宅建は試験を実施する年度の4月1日に施行されている法令が基準です。契約不適合・法定利率・時効・錯誤・成年年齢・相続登記・報酬額など、旧法と新法で答えが変わる13論点を、条文・施行日・基準日に初めて入る試験年度で一覧にしました。
目次
結論:宅建の過去問は「何年分」よりも「その年度の基準日に、どの改正が入っているか」で選びます。試験は、実施する年度の4月1日現在施行されている法令に基づきます(不動産適正取引推進機構・RETIOの試験概要)。契約不適合責任・法定利率・消滅時効・錯誤・個人根保証・配偶者居住権の改正は令和2年4月1日に施行されたので、令和2年度以降の8回の試験(令和2・3年度は10月と12月の各2回)は改正後の法令が基準です。令和元年度以前の問題は、少なくとも下の表の論点は新法で答えを出し直し、表にない論点も、e-Gov の時点指定で現行と同じかを確かめてから使います(表は主な改正で、全部ではありません)。
宅建の過去問の年数を決める公式の基準はなく、教材の年数と、法令が現行と同じかどうかは別の話です。この記事では、法改正で答えが変わる論点を、条文と施行日つきで一覧にして、どの年度の問題から使えるかを確かめられるようにしました。
「何年分」の前提:基準日は年度の4月1日
RETIOの試験概要は、出題の根拠法令を「試験を実施する年度の4月1日現在施行されているもの」としています。令和7年度の問題冊子の注意事項にも、「問題の中の法令に関する部分は、令和7年4月1日現在施行されている規定に基づいて出題されています」とあります(令和5年度・6年度の冊子も同じ書き方で、年が変わります)。
つまり、ある改正が試験に入るかどうかは、施行日と、その年度の4月1日の前後で決まります。
| 改正の施行日 | その年度の基準日(4月1日) | 試験に入るか |
|---|---|---|
| 基準日以前 | 例:令和2年4月1日に施行 → 令和2年度の基準日(令和2年4月1日) | 入る(基準日に施行されている) |
| 基準日より後 | 例:令和6年7月1日に施行 → 令和6年度の基準日(令和6年4月1日)より後 | 入らない。翌年度(令和7年度)の基準日(令和7年4月1日)から入る |
RETIOの過去の試験問題のページには、昭和63年度から令和7年度までの問題冊子が掲載されています(2026-10-28 時点)。令和2・3年度は、それぞれ10月と12月に試験が行われました(RETIO 試験実施概況)。
宅建 法令の基準日:試験を実施する年度の4月1日現在施行されている法令が、出題の根拠。令和8年度試験は2026年10月18日実施。最終確認日:2026-10-28。出典:RETIO 宅建試験の概要、RETIO 令和8年度 宅建試験のスケジュール。
法改正で答えが変わる13論点の一覧
次の表は、旧法と新法で、問題の答えが変わりうる論点を、条文と施行日つきで並べたものです。条文は、e-Govの法令データで、施行日の前日と施行日の2時点の条文を比べて照合しています(報酬告示は、国土交通省の新旧対照表で照合しています)。
| 論点 | 旧法(施行前) | 新法(施行後) | 条文 | 施行日 | 基準日に初めて入る試験 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売主の担保責任 | 売買の目的物に「隠れた瑕疵」があるとき。解除・損害賠償は、買主が事実を知った時から1年以内にする | 契約の内容に適合しない場合。買主は追完請求などができる。種類又は品質の不適合は、知った時から1年以内に「通知」する(売主が引渡し時に悪意又は重大な過失のときを除く) | 旧570条・旧566条3項 → 562条・566条 | 令和2年4月1日 | 令和2年度 |
| 法定利率 | 年5分 | 年3%を基準に、3年を1期として変動する | 404条 | 令和2年4月1日 | 令和2年度 |
| 債権の消滅時効 | 債権は10年間行使しないとき。職業別の短期時効(例:医師の診療債権は3年) | 債権者が権利を行使できることを知った時から5年、または行使できる時から10年。短期時効の規定は廃止 | 旧167条1項・旧170条 → 166条1項 | 令和2年4月1日 | 令和2年度 |
| 錯誤 | 要素に錯誤があれば意思表示は「無効」 | 要件を満たす錯誤は「取り消すことができる」 | 95条1項 | 令和2年4月1日 | 令和2年度 |
| 根保証 | 極度額が必要なのは「貸金等根保証契約」 | 保証人が法人でない「個人根保証契約」すべてで、極度額がなければ効力を生じない | 465条の2 | 令和2年4月1日 | 令和2年度 |
| 配偶者居住権 | 配偶者居住権の規定はない(令和2年3月31日の民法に1028条がない) | 被相続人の配偶者は、相続開始時に居住していた建物の全部について、無償で使用・収益する権利を取得できる(遺産分割・遺贈) | 民法1028条 | 令和2年4月1日 | 令和2年度 |
| 成年年齢 | 20歳 | 18歳 | 4条 | 令和4年4月1日 | 令和4年度 |
| 重要事項説明書・37条書面 | 宅建士が「記名押印」する | 宅建士が「記名」する(押印は不要)。電磁的方法による提供の規定が加わる | 宅建業法35条5項・37条3項 | 令和4年5月18日 | 令和5年度 |
| 農地の権利移動の許可 | 取得後の耕作面積が、北海道2ha・都府県50a(農業委員会が別段の面積を定めた場合はその面積)に達しないときは許可できない(下限面積) | この下限面積の要件は、3条の条文にない | 農地法3条2項5号(削除) | 令和5年4月1日 | 令和5年度 |
| 共有・所有者不明土地 | 所在等不明共有者の持分取得、所有者不明土地管理命令の規定はない | 裁判所の裁判で持分を取得でき(262条の2)、所有者不明土地管理命令の制度もある(264条の2) | 民法262条の2・264条の2 | 令和5年4月1日 | 令和5年度 |
| 相続登記 | 相続登記の申請は義務ではない | 相続で所有権を取得したと知った日から3年以内に申請する義務がある | 不動産登記法76条の2 | 令和6年4月1日 | 令和6年度 |
| 媒介報酬の特例(低廉な空家等) | 400万円以下の空家等で、現地調査等の費用を要する売買・交換の媒介。依頼者は、空家等の売主又は交換を行う者に限る。報酬は、通常の計算額に現地調査等の費用を足した額まで(上限は18万円の1.1倍) | 800万円以下の低廉な空家等の売買・交換の媒介。依頼者の限定はなく(買主側も含む)、媒介に要する費用を勘案して、上限は30万円の1.1倍 | 報酬告示 第七 | 令和6年7月1日 | 令和7年度 |
| 住所変更登記 | 住所が変わっても、登記の申請は義務ではない | 所有権の登記名義人は、住所の変更があった日から2年以内に変更の登記を申請する義務がある | 不動産登記法76条の5 | 令和8年4月1日 | 令和8年度 |
宅建 令和2年4月1日施行の民法改正:契約不適合責任(562条・566条)、法定利率(404条・年3%)、債権の消滅時効(166条)、錯誤(95条・取消し)、個人根保証の極度額(465条の2)。改正法は平成29年法律第44号。配偶者居住権(1028条)は、平成30年法律第72号による改正で、同じ日に施行。最終確認日:2026-10-28。出典:e-Gov法令検索 民法。
宅建 媒介報酬の特例:低廉な空家等(800万円以下の宅地・建物)の売買・交換の媒介は、30万円の1.1倍まで。令和6年6月21日国土交通省告示第949号、令和6年7月1日施行。最終確認日:2026-10-28。出典:国土交通省 告示新旧対照表、国土交通省 不動産取引に関するお知らせ。
表の読み方と、条文の注意点は、次のとおりです。
- 旧法・新法の文言は、それぞれ要点に縮めています。問題の答えを出すときは、条文そのものを読んでください
- 民法の債権関係の改正(平成29年法律第44号)には、実際の契約について経過措置があり、施行日前に締結された売買・賃貸借などの契約には、なお従前の例が適用されます(改正法(平成29年法律第44号)附則34条1項)。この記事の表は、試験の基準日の話であり、実際の契約にどちらの法律が適用されるかは別の話です
- 相続登記の義務(不動産登記法76条の2)は、施行日前に開始した相続にも適用されます。その場合、3年の期間は、取得を知った日と施行日の遅いほうから数えます(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則5条6項)。住所変更登記(76条の5)も、施行日前の変更に適用され、2年の期間は変更があった日と施行日の遅いほうから数えます(同附則5条7項)
- 配偶者居住権(1028条)は、2020年3月31日時点の民法に条文がなく、2020年4月1日の民法にあります(e-Gov、2026-10-28 閲覧)。敷金の返還(622条の2)は、判例の考え方を条文にしたもので、答えが変わる論点としては表に入れていません。ほかにも、遺留分侵害額の請求(1046条、令和元年7月1日施行。令和2年度の基準日から入る)のように、表にない改正があります。表は主な改正の一覧で、全部ではありません
- 宅建業法35条・37条は、令和4年5月18日に施行された改正(令和3年法律第37号)で、記名押印が記名に変わりました。令和4年度の基準日(令和4年4月1日)は施行前なので、令和4年度の試験は記名押印が基準で、令和5年度の試験から記名になります
- 媒介報酬は、法律ではなく国土交通大臣の告示です。令和6年度の基準日(令和6年4月1日)は施行日(同年7月1日)より前なので、令和6年度の試験の基準には入らず、令和7年度の試験から入ります
区分所有法の改正(令和8年4月1日施行)や、令和8年度の税制改正は、令和8年度の試験の基準に入る改正として、令和8年度(2026年)の宅建法改正まとめで別にまとめています。
年度ごとの基準日に入っている論点の数
上の13論点を、年度の基準日(4月1日)で数えると、年度ごとに次の数になります。令和元年度以前の基準日(平成31年4月1日など)は、13論点のどれの施行日より前です。
| 試験年度 | 基準日 | 基準日に入る論点(累計) | その年度に新しく入る論点 |
|---|---|---|---|
| 令和元年度以前 | 平成31年4月1日以前 | 0 | なし |
| 令和2年度(10月・12月) | 令和2年4月1日 | 6 | 担保責任・法定利率・消滅時効・錯誤・根保証・配偶者居住権 |
| 令和3年度(10月・12月) | 令和3年4月1日 | 6 | なし |
| 令和4年度 | 令和4年4月1日 | 7 | 成年年齢 |
| 令和5年度 | 令和5年4月1日 | 10 | 重要事項説明書・37条書面(記名)、農地の下限面積、共有・所有者不明土地 |
| 令和6年度 | 令和6年4月1日 | 11 | 相続登記 |
| 令和7年度 | 令和7年4月1日 | 12 | 媒介報酬の特例 |
| 令和8年度 | 令和8年4月1日 | 13 | 住所変更登記 |
計算は、表の施行日が、その年度の4月1日以前かどうかで数えた当サイトの集計です。令和5年度は、令和4年5月18日に施行された記名の改正(令和5年度の基準日より前)と、令和5年4月1日施行の2論点が、新しく入ります。
この表から言えることは、2つです。1つ目は、令和2年度以降の8回の試験は、この6論点(令和2年4月1日施行の民法改正)について、同じ法令が基準だということです。2つ目は、令和元年度以前の問題には、この6論点に当たる問があり、旧法のままの答えが載っていることがあるということです。
何年分を解くか:3つの考え方
公式に決まった年数がないので、目的別に考え方を3つに分けます。年数の数字は、この表から当サイトが計算したものです。
| 考え方 | 範囲 | 回数と問数(各回50問として) | 解くだけの時間(120分×回数) |
|---|---|---|---|
| 令和2年度以降をすべて | 令和2年度(10月・12月)〜令和7年度 | 8回・400問 | 960分(16時間) |
| 最近の3回 | 令和5〜7年度 | 3回・150問 | 360分(6時間) |
| さらに古い年度も | 令和元年度以前(RETIOは昭和63年度分から掲載) | 表の論点は新法で答えを出し直し、表にない論点も現行の条文で確かめて使う | 出し直しと確認に追加の時間が必要 |
令和5〜7年度の3回は、冊子のPDFに文字が入っていて、検索できます。令和4年度から平成20年度までの冊子は、画像形式のPDFで、文字検索ができません(当サイトが2026-10-28にPDFを調べた結果)。
周数の公式な基準はありません。何周するかよりも、1問ごとに、根拠の条文と改正の有無を確かめて、理解を残すことを優先します。
古い年度の過去問を使う手順
令和元年度以前の問題を使うときの手順は、4つです。
1. 年度から基準日(その年の4月1日)を決める
2. 問題の論点が、上の13論点の表に当たるかを見る
3. 当たるときは、新法の条文を読んで、答えを自分で出し直す。旧法の答えは使わない
4. 当たらないときも、条文が現行と同じか、e-Govの「時点指定」で確かめてから使う(表は主な改正で、全部ではない)
e-Govの法令検索には、過去の時点の条文を表示する機能があります。この記事の表の旧法の文言も、施行日の前日の時点の条文と照合しています。
合格ナビの自作問題で、改正後の論点を確かめる
合格ナビの宅建の問題360問は、すべて自作の論点別問題で、本試験の問題ではありません。改正後の法令で作っているので、表の論点を、新法の答えで解く練習に使えます。
問題は、答えを見る前に、4つの記述のそれぞれについて正誤を決め、解説の根拠条文と照らしてください。法令の確認日は、各問題のページに載せています。
まとめ
- 宅建は、試験を実施する年度の4月1日に施行されている法令が基準(RETIO)
- 令和2年4月1日施行の民法改正(契約不適合・法定利率・消滅時効・錯誤・個人根保証・配偶者居住権)は、令和2年度以降の8回の試験に入る
- 令和元年度以前の問題は、少なくとも表の論点は新法で答えを出し直し、表にない論点も現行の条文と同じかを確かめてから使う
- 施行日が基準日より後の改正は、翌年度から入る。媒介報酬の特例(令和6年7月1日施行)は令和7年度から
- 年数や周数の公式な基準はない。条文と改正の有無を確かめて、理解を残すことを優先する
著作権・正確性の方針:本サイトは一般財団法人 不動産適正取引推進機構(RETIO)と一切関係ありません。掲載問題は過去の試験問題の転載ではなく、出題範囲を参照した合格ナビ独自の自作問題(論点別問題)です。
よくある質問
Q宅建の過去問は、何年分解けばよいですか?
公式に決まった年数はありません。法令の基準が年度の4月1日なので、年数よりも、その問題が基準日にどの改正を含むかで考えます。民法の債権関係の改正(契約不適合責任・法定利率・消滅時効・錯誤・保証)と、相続関係の改正(配偶者居住権)は令和2年4月1日施行なので、令和2年度以降の試験(令和2・3年度は10月と12月の各2回、令和4〜7年度は各1回の計8回)は改正後の法令に基づきます。令和元年度以前の問題を使うときは、少なくとも表の論点は新法で答えを出し直し、表にない論点も、e-Govの時点指定で現行の条文と同じかを確かめてから使います(表は主な改正で、全部ではありません)。
Q宅建の過去問は何周すればよいですか?
周数の公式な基準はありません。1回分の試験時間は120分なので、令和2年度以降の8回を通して解くだけでも、120分×8回=960分(16時間)かかります(当サイトの計算)。何周するかより、間違えた問題について、根拠の条文と、改正の有無を確かめて理解し直すことに時間を使うほうが、年数や周数の数字より大切です。
Q古い年度の過去問は、使えませんか?
使えますが、年度の基準日より後に施行された改正に関わる問は、答えが変わっていることがあります。RETIOは平成の問題も公表していますが、令和4年度から平成20年度までの冊子はPDFが画像形式で、文字検索はできません(当サイトが2026-10-28にPDFを調べた結果)。表の論点に当たる問を見つけたら、現行の条文で答えを出し直し、表にない論点も現行の条文と同じかを確かめてから使います。
Q令和8年度の試験の問題は、いつ見られますか?
令和8年度試験は2026年10月18日に実施され、合格発表は11月25日の予定です。RETIOの過去の試験問題のページには、2026-10-28 時点で令和7年度までの冊子が掲載されており、令和8年度の冊子の掲載はありません。
Q過去問で出た改正が、次の試験にも出ますか?
次の試験に出る論点を示す公式資料はありません。確実に言えるのは、試験を実施する年度の4月1日に施行されている法令が基準ということだけです。この記事の表は、改正の内容と施行日を、年度の基準日と照らして並べたもので、出題を予想するものではありません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月28日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

