宅建の農地法を、3条(権利移動)・4条(転用)・5条(転用目的の権利移動)の違いから整理。許可権者、市街化区域の届出の特例、許可が要らない場合、相続の届出、無許可の効果と罰則を e-Gov の現行条文の条・項・号つきで1つの表にまとめ、論点別問題へのリンクも載せています。
目次
結論:宅建の農地法は「3条=農地のまま売る・貸す(農業委員会の許可)」「4条=自分の農地を農地以外にする(都道府県知事等の許可)」「5条=農地以外にするために売る・貸す(都道府県知事等の許可)」の3つの区別がすべての出発点です。市街化区域の農地は、4条と5条だけ、あらかじめ農業委員会に届け出れば許可が要りません。3条と5条の許可を受けずにした売買などは効力を生じず、4条・5条の違反には原状回復命令と「三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金」があります。
合格ナビの宅建の論点別問題のうち、法令上の制限は60問で、そのうち農地法を扱う問題は8問です(農地の定義・3条・4条・5条・市街化区域の特例・許可が要らない場合・違反への措置など。2026-10-02 集計)。これは当サイトの問題データの内訳で、本試験の出題数ではありません。
農地法3条・4条・5条の違い(比較表)
| 3条(権利移動) | 4条(転用) | 5条(転用目的の権利移動) | |
|---|---|---|---|
| どんな場面か | 農地・採草放牧地を農地のまま売る・貸す | 自分の農地を農地以外にする | 農地を農地以外にするために売る・貸す |
| 許可を受ける人 | 当事者(売主と買主など) | 転用する者 | 当事者 |
| 許可権者 | 農業委員会 | 都道府県知事等 | 都道府県知事等 |
| 市街化区域の特例 | なし | あらかじめ農業委員会に届け出れば許可不要(4条1項7号) | あらかじめ農業委員会に届け出れば許可不要(5条1項6号) |
| 国・都道府県 | 取得者が国・都道府県なら許可不要(3条1項5号) | 国・都道府県等は協議の成立で許可とみなす(4条8項) | 国・都道府県等は協議の成立で許可とみなす(5条4項) |
| 無許可の契約の効力 | 効力を生じない(3条6項) | (契約を伴わない) | 効力を生じない(5条3項で3条6項を準用) |
| 違反転用への措置 | — | 原状回復などの命令(51条1項) | 原状回復などの命令(51条1項) |
| 罰則(個人) | 三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金(64条1号) | 同左 | 同左 |
| 罰則(法人) | 各本条の罰金刑(67条2号) | 一億円以下の罰金刑(67条1号) | 一億円以下の罰金刑(67条1号) |
「都道府県知事等」は、都道府県知事のほか、農林水産大臣が指定する指定市町村の区域では指定市町村の長です(4条1項)。表の条文の出典は e-Gov 法令検索です(農地法。2026-10-02 時点の現行条文で、2025年6月1日施行の版)。
見分け方は2つの問いで足ります。
- ① 使い道は変わるか:農地のままなら3条、農地以外になるなら4条か5条
- ② 権利(所有権・賃借権など)は人から人へ動くか:動かないなら4条、動くなら3条か5条
「農地」とは:地目ではなく現況で決まる
農地法2条1項は、農地を「耕作の目的に供される土地」と定義しています。採草放牧地は「農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるもの」です(同項)。
定義は土地の使われ方で書かれていて、登記簿の地目には触れていません。そのため、地目が宅地でも耕作していれば農地として扱われます。試験では「登記簿の地目が田だから農地」「市街化区域だから農地法の対象外」という言い回しが誤りの選択肢になりやすい論点です。
宅建業法との関係も押さえておきます。宅建業法2条1号の「宅地」には、建物の敷地に供される土地のほか、「用途地域内のその他の土地」(道路・公園・河川など公共の用に供する施設の用地を除く)が含まれます(宅地建物取引業法)。このため、用途地域内の農地は、現に耕作されていても宅建業法上の宅地に当たります。
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農地法3条:農地のまま売る・貸すときの許可
3条1項は、農地または採草放牧地について「所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合」に、当事者が農業委員会の許可を受けなければならないとしています。売買だけでなく、賃貸借や無償で貸す使用貸借も対象です。抵当権はこの列挙に入っていません。
許可を受けないでした行為は「その効力を生じない」と定められています(3条6項)。取り消すことができる行為ではなく、はじめから効力がない、という点が選択肢の分かれ目になります。
許可がされない場合も3条2項に並んでいます。宅建の学習で押さえておきたいのは次の3つです。
- ① 取得する人やその世帯員等が、取得後に農地の全部を効率的に利用して耕作などを行うと認められない場合(2項1号)
- ② 農地所有適格法人以外の法人が取得しようとする場合(2項2号)
- ③ 取得する人(農地所有適格法人を除く)やその世帯員等が、必要な農作業に常時従事すると認められない場合(2項4号)
ただし、使用貸借や賃借権を設定する場合は、適正に利用しないときは解除する旨の条件が書面の契約に付いていることなど、3条3項の要件を全部満たせば、②と③に当たっても許可を受けられます(3条3項)。
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3条の許可が要らない場合と、相続の届出(3条の3)
3条1項ただし書は、許可が要らない場合を列挙しています。宅建で押さえておきたいのは次のものです。
| 許可が要らない場合 | 条文 |
|---|---|
| 権利を取得する者が国または都道府県 | 3条1項5号 |
| 民事調停法による農事調停 | 3条1項10号 |
| 土地収用法などによる収用・使用 | 3条1項11号 |
| 遺産の分割、財産分与の裁判・調停、相続財産の分与の裁判 | 3条1項12号 |
| 転用目的の権利移動(5条の許可を受ける場面) | 3条1項柱書ただし書(「第五条第一項本文に規定する場合」) |
許可を受けずに農地の権利を取得した人には、届出の義務があります。3条の3は、3条1項本文の権利を取得した者に、許可を受けて取得した場合や3条1項各号(12号と16号を除く)に当たる場合などを除いて、「遅滞なく」農業委員会に届け出ることを求めています。12号が除外のリストから外されているので、遺産分割で取得した人も届出が要ります。届出をしない、または虚偽の届出をした者は「十万円以下の過料」です(69条)。
相続で農地を取得したときも、農林水産省は「農地を相続したときは、その農地の所在地の農業委員会に届出をする必要があります」と案内しています(農林水産省 農地相続ポータル)。つまり相続は、3条の許可ではなく届出の場面です。
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農地法4条:自分の農地を転用するときの許可
4条1項は「農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事…の許可を受けなければならない」と定めています。転用とは、住宅を建てる、駐車場にするなど、耕作以外の用途に充てることです(農林水産省 農地相続ポータルの説明)。所有者が自分で行う場合でも許可が要ります。
4条で押さえる点は次のとおりです。
- ① 対象は「農地」だけ:4条1項は農地を農地以外にする場合で、採草放牧地を転用する場合は書かれていません
- ② 申請は農業委員会を経由:申請書は農業委員会を経由して都道府県知事等に出します(4条2項)
- ③ 市街化区域の特例:市街化区域内の農地を、あらかじめ農業委員会に届け出て農地以外にする場合は許可不要(4条1項7号)
- ④ 一時的な転用も対象:資材置き場など一時的な利用でも、許可の申請で「その利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが確実と認められないとき」は許可されません(4条6項6号)
- ⑤ 5条の許可を受けた農地をその目的に使う場合は、改めて4条の許可は要りません(4条1項1号)
「農地に建物を建てるのは違法か」という疑問には、許可(市街化区域なら届出)を経ずに建てれば4条1項の違反になる、というのが条文の答えです。違反には、都道府県知事等による工事の停止命令や「相当の期限を定めて原状回復その他違反を是正するため必要な措置」の命令があり得ます(51条1項)。許可にどれくらいの期間がかかるかは農地法の条文には書かれていないため、手続の期間は農地のある市町村の農業委員会で確認してください。
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農地法5条:転用するために売る・貸すときの許可
5条1項は、農地を農地以外にするため、または採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く)にするため、3条1項本文の権利を設定・移転する場合に、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならないとしています。
4条との違いは次の2点です。
- ① 採草放牧地も対象:採草放牧地を宅地にするために買う場合は5条の許可が要ります。採草放牧地を農地にするために買う場合は「農地を除く」とされているので5条ではなく、3条の場面です
- ② 契約の効力に直結:5条3項が3条6項を準用しているので、許可を受けないでした売買などは効力を生じません
市街化区域の特例は5条にもあり、市街化区域内の農地・採草放牧地について、あらかじめ農業委員会に届け出て転用のために権利を取得する場合は許可が要りません(5条1項6号)。3条にはこの特例がないので、市街化区域でも農地のまま売るときは農業委員会の許可が必要です。
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違反したとき:契約の効力・原状回復・罰則
| 違反 | 契約の効力 | 行政の措置 | 罰則 |
|---|---|---|---|
| 3条の許可なしに売買・賃貸借 | 効力を生じない(3条6項) | — | 三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金(64条1号) |
| 4条の許可なしに転用 | — | 許可の取消し・工事の停止・原状回復などの命令(51条1項) | 同上。法人は一億円以下の罰金刑(67条1号) |
| 5条の許可なしに転用目的で売買 | 効力を生じない(5条3項・3条6項) | 同上(51条1項) | 同上。法人は一億円以下の罰金刑(67条1号) |
| 51条1項の命令に従わない | — | 公表、行政が自ら原状回復を行い費用を負担させる(51条3項〜5項) | 三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金(64条3号) |
| 3条の3の届出をしない・虚偽の届出 | — | — | 十万円以下の過料(69条) |
罰則の「拘禁刑」は、2025年6月1日施行の「刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律」による改正後の現行の表記です。古い教材と表記が違う場合は、現行条文の表記で覚えてください。
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宅建試験での農地法の出方と、法令基準日
宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです(不動産適正取引推進機構 宅建試験の概要)。令和8年度試験は2026年4月1日現在の法令で出題されます。農地法の現行の版は2025年6月1日施行で、それより後に施行された改正は e-Gov 法令検索の改正履歴にありません(2026-10-02 時点)。
選択肢の言い回しで迷いやすいのは、次の組み合わせです。
- ① 「許可権者は誰か」:3条は農業委員会、4条・5条は都道府県知事等
- ② 「市街化区域の特例はどれにあるか」:4条・5条だけ。3条には無い
- ③ 「無許可の効果は何か」:3条・5条は効力を生じない(取り消せる、ではない)
- ④ 「国・都道府県はどうなるか」:3条は取得者が国・都道府県なら許可不要、4条・5条は協議の成立で許可とみなす(地域振興上の施設などは許可不要の号もある)
- ⑤ 「相続はどうなるか」:許可ではなく農業委員会への届出(3条の3)
農地法の全体像を法令上の制限の他の法律と並べて確認したいときは、宅建の法令上の制限|数字の表と覚え方にまとめています。
当サイトの宅建の問題は、過去の出題論点をもとに作成した論点別問題です。各問に初級・標準・上級の3段階の解説がついています。
まとめ
- 3条は農地のまま権利移動(農業委員会)、4条は自分で転用(都道府県知事等)、5条は転用目的の権利移動(都道府県知事等)
- 市街化区域の届出の特例は4条(1項7号)と5条(1項6号)だけ
- 3条・5条の許可を受けずにした行為は効力を生じない。4条・5条の違反には原状回復などの命令がある
- 罰則は三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金。4条・5条違反の法人は一億円以下の罰金刑
- 相続や遺産分割で取得したときは許可ではなく農業委員会への届出(3条の3)。届出を怠ると十万円以下の過料
- 農地かどうかは登記簿の地目ではなく現況で決まる
よくある質問
Q登記簿の地目が「宅地」なら、農地法の許可は要りませんか?
地目では決まりません。農地法2条1項は農地を「耕作の目的に供される土地」と定義していて、判断の基準は土地の現況です。登記簿の地目が宅地でも、実際に耕作に使われていれば農地として扱われます。地目が田や畑であることだけでは、農地かどうかは決まりません。
Q農地を担保に抵当権を設定するときも3条の許可が要りますか?
3条1項が許可を求めているのは、所有権の移転と、地上権・永小作権・質権・使用貸借による権利・賃借権・その他の使用及び収益を目的とする権利の設定・移転です。抵当権はこの列挙に入っていないため、抵当権の設定だけなら3条の許可の対象ではありません。質権は列挙に入っているので許可が要ります。
Q農地の賃貸借をやめるときにも許可が要りますか?
原則として要ります。農地法18条1項により、農地の賃貸借の解除・解約の申入れ・合意による解約・更新をしない旨の通知には都道府県知事の許可が必要で、許可なくした行為は効力を生じません(18条5項)。ただし、引き渡す期限前6か月以内に成立し書面で明らかな合意解約などは、許可が要りません(18条1項2号)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月2日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

