電験三種
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

電験三種 令和5年度上期 理論 問11|電磁気学(磁気回路)

問題

電験三種 | 理論 | 令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-10-29

次の文章は,図1及び図2に示す原理図を用いてホール素子の動作原理について述べたものである。 図1に示すように,p形半導体に直流電流I[A]を流し,半導体の表面に対して垂直に下から上向きに磁束密度B[T]の平等磁界を半導体にかけると,半導体内の正孔は進路を曲げられ,電極①には (ア) 電荷,電極②には (イ) 電荷が分布し,半導体の内部に電界が生じる。また,図2のn形半導体の場合は,電界の方向はp形半導体の方向と (ウ) である。この電界により,電極①-②間にホール電圧 V_H=R_H× (エ) [V]が発生する。 ただし,d[m]は半導体の厚さを示し,R_Hは比例定数[m³/C]である。 上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。 (図1・図2:厚さd[m]の板状の半導体(図1はp形,図2はn形)に,奥から手前へ向かって電流I[A]を流し,下から上へ磁束密度B[T]をかける。電極①は左側面,電極②は右側面にある。)

問題の図(出典: 令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論 問11/電気技術者試験センター)

図の出典:令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論 問11

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解説

ホール素子の原理(ホール効果)を問う問題です(令和5年度上期 問11)。

p形半導体では電流を運ぶのは正孔(正の電荷)です。電流は奥から手前へ,磁界は上向きなので,フレミングの左手の法則で正孔が受ける力は左向きになり,正孔は電極①側に集まります。よって電極①が正,電極②が負です((ア)正,(イ)負)。

n形では電流を運ぶのが電子(負の電荷)になり,電極にたまる電荷の符号が逆になるので,電界の向きはp形と反対です((ウ))。

ホール電圧は V_H=R_H·BI/d で,電流と磁束密度に比例し,厚さdに反比例します((エ))。正答は(5)です。

【(ア)(イ) 正孔が受ける力の向き】

図1で,電極①から電極②に向かう向きを右,上向きを磁界Bの向き,電流Iは奥から手前に流れています。正孔は電流と同じ向き(手前向き)に動くので,ローレンツ力 F=q(v×B) の向きは,フレミングの左手の法則で「中指=電流(手前),人差し指=磁界(上)」とすると親指は左を向きます。正孔は左側の電極①へ寄せられ,電極①が正,反対側の電極②が負に帯電します。

【(ウ) n形の場合】

n形のキャリアは電子です。電流が同じ向きでも電子は逆向き(奥向き)に動きますが,電荷も負なので,受ける力の向きは正孔と同じく左向きです。左側の電極①に電子(負電荷)が集まり,電極①が負,電極②が正になります。電荷の分布が逆になるので,内部の電界の向きはp形と反対です。

【(エ) ホール電圧の式】

V_H=R_H·BI/d[V]

ホール電圧は磁束密度Bと電流Iに比例し,半導体の厚さdに反比例します。R_Hはホール係数で,単位は[m³/C]です。

【選択肢の見分け】

(1)~(3)は(ウ)を「同じ」としており,キャリアの符号の違いを考えていません。(4)は(エ)は正しいものの,(ア)(イ)の符号が逆です。

正答は(5)です。

【ホール電圧の式の導き方】

キャリアの電荷をq,密度をn,速度をv,半導体の幅(電極①-②間の距離)をw,厚さをdとします。電流は I=nqv·wd です。

キャリアは磁界から qvB の力を受けて片側に寄り,その結果生じた電界E_Hから qE_H の力を受けます。両者が釣り合うと,それ以上キャリアは寄らなくなります。

qE_H=qvB → E_H=vB

V_H=E_H·w=vBw={I/(nq·wd)}·B·w=(1/(nq))·BI/d

したがって R_H=1/(nq) です。幅wは式から消え,厚さdだけが残ります。(エ)がBI/dになるのはこのためで,「d」が分子に来る(3)は誤りです。

【ホール係数からわかること】

・R_Hの符号はキャリアの電荷の符号で決まります。正孔(p形)なら正,電子(n形)なら負です。ホール電圧の向きを測れば,半導体がp形かn形かを判定できます。

・R_Hの大きさはキャリア密度nに反比例します。金属は自由電子の密度が非常に大きいためホール電圧がごく小さく,キャリア密度の小さい半導体がホール素子に使われます。

・同じ理由で,薄い(dの小さい)素子ほど大きなホール電圧が得られます。

【n形でも力の向きが同じになる理由】

電子は電流と逆向きに動きますが,電荷も負なので,F=q(v×B) では v と q の両方の符号が反転して力の向きは変わりません。正孔も電子も同じ側の電極に寄せられ,その電荷の符号だけが違うので,ホール電圧の極性(電界の向き)が反対になります。「キャリアの動く向きが逆だから,寄る側も逆」と考えるのはよくある誤りです。

【応用】

ホール素子は,電流を一定にしておけばホール電圧が磁束密度に比例するので,磁界の測定(ガウスメータ)や,電流のまわりにできる磁界から電流を非接触で測る電流センサ,モータの回転子の位置検出などに使われます。

【関連する出題パターン】

・ホール電圧の式から,B,I,dのどれかを変えたときの電圧の変化を求める計算

・フレミングの左手の法則による電磁力の向きの判定

この問題の根拠出典:令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論(一般財団法人 電気技術者試験センター)
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は電気技術者試験センター公表の過去問題を出典明記の上で引用しています。同センターは公式サイトの「よくあるご質問」で、教育目的など試験制度の意義に反しない限り、公表された過去問題を問題集やテキストに使用する際の許諾および使用料は不要としています。 根拠・出典:出典:令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験 理論(一般財団法人 電気技術者試験センター) 各根拠条文・規定は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令・基準の数値を反映(数値確認日 2026-10-29)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・基準は改正されることがあるため、最新の内容は一般財団法人 電気技術者試験センター・経済産業省の公式情報をご確認ください。本サイトは電気技術者試験センターと一切関係ありません。

執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。電気事業法・電気工事士法・電気用品安全法・電気設備技術基準・内線規程の根拠条文に基づき、段差のある3段階の解説(初心者・標準・上級)を作成しています。