保育士試験の筆記科目「保育原理」の出題範囲を、協議会の出題範囲と教科目の教授内容にそって整理しました。保育原理の範囲に乳児保育・障害児保育・子育て支援が含まれること、児童福祉法と子ども・子育て支援法にもとづく保育の仕組み、保育の歴史を学ぶ公的資料を説明します。
目次
- 「保育原理」の形式と法令の基準日
- 協議会が示す「保育原理」の出題範囲
- 教科目「保育原理」の目標と内容
- 保育の意義と目的:児童福祉法・こども基本法と「最善の利益」
- 保育に関する法令と制度:保育の実施体系
- 保育所保育指針における保育の基本
- 同じ範囲に含まれる4つの教科目:乳児保育・障害児保育・子育て支援
- 乳児保育:3歳未満児の保育と、指針の配慮事項
- 障害児保育:法令上の「障害児」と、指針で障害のある子どもに触れる箇所
- 子育て支援:保護者への支援と地域への支援
- 保育の思想と歴史的変遷:公的資料で確かめられる範囲
- 保育の現状と課題:保育所等の定員・待機児童
- 学び方の例:範囲の5教科目と、根拠法令を対応させる
- まとめ:範囲は協議会、中身は法令と指針で確かめる
結論:「保育原理」は、保育の意義と、保育の内容・方法を体系的に理解しているかを見る科目です。協議会の出題範囲は、保育所保育指針の内容と、保育士の役割・責務、子育て支援を含む保育の社会的意義を挙げています。範囲には教科目「保育原理」のほか、「乳児保育Ⅰ」「乳児保育Ⅱ」「障害児保育」「子育て支援」の内容も含まれます。読む資料の中心は、児童福祉法、子ども・子育て支援法、保育所保育指針です。法令と指針は令和8年4月1日以前に施行されたものが基準です。
保育士試験の「保育原理」は、保育という仕事と制度の土台を学ぶ科目です。このページでは、協議会の出題範囲と教科目の教授内容にそって、何を学ぶ科目か、どの法令・資料を読めばよいかを整理します。保育所保育指針そのものの章立てと改定の経緯は保育所保育指針とはで説明しているので、このページでは、保育原理の中で指針がどこに位置づくかだけを扱います。勉強の計画の立て方は保育士試験の独学の勉強法にあります。条文は、令和8年4月1日時点の e-Gov の条文で確認しました。
「保育原理」の形式と法令の基準日
令和8年後期の筆記試験では、保育原理は1日目の2科目目で、満点100点、試験時間は60分です。合格は、各科目で満点の6割以上を得点することです。
令和8年後期の保育原理の試験日時:2026年(令和8年)10月24日(土)の2科目目。入室12:50、試験時間13:00〜14:00、満点100点。最終確認日:2026-10-12。出典:協議会 筆記試験(後期)概要。
筆記試験の問題数:教育原理と社会的養護は各10問、そのほかの7科目は各20問(合計160問)。したがって保育原理は20問。令和8年前期・地域限定の筆記試験の正答表で確認。最終確認日:2026-10-12。出典:協議会 令和8年筆記試験(前期・地域限定)問題・正答。
合格の決まり:各科目において、満点の6割以上得点した者を合格とする。最終確認日:2026-10-12。出典:協議会 筆記試験(後期)概要。
筆記試験の法令の基準日:「筆記試験における法令・保育所保育指針等については、令和8年4月1日以前に施行されたものに基づいて出題します。」最終確認日:2026-10-12。出典:協議会 筆記試験(後期)概要。
保育の制度は、法令の改正が続く分野です。児童福祉法と子ども・子育て支援法は、令和8年10月1日に施行された改正(医療法等の一部を改正する法律、令和7年法律第87号)が e-Gov の現行の版に入っています。本稿が引く条(児童福祉法の第1条〜第4条・第6条の2の2・第6条の3・第18条の4・第24条・第39条・第39条の2・第48条の4、子ども・子育て支援法の第7条・第19条・第20条・第27条・第29条・第30条の12・第59条・附則第6条)は、令和8年4月1日時点の版と現行の版で文言が同じであることを、2つの版を並べて確かめました。障害者差別解消法の第7条・第8条も、2つの版で同じです。ほかの条を読むときは、施行日を確かめてください。
協議会が示す「保育原理」の出題範囲
協議会が公開している「保育士試験出題範囲」には、科目ごとに出題の基本方針、出題範囲、出題上の留意事項が書かれています。保育原理の基本方針は次のとおりです。
- 基本方針:「保育の意義並びに保育の内容及び方法について体系的に理解しているかを問うことを基本とする。」
- 問題選択に当たっては、「保育所保育指針の内容並びに児童の保育及び保護者に対する保育に関する指導を担う保育士の役割及び責務」について、また、「子育て支援等を含む保育の社会的意義など、保育に関する現代的課題」に関しても配慮が必要とされています
出題範囲は、「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について」(平成15年12月9日付け雇児発第1209001号)別紙3「教科目の教授内容」のうち、次の5つの教科目の内容です。
1. 「保育原理」
2. 「乳児保育Ⅰ」
3. 「乳児保育Ⅱ」
4. 「障害児保育」
5. 「子育て支援」
出題上の留意事項は3つ書かれています。
1. 「保育所保育指針の内容と保育の実際との関連を重視した出題が望ましい。」
2. 「教育原理、子ども家庭福祉、社会福祉及び社会的養護の出題と十分関連をとって出題する。」
3. 出題範囲の改正に伴う経過措置として、当分の間、保育原理の出題については、「改正前の出題範囲における保育相談支援の内容全般を理解していることを前提とした出題とする」
出典は、協議会の保育士試験出題範囲(PDF)です。教授内容の版は、協議会が掲載している教科目の教授内容(PDF)にそって読みます。
教科目「保育原理」の目標と内容
教授内容は、教科目ごとに「目標」と「内容」が示されています。「保育原理」の目標は5つです。
1. 保育の意義及び目的について理解する
2. 保育に関する法令及び制度を理解する
3. 保育所保育指針における保育の基本について理解する
4. 保育の思想と歴史的変遷について理解する
5. 保育の現状と課題について理解する
目標ごとの内容と、このページで読む資料の対応を表にします。右の列は、当サイトが内容ごとに対応づけた資料の例で、協議会の資料に書かれているものではありません。
| 内容(大項目) | 内容(小項目) | 読む資料の例(当サイトによる対応づけ) |
|---|---|---|
| 1 保育の意義及び目的 | 保育の理念と概念/子どもの最善の利益と保育/子ども家庭福祉と保育/保育の社会的役割と責任 | 児童福祉法第1条〜第3条、こども基本法第3条、保育所保育指針第1章 |
| 2 保育に関する法令及び制度 | 子ども家庭福祉の法体系における保育の位置付けと関係法令/子ども・子育て支援新制度/保育の実施体系 | 児童福祉法第24条・第39条、子ども・子育て支援法、認定こども園法 |
| 3 保育所保育指針における保育の基本 | 保育所保育指針/保育所保育に関する基本原則/保育における養護/保育の目標/保育の内容/保育の環境・方法/子どもの理解に基づく保育の過程とその循環 | 保育所保育指針(原文と解説) |
| 4 保育の思想と歴史的変遷 | 諸外国の保育の思想と歴史/日本の保育の思想と歴史 | 学制百年史(文部科学省)、保育所保育指針解説の序章 |
| 5 保育の現状と課題 | 諸外国の保育の現状/日本の保育の現状と課題 | 保育所等関連状況取りまとめ(こども家庭庁) |
保育の意義と目的:児童福祉法・こども基本法と「最善の利益」
保育の意義を法令の側から読むと、出発点は児童福祉法の第1条〜第3条です。
| 条 | 要点 |
|---|---|
| 第1条 | 「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」 |
| 第2条第1項 | 全て国民は、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない |
| 第2条第2項・第3項 | 保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて「第一義的責任」を負い、国及び地方公共団体は、保護者とともに育成する責任を負う |
| 第3条 | 前2条は児童の福祉を保障するための原理で、すべて児童に関する法令の施行にあたって常に尊重されなければならない |
こども基本法第3条は、こども施策の基本理念の一つとして、全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、「その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること」を挙げています。児童福祉法と同じく、子どもの最善の利益が保育を考える軸になっていると読めます。
保育所保育指針の第1章は、保育所を「入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない」と述べています。法令と同じ「最善の利益」という言葉が、指針の第1章にも置かれています。
保育士の位置づけは、児童福祉法第18条の4にあります。保育士とは、保育士登録を受け、保育士の名称を用いて、「専門的知識及び技術をもつて、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者」です。指針の第1章も、保育士は、子どもを保育するとともに「子どもの保護者に対する保育に関する指導を行うもの」としています。協議会の基本方針が「児童の保育及び保護者に対する保育に関する指導を担う保育士の役割及び責務」を挙げているのは、この条文の文言と対応していると読めます。
保育に関する法令と制度:保育の実施体系
「保育に関する法令及び制度」は、保育を誰が、どの施設で、どんな費用の仕組みで提供するかを学ぶ項目です。条文と資料から、骨格を整理します。
市町村の保育の実施責任と保育所
児童福祉法第24条第1項は、保護者の労働または疾病その他の事由により、乳児、幼児その他の児童について保育を必要とする場合に、市町村が保育所において保育しなければならないと定めています。第2項は、認定こども園(子ども・子育て支援法の確認を受けたもの)または家庭的保育事業等により、「必要な保育を確保するための措置を講じなければならない」としています。
保育所の定義は第39条第1項にあります。「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設」で、利用定員が20人以上のものです。保育時間は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(設備運営基準)第34条に定めがあります。
保育所の保育時間:一日につき八時間を原則とし、その地方における乳幼児の保護者の労働時間その他家庭の状況等を考慮して、保育所の長が定める。最終確認日:2026-10-12。出典:e-Gov法令検索 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第34条(令和8年4月1日時点)。
施設と事業の種類
保育を担う施設・事業は、法律ごとに定義があります。
| 施設・事業 | 根拠 | 条文の要点 |
|---|---|---|
| 保育所 | 児童福祉法第39条第1項 | 保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行う施設 |
| 幼保連携型認定こども園 | 児童福祉法第39条の2、認定こども園法第2条第7項 | 満3歳以上の幼児への教育と、保育を必要とする乳児・幼児への保育を一体的に行う施設 |
| 幼稚園 | 学校教育法第1条(認定こども園法第2条第2項が引用) | 学校教育法に規定する幼稚園 |
| 家庭的保育事業・小規模保育事業・居宅訪問型保育事業・事業所内保育事業 | 児童福祉法第6条の3第9項〜第12項、子ども・子育て支援法第7条第5項・第29条 | 子ども・子育て支援法は、この4つの保育を「地域型保育」とし、市町村長が確認した事業者から受けた保育に地域型保育給付費を支給する |
家庭的保育事業は、利用定員が5人以下のもの、小規模保育事業は、利用定員が6人以上19人以下のもの、と条文に数が書かれています。
幼保連携型認定こども園の職員の資格:幼保連携型認定こども園の保育教諭などは、幼稚園の教諭の普通免許状を有し、かつ児童福祉法第18条の18第1項の保育士の登録を受けた者でなければならない(認定こども園法第15条第1項)。認定地方公共団体の区域にある園に勤務する者は、その長による地域限定保育士の登録(児童福祉法第18条の28第1項)でもよい。最終確認日:2026-10-14。出典:e-Gov法令検索 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律。
認定こども園で働くには保育士資格だけでよいのか、という点は、認定こども園のタイプや経過措置によって答えが変わります。認定こども園・保育所・幼稚園の違いで、タイプ別の職員資格と特例の期限を整理しています。
子ども・子育て支援新制度
こども家庭庁は、子ども・子育て支援制度を、平成24年8月に成立した「子ども・子育て支援法」、認定こども園法の一部改正、関係法律の整備法の「子ども・子育て関連3法」に基づく制度と説明しています。主なポイントのうち、保育に関わるのは次の点です。
- 認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付である「施設型給付」と、小規模保育等への給付である「地域型保育給付」が創設された
- 幼保連携型認定こども園について、認可・指導監督を一本化し、学校および児童福祉施設としての法的な位置づけをした
- 市町村が実施主体で、地域のニーズに基づいて計画を策定し、給付・事業を実施する
子ども・子育て支援法の条文では、次の流れを確認できます。
1. 第19条が、給付の対象になる小学校就学前子どもを、満3歳以上の子どものうち第2号に当たらない子ども(第1号)、満3歳以上で保育の必要がある子ども(第2号)、満3歳未満で保育の必要がある子ども(第3号)の3つに区分している
2. 第20条が、保護者は、市町村に申請して認定を受けなければならないとし、市町村は保育を必要とする子どもには保育必要量の認定を行うと定めている
3. 第27条が、認定を受けた子どもが、市町村長が確認した特定教育・保育施設で教育・保育を受けたときに、市町村が施設型給付費を支給すると定めている。地域型保育は第29条で、地域型保育給付費として支給される
保護者のニーズに応じた施策は「地域子ども・子育て支援事業」として第59条に並んでいます。時間外保育の費用の助成、放課後児童健全育成事業、乳児家庭全戸訪問事業、地域子育て支援拠点事業、一時預かり事業、病児保育事業などが挙がっています。
私立保育所の費用は「委託費」
こども家庭庁の保育所の基礎資料には、私立保育所の費用についての注記があります。児童福祉法第24条により保育所における保育は市町村が実施することとされているため、私立保育所における保育の費用については、「施設型給付ではなく」、市町村が施設に対して、保育に要する費用を「委託費として支払う」と書かれています。資料は、根拠を子ども・子育て支援法附則第6条としています。附則第6条第1項の条文は、市町村は、児童福祉法第24条第1項により保育所における保育を行うため、当分の間、都道府県及び市町村以外の者が設置する保育所(特定保育所)で受けた保育の費用を「当該特定保育所に委託費として支払うものとする」とし、「この場合において、第二十七条の規定は適用しない」と定めています(令和8年4月1日時点の条文。現行の条文も同じ)。保育所は、児童福祉法に基づく施設であり、子ども・子育て支援法の施設型給付と並べて整理するときに、費用の流れの違いに注意が要る施設だと分かります。
こども誰でも通園制度
3歳未満の乳児・幼児を対象にした新しい仕組みが、令和8年度から全国で始まっています。法令では、児童福祉法第6条の3第23項に乳児等通園支援事業が定義され、子ども・子育て支援法第30条の12が「乳児等のための支援給付は、乳児等支援給付費及び特例乳児等支援給付費の支給とする。」と定めています。
こども誰でも通園制度の実施時期:「2026年度から子ども・子育て支援法に基づく新たな給付として全国の自治体において実施されます」。最終確認日:2026-10-12。出典:こども家庭庁 こども誰でも通園制度について。
保育所保育指針における保育の基本
教授内容の第3項「保育所保育指針における保育の基本」は、7つの内容でできています。指針のどこを読めばよいかを、対応表にしました。指針の章立てと改定の経緯は保育所保育指針とはにあります。
| 教授内容の項目 | 指針で読む場所(当サイトによる対応づけ) |
|---|---|
| 保育所保育指針 | 第1章の冒頭(設備運営基準第35条の規定に基づく指針であること) |
| 保育所保育に関する基本原則 | 第1章1(保育所の役割、保育の目標、保育の方法、保育の環境、保育所の社会的責任) |
| 保育における養護 | 第1章2(養護の理念、養護に関わるねらい及び内容) |
| 保育の目標 | 第1章1の(2) |
| 保育の内容 | 第2章 |
| 保育の環境・方法 | 第1章1の(3)(4) |
| 子どもの理解に基づく保育の過程とその循環 | 第1章3(保育の計画及び評価) |
最後の項目の「循環」は、第1章3の(5)に書かれています。指針は、「保育の計画に基づく保育、保育の内容の評価及びこれに基づく改善という一連の取組により、保育の質の向上が図られるよう」、全職員が共通理解をもって取り組むことに留意するとしています。教授内容がこの項目に「計画・実践・記録・省察・評価・改善」と添えているとおり、これらが一つの流れとしてつながっていることが、この項目の中心です。
協議会の留意事項が「保育所保育指針の内容と保育の実際との関連を重視した出題が望ましい」としているため、指針は、条文を暗記するだけでなく、保育の場面と結びつけて読む資料です。指針の原文は、こども家庭庁の保育のページで公開されています。
同じ範囲に含まれる4つの教科目:乳児保育・障害児保育・子育て支援
保育原理の範囲には、教科目「保育原理」以外に、乳児保育Ⅰ・Ⅱ、障害児保育、子育て支援の内容が入っています。教科目ごとの読む資料は、次の表のとおりです。目標と中身は、このあとの3つの節で教科目ごとに整理します。
| 教科目 | 読む資料 |
|---|---|
| 乳児保育Ⅰ・Ⅱ | 保育所保育指針の第1章3・第2章1、児童福祉法第4条 |
| 障害児保育 | 保育所保育指針の第1章3・第3章2・第4章2、児童福祉法第4条第2項・第6条の2の2、障害者差別解消法 |
| 子育て支援 | 保育所保育指針の第4章、児童福祉法第18条の4・第48条の4・第6条の3 |
乳児保育:3歳未満児の保育と、指針の配慮事項
教授内容の注記は、乳児保育を「3歳未満児を念頭においた保育」としています。乳児保育Ⅰは、乳児保育の意義・目的と歴史的変遷、保育所と乳児院、家庭的保育などの現状と課題、3歳未満児の発育・発達を踏まえた保育、職員間の連携を扱います。乳児保育Ⅱは、3歳未満児の生活と遊び、配慮の実際、長期的な指導計画と短期的な指導計画、個別的な指導計画と集団の指導計画を扱います。
指針の第1章は、指導計画の作成に当たり、「3歳未満児については、一人一人の子どもの生育歴、心身の発達、活動の実態等に即して、個別的な計画を作成すること」としています。児童福祉法第4条は、満1歳に満たない者を乳児、満1歳から小学校就学の始期に達するまでの者を幼児と区別しています。
乳児保育の内容は、指針の第2章1「乳児保育に関わるねらい及び内容」に書かれています。基本的事項は、乳児保育は「愛情豊かに、応答的に行われることが特に必要である」とし、ねらい及び内容を、5領域ではなく3つの視点(「健やかに伸び伸びと育つ」「身近な人と気持ちが通じ合う」「身近なものと関わり感性が育つ」)でまとめています。3つの視点の趣旨とねらい、5領域との関係は、保育の5領域とはで詳しく扱っています。
第2章1の最後には「保育の実施に関わる配慮事項」が置かれ、次の5点が挙げられています。
- 乳児は疾病への抵抗力が弱いため、一人一人の発育・発達状態や健康状態の判断に基づく保健的な対応を行うこと
- 一人一人の生育歴の違いに留意し、欲求を適切に満たし、特定の保育士が応答的に関わるように努めること
- 職員間の連携や嘱託医との連携を図り、第3章を踏まえて対応すること
- 保護者との信頼関係を築きながら保育を進め、保護者からの相談に応じ、支援に努めること
- 担当の保育士が替わる場合は、子どものそれまでの生育歴や発達過程に留意し、職員間で協力して対応すること
乳児保育の視点と配慮事項の出典:保育所保育指針(平成30年度~)第2章1の⑴基本的事項と⑶保育の実施に関わる配慮事項(ア〜オの5点)。最終確認日:2026-10-14。出典:こども家庭庁 保育所保育指針(PDF)。
指針全体の章立ては、保育所保育指針とはにあります。
障害児保育:法令上の「障害児」と、指針で障害のある子どもに触れる箇所
障害児保育は、障害児保育を支える理念と歴史的変遷、障害の種類ごとの理解と援助、指導計画及び個別の支援計画の作成、家庭・自治体・関係機関との連携を扱います。
法令上の「障害児」は、児童福祉法第4条第2項で、身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童(発達障害者支援法に規定する発達障害児を含む)、または治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病(障害者総合支援法第4条第1項の政令で定めるもの)による障害の程度が主務大臣の定める程度である児童、と定義されています(e-Gov法令検索の現行の条文、2026-10-14 確認)。保育所保育指針の本文で「障害」という語が出てくるのは、次の3か所です(2026-10-14 時点)。
| 指針の場所 | 書かれていること |
|---|---|
| 第1章 保育の計画及び評価(指導計画の作成) | 障害のある子どもの保育は、一人一人の発達過程や障害の状態を把握し、適切な環境の下で、他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう、指導計画の中に位置付ける。家庭や関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成するなど、適切な対応を図る |
| 第3章 食育の推進(食育の環境の整備等) | 体調不良、食物アレルギー、障害のある子どもなど、一人一人の心身の状態等に応じ、嘱託医、かかりつけ医等の指示や協力の下に適切に対応する |
| 第4章 保育所を利用している保護者に対する子育て支援 | 子どもに障害や発達上の課題が見られる場合は、市町村や関係機関と連携及び協力を図りつつ、保護者に対する個別の支援を行うよう努める |
障害のある子どもに関する指針の記述の出典:保育所保育指針(平成30年度~)の第1章3⑵キ、第3章2⑵ウ、第4章2⑵イ。最終確認日:2026-10-14。出典:こども家庭庁 保育所保育指針(PDF)・e-Gov法令検索 児童福祉法。
指針のほかに、次の法令が読めます。
- 児童福祉法第6条の2の2:障害児通所支援として、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援を定めています。保育所等訪問支援は、保育所などに通う障害児について、その施設を訪問し、障害児以外の児童との「集団生活への適応のための専門的な支援その他の便宜を供与する」ことです
- 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)第7条第2項・第8条第2項:行政機関等と事業者は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があり、負担が過重でないときは、「必要かつ合理的な配慮をしなければならない」と定めています。教授内容の「合理的配慮」の理解にかかわる条文です
子育て支援:保護者への支援と地域への支援
子育て支援は、保育士の行う保護者への支援(保育相談支援)の特性と展開を扱います。教授内容の目標は、保育士の行う「保育の専門性を背景とした保護者に対する相談、助言、情報提供、行動見本の提示等の支援(保育相談支援)」を理解することです。出題範囲の経過措置が、保育原理の出題は「保育相談支援の内容全般を理解していることを前提」とすると書いているのは、この項目に対応すると読めます。
法令では、児童福祉法第18条の4が保育士の業務に保護者に対する保育に関する指導を含めています。第48条の4は、保育所に、地域の住民に対する保育に関する情報の提供を「行わなければならない」と義務づけ、保育に支障がない限り乳児、幼児等の保育に関する相談に応じ、助言を行うよう「努めなければならない」としています。義務と努力義務が書き分けられています。地域子育て支援拠点事業は第6条の3第6項に、「乳児又は幼児及びその保護者が相互の交流を行う場所を開設し、子育てについての相談、情報の提供、助言その他の援助を行う事業」と定義されています。指針の第4章の内容は保育所保育指針とはに、虐待の通告や子ども家庭福祉の制度は科目「子ども家庭福祉」にあります。
保育の思想と歴史的変遷:公的資料で確かめられる範囲
教授内容の第4項「保育の思想と歴史的変遷」は、「諸外国の保育の思想と歴史」と「日本の保育の思想と歴史」の2つです。協議会の出題範囲と教授内容には、思想家の人名、著作、年号の記載がありません(2026-10-12 時点)。項目名だけが示されているので、この科目の歴史は、自分が使うテキストの目次と項目名を見比べて抜けを確かめる形になります。
本稿は、人名や年号を記憶で補わず、国の公的資料に書かれていることだけを紹介します。確認できたのは、日本の幼稚園の始まりと、保育所の法律上の位置づけの2点です。
日本の幼稚園と児童福祉法の年月:東京女子師範学校付属幼稚園の開設は明治9年11月。幼稚園令の制定は大正15年4月22日。児童福祉法は昭和22年法律第164号(公布日 1947-12-12)。最終確認日:2026-10-12。出典:文部科学省 学制百年史 五 幼稚園の創設・文部科学省 学制百年史 三 幼稚園令の制定・e-Gov法令検索 児童福祉法。
文部科学省の「学制百年史」は、明治5年の「学制」に「幼稚小学」が定められたが実現しなかったこと、そして次のように幼稚園が発足したことを記録しています。
「次いで九年十一月に東京女子師範学校付属幼稚園が開設され、これによってわが国の幼稚園は発足し、その後の発達の基礎がおかれた。」
同じ資料は、京都の小学校に開設された幼児施設について、ドイツのフレーベル流の幼稚園を模範として設けられたようだと書き、東京女子師範学校付属幼稚園は「フレーベルの幼稚園を模範とする幼稚園保育」を開始したと説明しています。ここで名前が出ているフレーベルの考え方そのものは、この資料には書かれていないため、本稿では扱いません。
大正15年に制定された幼稚園令について、同資料は、わが国ではじめて幼稚園に関して独立した勅令が公布されたと説明し、目的を「幼児ヲ保育シテ其ノ心身ヲ健全ニ発達セシメ善良ナル性情ヲ涵養シ家庭教育ヲ補フ」こととしたと記録しています。保育項目は、遊戯、唱歌、観察、談話、手技等とされました。また、幼稚園に保育所的な性格をもたせようとした方針があったが、実際には実現しなかった、とも書かれています。
保育所の側は、児童福祉法が昭和22年法律第164号として定められ、現在も保育所の定義(第39条)と市町村の保育の実施責任(第24条)の根拠になっています。保育所保育指針は、昭和40年に策定され、平成2年、平成11年の2回の改訂を経て、平成20年度の改定で告示化された、と指針解説に書かれています(保育所保育指針とはで説明しています)。
諸外国の保育の思想と歴史そのものを説明した記載は、本稿で確認した公的資料(学制百年史の「幼稚園の創設」「幼稚園令の制定」の節、こども家庭庁の保育のページ、協議会の出題範囲と教授内容)にはありません(2026-10-12 時点)。学制百年史にはフレーベルの名が出てきますが、その思想の説明はないため、本稿では扱っていません。
保育の現状と課題:保育所等の定員・待機児童
教授内容の第5項は、「諸外国の保育の現状」と「日本の保育の現状と課題」です。日本の現状は、こども家庭庁の「保育所等関連状況取りまとめ」で、毎年の数字が公表されています。この取りまとめは、全国の保育所等の状況を把握するために毎年実施しているもので、平成27年度の調査から、従来の保育所に加えて、幼保連携型認定こども園等の特定教育・保育施設と特定地域型保育事業(うち2号・3号認定)の数値を含みます。
保育所等関連状況取りまとめ 令和8年4月1日:保育所等利用定員は302万人(前年比1.3万人の減少)。保育所等を利用する児童の数は265万人(前年比3.2万人の減少)。待機児童数は2,435人で前年比181人の増加。待機児童のいる市区町村は前年から22減少して189市区町村。待機児童が100人以上の市区町村は前年から2増加して3自治体。定員充足率は87.7%(前年比0.7%の減少)。最終確認日:2026-10-12。出典:こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)。
数字は毎年変わるため、読むときは調査の時点(4月1日)を確かめます。
保育の質に関わる職員配置の基準は、こども家庭庁の基礎資料に、設備運営基準の「従うべき基準」として整理されています。
保育所の職員配置基準:0歳児は保育士1人に3人(3:1)、1・2歳児は6:1、3歳児は15:1、4歳以上児は25:1。1歳児は職員配置を5:1とした場合の加算措置がある。3歳児は令和9年度末までの経過措置(20:1)がある。4歳以上児は当分の間の経過措置(30:1)がある。ただし、保育士は最低2名以上配置する。最終確認日:2026-10-12。出典:こども家庭庁 保育所の基礎資料(令和8年4月1日に掲載資料を更新)。
基礎資料は、この基準が都道府県、指定都市、中核市の条例で定められること、従うべき基準であっても自治体がこれを上回る基準を定めることは可能であることも書いています。本則の数は、設備運営基準第33条第2項に、乳児おおむね3人、満1歳以上満3歳未満の幼児おおむね6人、満3歳以上満4歳未満の幼児おおむね15人、満4歳以上の幼児おおむね25人につき各1人以上、保育所1につき2人を下ることはできない、と書かれています(令和8年4月1日時点の条文)。経過措置は、同基準を改正した府令の附則に、保育の提供に支障を及ぼすおそれがあるときは、3歳児は令和10年3月31日までの間、4歳以上児は当分の間、改正後の数を適用せず、改正前の規定がなお効力を有する、という形で置かれています。数の基準に経過措置が付いている年齢区分があるため、保育士1人あたりの子どもの数を覚えるときは、本則と経過措置をセットで確かめます。年齢ごとの数字と根拠条文を詳しく確かめたいときは、保育所の職員配置基準の記事に分けてまとめています。
こども家庭庁は、今後の保育政策の方向を「保育政策の新たな方向性」(令和6年12月20日公表)にまとめ、地域のニーズに対応した質の高い保育の確保・充実、全てのこどもの育ちと子育て家庭を支援する取組の推進、保育人材の確保とテクノロジーの活用等による業務改善、の3つの柱を示しています。「日本の保育の現状と課題」を学ぶときの、整理の軸に使えます。
諸外国の保育の現状については、本稿で確認したこども家庭庁の保育のページと取りまとめのページに記載がなく、扱っていません(2026-10-12 時点)。
学び方の例:範囲の5教科目と、根拠法令を対応させる
勉強の計画は、受験者ごとに違います。協議会の資料には、必要な勉強時間の記載がありません(2026-10-12 時点)。ここでは、この科目の構造から考えた進め方の例を挙げます。
1. 出題範囲の5つの教科目(保育原理・乳児保育Ⅰ・乳児保育Ⅱ・障害児保育・子育て支援)を、自分のノートの見出しにする
2. 保育原理の5つの目標ごとに、根拠になる資料を1つずつ決める(意義と目的は児童福祉法第1条〜第3条、法令と制度は児童福祉法第24条・第39条と子ども・子育て支援法、指針は原文、現状は取りまとめ)
3. 施設・事業の種類は、保育所・幼保連携型認定こども園・幼稚園・地域型保育の根拠条文を表にして、定義と費用の流れを並べる
4. 条文の語尾(しなければならない/努めなければならない)を、義務と努力義務の区別として確かめる。第48条の4は、1項と2項で書き分けられています
5. 数字は、調査や基準の時点(4月1日)を一緒に書き留める。経過措置が付く基準は、本則と経過措置を別の行に書く
6. 読んだ資料の施行日を確かめ、令和8年4月1日以前の条文かどうか見る
7. 合格ナビのオリジナル問題で、確認する。科目別の演習と模擬試験が使えます
保育原理は、教育原理・子ども家庭福祉・社会福祉・社会的養護と十分関連をとって出題すると協議会が書いている科目です。保育の意義や制度は、科目「子ども家庭福祉」や科目「教育原理」「社会的養護」と重なる部分があるので、あわせて読むと整理しやすくなります。科目ごとの免除の条件は、保育士試験の科目と科目免除にまとめています。
まとめ:範囲は協議会、中身は法令と指針で確かめる
- 保育原理の範囲は、協議会の出題範囲で決まります。教科目「保育原理」に加えて、「乳児保育Ⅰ」「乳児保育Ⅱ」「障害児保育」「子育て支援」の内容が含まれます
- 読む資料の中心は、児童福祉法、子ども・子育て支援法、保育所保育指針です。保育の意義は児童福祉法第1条〜第3条、実施体系は第24条・第39条と子ども・子育て支援法で確かめられます
- 法令と指針は令和8年4月1日以前に施行されたものが基準です。児童福祉法と子ども・子育て支援法は、令和8年10月1日施行の改正が現行の版に入っています
- 保育の歴史は、協議会の資料に項目名しかなく、公的資料では日本の幼稚園の始まりと幼稚園令を確認できました。諸外国の思想と現状は、本稿では扱っていません
次にやることは、次のとおりです。
出典の一覧:協議会 保育士試験出題範囲(PDF)、協議会 教科目の教授内容(PDF)、協議会 筆記試験(後期)概要、協議会 令和8年筆記試験(前期・地域限定)問題・正答、こども家庭庁 保育、保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)、こども誰でも通園制度について、子ども・子育て支援制度の概要、「保育政策の新たな方向性」について、保育所の基礎資料(PDF)、保育所保育指針(PDF)、文部科学省 学制百年史、e-Gov法令検索 児童福祉法、子ども・子育て支援法、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律、こども基本法、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準。数字と条文は2026-10-12 時点で、法令は令和8年4月1日時点の条文を確認しました。
よくある質問
Q「保育原理」の出題範囲に、乳児保育・障害児保育・子育て支援まで入っているのは本当ですか?
協議会の出題範囲には、保育原理の出題範囲として、教科目「保育原理」「乳児保育Ⅰ」「乳児保育Ⅱ」「障害児保育」「子育て支援」の内容と書かれています。保育原理の問題は、科目名の「保育原理」だけでなく、この5つの教科目の内容を範囲として作られます。保育原理の教授内容そのものは、保育の意義、法令と制度、保育所保育指針、思想と歴史、現状と課題の5つの柱です(2026-10-12 時点)。
Q保育所、幼稚園、幼保連携型認定こども園は、法令上どう位置づけられていますか?
保育所は、児童福祉法第39条第1項が「保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて保育を行うことを目的とする施設」と定めています。幼稚園は学校教育法第1条に規定する幼稚園で、認定こども園法がこれを引いています。幼保連携型認定こども園は、満3歳以上の幼児への教育と、保育を必要とする乳児・幼児への保育を一体的に行う施設で、児童福祉法第39条の2と認定こども園法が定めています。令和8年4月1日時点の条文で確認しました。
Q私立保育所の運営費は、子ども・子育て支援法の「施設型給付」で支払われるのですか?
こども家庭庁の保育所の基礎資料では、私立保育所の保育の費用は、施設型給付ではなく、市町村が施設に対して委託費として支払う仕組みだと説明されています。資料は、児童福祉法第24条で保育所における保育は市町村が実施することとされているためとし、根拠を子ども・子育て支援法附則第6条としています。附則第6条第1項は、当分の間、都道府県及び市町村以外の者が設置する保育所の保育費用を「委託費として支払うものとする」とし、この場合は第27条(施設型給付費)を適用しないと定めています(令和8年4月1日時点の条文。現行の条文も同じ)。認定こども園や幼稚園などの施設型給付とは、仕組みが分かれています(2026-10-12 時点)。
Q保育の思想家や歴史の年号は、どの資料で確かめればよいですか?
協議会の教授内容には「諸外国の保育の思想と歴史」「日本の保育の思想と歴史」と項目名があるだけで、人名や年号の記載はありません(2026-10-12 時点)。日本の幼稚園の始まりは、文部科学省の「学制百年史」に、東京女子師範学校付属幼稚園の開設や幼稚園令の制定として記録されています。指針の改訂の歴史は、保育所保育指針解説の序章にあります。諸外国の思想家の考え方を説明した記載は、本稿で確認した公的資料(協議会の出題範囲と教授内容、学制百年史の幼稚園の創設と幼稚園令の制定の節、こども家庭庁の保育のページ)にはなく、扱っていません(2026-10-12 時点)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月14日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

