力(-)に加える。E=5Vの端子と接地の間に10kΩと10kΩの抵抗を直列に接続し,その接続点を非反転入力(+)につなぐとともに,同じ接続点と出力の間に20kΩの抵抗を接続した回路。非反転入力の電圧をv⁺[V],出力電圧をv_out[V]とする。) (図2:横軸v_in[V](0~5V),縦軸v_out[V](0Vまたは5V)。v_outが5Vから0Vに切り替わるときの入力電圧と,0Vから5Vに切り替わるときの入力電圧が異なる特性。) ・出力電圧v_outは0~5Vの間にあるため,演算増幅器の非反転入力の電圧v⁺[V]は (ア) の間にある。 ・入力電圧v_inを0Vから徐々に増加させると,v_inが (イ) Vを上回った瞬間,v_outは5Vから0Vに変化する。 ・入力電圧v_inを5Vから徐々に減少させると,v_inが (ウ) Vを下回った瞬間,v_outは0Vから5Vに変化する。 ・入力v_inに対する出力v_outの変化を描くと,図2のような (エ) を示す特性となる。 上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
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答え合わせ
- 1
- 2
- 3
- 4
- 5
自信の3択
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解説
オペアンプを使ったシュミットトリガ回路の動作を問う問題です(令和4年度上期 問13)。
非反転入力の電圧v⁺は,5V・10kΩ・10kΩ・20kΩ(出力側)でつくる分圧で決まり,出力が0Vなら2V,5Vなら3Vになります(ア:2~3)。
入力は反転入力につながっているので,入力がv⁺を上回ると出力は0Vに,下回ると5Vになります。出力5Vのときv⁺=3Vなので,入力を上げていくと3Vで切り替わり(イ:3),出力0Vのときv⁺=2Vなので,下げていくと2Vで戻ります(ウ:2)。
上げるときと下げるときで切り替わる電圧が違う特性をヒステリシスといいます(エ)。正答は(5)です。
【(ア) v⁺の範囲】
接続点(v⁺)に流れ込む電流の和が0となる式(キルヒホッフの電流則)を立てます。演算増幅器の入力には電流が流れないものとします。
(5-v⁺)/10+(0-v⁺)/10+(v_out-v⁺)/20=0(抵抗はkΩ単位)
両辺に20を掛けて 10-2v⁺-2v⁺+v_out-v⁺=0
v⁺=(10+v_out)/5=2+v_out/5
v_out=0Vのとき v⁺=2V,v_out=5Vのとき v⁺=3V なので,v⁺は2~3Vの間にあります。
【(イ) 入力を増加させるとき】
v_in=0Vでは v_in<v⁺ なので,出力は上限の5Vで,v⁺=3Vです。v_inが3Vを上回ると反転入力の方が高くなり,出力は0Vに変わります。
【(ウ) 入力を減少させるとき】
v_in=5Vでは出力0Vで,v⁺=2Vです。v_inを下げても2Vを下回るまでは出力0Vのままで,2Vを下回った瞬間に出力は5Vへ戻ります。
【(エ) ヒステリシス】
入力を上げるときは3V,下げるときは2Vで切り替わり,図2のように行きと帰りで違う経路をたどります。このように,出力が入力の値だけでなく変化の向き(それまでの状態)によって決まる特性をヒステリシスといいます。
【誤りの選択肢】
(1)(2)の1.25~3.75は上の節点の式を満たしません。(3)はしきい値の上下が逆で,出力5Vのときのv⁺は3Vなので,入力2Vでは切り替わりません。(4)の2.75・2.25は計算と一致せず,(1)(4)の位相遅れは正弦波の時間的なずれを表す言葉で,図2の特性の名前ではありません。正答は(5)です。
【テブナンの定理で見ると】
5Vと10kΩ・10kΩの分圧回路を接続点から見ると,開放電圧2.5V,内部抵抗10×10/(10+10)=5kΩの電源に置き換えられます。これと出力v_outを20kΩでつなぐと
v⁺=2.5+(v_out-2.5)×5/(5+20)=2.5+(v_out-2.5)/5
となり,v_out=5Vで3V,0Vで2Vと,standardの結果と一致します。二つのしきい値の中心2.5Vは分圧回路で,幅は出力の振れ5Vに 5/(5+20)=1/5 を掛けた1Vで決まります。20kΩを大きくすると帰還が弱まり幅が狭く,小さくすると幅が広くなります。
【正帰還がヒステリシスを生む】
出力を抵抗を通して非反転入力に戻すのは正帰還です。出力が5Vから0Vに下がり始めるとv⁺も3Vから下がり,反転入力との差がさらに広がるので,出力は途中で止まらず一気に0Vまで切り替わります。切り替わった後はv⁺が2Vに移っているため,入力が少し戻っただけでは元に戻りません。これが「行きと帰りで切り替え点が違う」理由です。負帰還で増幅器を安定させる反転増幅回路とは,帰還をかける入力端子が逆になっています。
【何に役立つか】
しきい値が一つしかない比較器(コンパレータ)では,入力にノイズが乗ってしきい値付近で上下すると,出力が何度も0Vと5Vを往復してしまいます(チャタリング)。シュミットトリガでは,ノイズの振れ幅がヒステリシス幅(本問では1V)より小さければ出力は一度しか切り替わりません。ゆっくり変化する信号やノイズを含む信号を,きれいな0・1の信号に整形する用途で使われます。
【選択肢の見分け方】
入力が反転入力側にあるので,入力を上げると出力は高い値から低い値に変わり,図2の形と一致します。出力が高いときはv⁺も高いので,上昇時のしきい値(イ)が大きい方,下降時のしきい値(ウ)が小さい方になります。この大小関係だけで(2)と(3)は除外でき,(ア)の範囲の端の値が(イ)(ウ)に一致することから(4)も除外でき,残る(1)は(エ)の位相遅れで除外できます。
【関連する出題パターン】
・入力を非反転入力側に加えた非反転形シュミットトリガのしきい値を求める問題
・正負両電源(±V)の場合のしきい値の計算
・ヒステリシス幅を指定して帰還抵抗を選ぶ問題
出典と作り方
本問は電気技術者試験センター公表の過去問題を出典明記の上で引用しています。同センターは公式サイトの「よくあるご質問」で、教育目的など試験制度の意義に反しない限り、公表された過去問題を問題集やテキストに使用する際の許諾および使用料は不要としています。 根拠・出典:出典:令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論(一般財団法人 電気技術者試験センター) 各根拠条文・規定は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令・基準の数値を反映(数値確認日 2026-10-29)。
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