社労士とFP1級、日商簿記1級を、公表されている合格率・試験の仕組み・試験範囲で比較。合格率だけでは難易度を比べられない理由と、FP1級学科と社労士の年金・社会保険の重なり、簿記1級との違いを公式データで整理します。
目次
結論:社労士・日商簿記1級・FP1級は、合格率だけでは難易度を比べられません。第58回の社労士は9.3%、簿記1級の直近は21.2%(第173回)、FP1級は学科が12〜15%台・実技が75〜86%台と、試験の回数も試験の段階も受験の前提も違うためです。試験範囲が重なるのは、FP1級の学科(公的年金・社会保険)と社労士の年金・健康保険・労災・雇用の科目で、簿記1級の範囲(商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算)は社労士と重なりません。
「社労士とFP1級、どっちが難しい?」「簿記1級とのダブルライセンスは?」という疑問に、この記事は各試験団体が公表している数字と試験範囲だけで答えます。他社の講座や書籍の比較、年収や求人の話は一次ソースがないため扱いません。
| 比べる点 | 社労士 | 日商簿記1級 | FP1級 |
|---|---|---|---|
| 実施団体 | 社会保険労務士試験センター(連合会) | 日本商工会議所 | 学科:金融財政事情研究会/実技:金財または日本FP協会 |
| 試験の回数 | 年1回(社労士法第10条は「毎年一回以上」と規定) | 年2回(6月・11月。第170〜173回の日付より) | 学科は2025年9月・2026年1月・2026年5月に実施、実技は団体ごと(結果ページの実施月より) |
| 直近の合格率 | 9.3%(第58回) | 21.2%(第173回) | 学科 12.41%(2026年5月)/実技 84.35%(金財・2026年6月) |
| 合格基準 | 総得点+科目ごとの基準点 | 70%以上かつ各科目40%以上 | 学科は120点以上(200点満点) |
| 受験の前提 | 受験資格あり(社労士法第8条) | 受験資格の制限があるのは一部の上級試験で、簿記1級は例外に挙がっていない | 学科・実技とも受検資格あり |
社労士・簿記1級・FP1級の合格率を同じ表で見る
各団体の公表値を、試験ごとに並べます。
| 試験 | 実施 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| 社労士(第58回) | 2026年8月23日 | 42,510人 | 3,961人 | 9.3%(前年5.5%) | 厚生労働省 合格者発表 |
| 日商簿記1級(第173回) | 2026年6月14日 | 9,806名(実受験者数) | 2,076名 | 21.2% | 日本商工会議所 受験者データ |
| 日商簿記1級(第171回) | 2025年11月16日 | 10,524名 | 1,604名 | 15.2% | 同上 |
| 日商簿記1級(第170回) | 2025年6月8日 | 9,610名 | 1,343名 | 14.0% | 同上 |
| FP1級 学科 | 2026年5月24日 | 3,488人 | 433人 | 12.41% | 金融財政事情研究会 |
| FP1級 学科 | 2026年1月25日 | 4,338人 | 543人 | 12.51% | 同上 |
| FP1級 学科 | 2025年9月14日 | 3,764人 | 580人 | 15.40% | 同上 |
| FP1級 実技(金財) | 2026年6月 | 703人 | 593人 | 84.35% | 同上 |
| FP1級 実技(金財) | 2026年2月 | 715人 | 620人 | 86.71% | 同上 |
| FP1級 実技(金財) | 2025年9月・10月 | 558人 | 485人 | 86.91% | 同上 |
| FP1級 実技(日本FP協会) | 2025年9月 | 1,338人 | 1,012人 | 75.63% | 日本FP協会 |
社労士の合格率:第58回(令和8年度)の受験者数42,510人、合格者数3,961人、合格率9.3%(前年は5.5%)。合格基準は「試験の難易度に差が生じたことから、昨年度試験の合格基準を補正したもの」。最終確認日:2026-10-04。出典:厚生労働省 第58回社会保険労務士試験の合格者発表。
日商簿記1級の合格率:第173回(2026年6月14日)の実受験者数9,806名、合格者数2,076名、合格率21.2%。同ページに載る1級の9回(第161〜173回のうち1級が実施された回)の合格率は10.1%〜21.2%。最終確認日:2026-10-04。出典:日本商工会議所 簿記 受験者データ。
FP1級の合格率:学科(金融財政事情研究会)は2026年5月24日実施で受検者3,488人・合格者433人・合格率12.41%。実技は金財が2026年6月に703人受検・593人合格・84.35%(2026年2月は86.71%、2025年9月・10月は86.91%)、日本FP協会が2025年9月に1,338人受検・1,012人合格・75.63%。最終確認日:2026-10-04。出典:金融財政事情研究会 FP1級(学科)2026年5月、同 FP1級(実技)2026年6月・2026年2月・2025年9月・10月、日本FP協会 試験結果データ。
「どっちが難しい」を合格率だけで決められない理由
表の数字を見ると、社労士は9.3%、簿記1級は21.2%、FP1級の学科は12〜15%台で、実技は75〜86%台です。ただし、この数字を一直線に並べて「難しさの順」にすることはできません。確認できる事実を挙げます。
- 試験の段階が違う:FP1級は、学科と実技に分けて実施され、両方に合格して総合合格になります(金財の試験要綱)。実技を受けられるのは、1級学科の合格者やCFP認定者など、受検資格を満たした人に限られ、学科とは受検者の前提が違います(受検資格は金財・日本FP協会の案内)。実技の合格率だけを見て「FP1級は易しい」とは言えません
- 回数が違う:社労士は年1回、簿記1級は6月と11月の年2回です。1回あたりの合格率を、年の合格率としてそのまま比べることはできません
- 合格基準の作り方が違う:社労士は選択式で総得点25点以上かつ各科目3点以上(雇用保険法は2点以上)、択一式で総得点47点以上かつ各科目4点以上と、科目ごとの基準点があります(第58回)。簿記1級は70%以上かつ各科目40%以上(日本商工会議所)。FP1級の学科は120点以上(200点満点)です(金財)
- 基準点が年によって補正される:社労士の第58回の合格基準は、難易度に差が生じたため前年度の基準を補正したものと厚生労働省が公表しています
- 受験者の前提が違う:社労士は受験資格の区分があり(社労士法第8条)、FP1級の学科にも受検資格があります。簿記1級は、日本商工会議所の検定試験ガイドが受験資格の制限があるとする一部の上級試験(DCプランナー1級・日商マスターなど)に挙がっていません(検定試験のご案内)
つまり、合格率は「その回、その試験で、受験した人のうち何%が合格したか」を示す数字です。別の試験の受験者と同じ前提で、同じ人が受けたわけではない数字を、難易度の順位として使うのは正確ではありません。
試験範囲の重なり:年金・社会保険は、FP1級(学科)と社労士で重なる
試験範囲で見ると、重なりははっきりしています。金融財政事情研究会の「試験科目及びその範囲」と範囲の細目(1級・学科)は、次のとおりです。
| FP1級(学科)の範囲 | 細目に挙がっている項目 | 社労士試験の対応する科目 |
|---|---|---|
| A-4 社会保険 | 公的医療保険(健康保険・国民健康保険など)、労働者災害補償保険、雇用保険、育児休業・介護休業 | 健康保険法、労働者災害補償保険法、雇用保険法 |
| A-5 公的年金 | 国民年金、厚生年金保険、老齢給付、障害給付、遺族給付、併給調整、離婚時年金分割、請求手続、年金生活者支援給付金 | 国民年金法、厚生年金保険法 |
| A-6 企業年金・個人年金等 | 企業年金(確定給付・確定拠出)、国民年金基金、個人年金 | (社労士試験の科目名にはない) |
A-4 の社会保険は、細目では、公的医療保険が「詳細な知識」、労働者災害補償保険と雇用保険が「一般的な知識」と書き分けられています。A-5 の公的年金は「詳細な知識」です。この区分は試験範囲の記述であり、難易度を示すものではありません。
当サイトの社労士の論点別問題358問のうち、国民年金法が60問、厚生年金保険法が55問で、年金2科目の合計は115問(32.1%)です(2026-10-04 時点・自作問題の集計で、本試験の出題数ではありません)。社労士試験の年金2科目の考え方は年金2科目(厚年・国年)の攻略でまとめています。
最初の1問として使える問題(論点別問題):
簿記1級は、範囲が別です。日本商工会議所の簿記1級は、商業簿記・会計学(90分)と、工業簿記・原価計算(90分)の4科目で、社労士の科目(労働・社会保険の法令)とは重なりません。簿記1級を持っていることが社労士試験の受験資格になるとは、試験センターの受験資格の案内には書かれていません。
どれから受けるか:決まりはなく、受験の前提で順番が決まる
3つの試験の間に、「先に取らなければならない」という規定は、各試験の受験資格の案内にありません。受験資格の案内に、互いの試験が条件として挙がっていないためです。順番を考えるときの事実は次のとおりです。
| 試験 | 受験の前提(公式の案内) |
|---|---|
| 社労士 | 学歴・実務経験・厚生労働大臣が認めた国家試験の合格などのどれか1つ(社労士法第8条)。簿記・FP技能検定は挙がっていない |
| FP1級(学科) | 2級技能検定合格者でFP業務に1年以上の実務経験がある者、FP業務に5年以上の実務経験がある者などのどれか1つ(金財) |
| FP1級(実技) | 1級学科試験の合格者(2026年度は2024年度以降の学科合格者)、CFP認定者などのどれか1つ(金財) |
| 日商簿記1級 | 商工会議所の検定試験は、DCプランナー1級や日商マスターなど一部の上級試験を除き誰でも受験できる(日本商工会議所の検定試験ガイド)。合格すると税理士試験の受験資格が得られる |
試験日は、社労士の第58回が令和8年8月23日(日)、簿記1級の第173回が2026年6月14日で、簿記1級の次の回(第174回)は11月15日施行と案内されています(日本商工会議所 簿記1級)。複数の試験を同じ年に受けるときの日程は、各団体の最新の案内で確認してください。必要な勉強時間についても、公式の数字はどの試験にも示されていません。時間の予算の考え方は社労士は何年かかる?にまとめています。
実務での関係:業務の線は試験の範囲とは別に決まる
資格の「業務の範囲」は、試験範囲とは別の話です。社労士法の第2条第1項は、社労士の事務として、1号(労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成)、2号(労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成)、3号(労務管理その他の労働に関する事項と、社会保険に関する事項の相談・指導)を挙げています。このうち報酬を得て業として行うことが社労士に限られるのは、1号から2号までです(第27条)。簿記で扱う会計帳簿の作成は、この条文が挙げる「労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類」とは別の話で、第2条は会計帳簿の作成を業務として挙げていません。
FP1級の試験範囲にも、「ファイナンシャル・プランニングと関連法規」として、税理士法・保険業法・金融商品取引法・弁護士法が挙がっています(A-2)。FPが相談を受けるときに、他の資格者の業務との線を理解しておくことが、試験の範囲に含まれているということです。社労士の業務の線は社労士の仕事内容で、税理士との違いは社労士と税理士の違いで解説しています。
この論点の問題と次の一歩
社労士の年金科目は、FP1級(学科)の公的年金の範囲と、扱う制度の名前が重なる部分です。
まとめ
- 合格率は社労士9.3%(第58回)、簿記1級21.2%(第173回)、FP1級学科12.41%(2026年5月)、FP1級実技75〜86%台。試験の段階・回数・受験の前提が違うため、順位づけには使えない
- 試験範囲が重なるのは、FP1級学科の公的年金・社会保険と、社労士の年金・健康保険・労災・雇用の科目。簿記1級は重ならない
- 3試験に「先に取る」決まりはなく、受験の前提で順番が決まる
- 業務の線は試験範囲と別。社労士の独占は第27条(1号・2号)で決まる
- 合格率・試験日・合格基準は変わるため、公式ページで最新を確認する
よくある質問
Q社労士の勉強をすると、FP1級の学科の一部は重なりますか?
FP1級(学科)の試験範囲の細目(金融財政事情研究会)には、公的年金(国民年金・厚生年金保険・老齢給付・障害給付・遺族給付・併給調整など)と社会保険(公的医療保険・労災保険・雇用保険)が含まれます。社労士試験の年金・健康保険・労災・雇用の科目と、扱う制度の名前は重なります。ただし範囲が重なることと、出題の深さや問い方が同じであることは別です。
Q簿記1級を持っていると、社労士試験の受験資格になりますか?
社会保険労務士試験オフィシャルサイトの受験資格の案内に、簿記検定は受験資格として挙がっていません。受験資格は社労士法第8条に基づき、学歴・実務経験・厚生労働大臣が認めた国家試験の合格などのいずれかで判断されます。最新の区分は試験センターの受験案内で確認してください。
Q簿記1級に合格すると、何かの試験の受験資格を得られますか?
日本商工会議所の簿記1級のページは、「合格すると税理士試験の受験資格が得られる」と案内しています。同ページに、社労士試験の受験資格としての記載はありません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月4日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

