専任の宅地建物取引士を、宅建業法31条の3・施行規則15条の5の3・国土交通省の解釈・運用の考え方(令和8年4月1日施行版)で整理。何人必要か、「専任」の意味、兼務できる場合、アルバイト・副業・フリーランス(業務委託)との関係を、条文で確かめられます。
目次
結論:専任の宅地建物取引士とは、宅建業者が事務所等ごとに置かなければならない、成年者である宅建士です(宅建業法31条の3第1項)。事務所では、業務に従事する人の数に対して5分の1以上になる人数が必要です(施行規則15条の5の3)。「専任」の意味は、国土交通省の「解釈・運用の考え方」が、原則として、宅建業を営む事務所に常勤して(宅建業者の通常の勤務時間を勤務すること)、専ら当該事務所に係る宅建業の業務に従事する状態と示しています。「アルバイト」「副業」「業務委託」という語で可否を定めた規定は、条文にも解釈・運用にも示されておらず、見られるのは勤務の実態です。
この記事は、条文と国土交通省の解釈・運用の考え方で確かめられることだけを書きます。報酬や募集条件の話はしません。専任かどうかの個別の判断は、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事(免許権者)に確認してください。
専任の宅地建物取引士とは:設置義務の全体像
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 置く義務を負う人 | 宅建業者(宅建士個人ではない) | 宅建業法31条の3第1項 |
| 置く場所 | 事務所と、国土交通省令で定める場所(案内所など) | 同上・施行規則15条の5の2 |
| 人数 | 事務所は、業務に従事する者の数に対する割合が5分の1以上となる数。事務所以外の場所は1以上 | 施行規則15条の5の3 |
| 資格 | 成年者である宅建士 | 31条の3第1項 |
| 「専任」の意味 | 原則として、事務所に常勤し、専ら当該事務所に係る宅建業の業務に従事する状態 | 国土交通省 解釈・運用の考え方 |
| 人数が足りなくなったとき | 2週間以内に、必要な措置を執る | 31条の3第3項 |
31条の3第1項は、「宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所…ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない」と定めています(e-Gov 法令検索の2026-10-04時点の現行条文。宅地建物取引業法)。義務を負うのは宅建業者で、宅建士個人ではありません。宅建士の資格だけでは、専任の宅建士として置かれたことにはならず、宅建業者との関係(常勤など)が要件になります。
31条の3第2項は、宅建業者(法人の場合はその役員)が宅建士であるときは、その者が自ら主として業務に従事する事務所等では、その者を専任の宅建士とみなすと定めています。個人で宅建業を営む宅建士や、宅建士である役員は、この規定で自分の事務所の専任になります。
専任の宅建士の人数・令和7年度末:専任の宅建士239,933人、1業者あたりの平均1.8人(令和8年3月31日現在)。最終確認日:2026-10-04。出典:RETIO 令和7年度末 宅建業者と宅地建物取引士の統計(宅建業者の概要)。
登録者・証交付者・就業者・専任といった宅建士の人数の数え方の違いは、RETIOの統計概要(RETIO 統計概要のページ)で確かめられます。
何人置く必要があるか
事務所については、施行規則15条の5の3が、「当該事務所において宅地建物取引業者の業務に従事する者の数に対する」専任の宅建士の「割合が五分の一以上となる数」と定めています(宅地建物取引業法施行規則・2026-10-04時点の現行条文)。5分の1にならない端数が出たら、切り上げた人数が最低ラインです。当サイトで計算した例を示します。
| 事務所で業務に従事する人数 | 必要な専任の宅建士(最低) | 検算 |
|---|---|---|
| 4人 | 1人 | 1÷4=25%で、5分の1(20%)以上 |
| 10人 | 2人 | 2÷10=20%。1人では10%で足りない |
| 11人 | 3人 | 2人では2÷11=18.2%で足りず、3人で27.3% |
| 15人 | 3人 | 3÷15=20%。2人では13.3%で足りない |
事務所以外の「場所」は、1以上です。施行規則15条の5の2は、その場所を、契約を締結し、または契約の申込みを受けるもので、次の4つとしています。
- ①継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、事務所以外のもの
- ②10区画以上の一団の宅地、または10戸以上の一団の建物の分譲を、案内所を設置して行う場合のその案内所
- ③他の宅建業者が行う一団の宅地建物の分譲の代理・媒介を、案内所を設置して行う場合のその案内所
- ④展示会その他これに類する催しを実施する場合のその場所
「業務に従事する者」の範囲
5分の1の分母になる「業務に従事する者」の範囲は、国土交通省の解釈・運用の考え方(令和8年4月1日施行版・PDF)が、施行規則15条の5の3関係として示しています。宅建業のみを営む者の場合は、「原則として、代表者、役員(非常勤の役員を除く。)及びすべての従業員等が含まれ、受付、秘書、運転手等の業務に従事する者も対象となる」とされ、「宅地建物の取引に直接的な関係が乏しい業務に臨時的に従事する者」は含まれません。
案内所については、同じ物件を売主の宅建業者と媒介・代理の宅建業者が同じ場所で扱う場合は、いずれかの業者が専任の宅建士を1人以上置けば要件を満たすとされています。異なる物件を扱う不動産フェアなどでは、業者ごとに1人以上です。週末にだけ営業する別荘の現地案内所などにも、専任の宅建士を置くとされています。
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「専任」とは:常勤と専ら従事の意味
条文は、「専任」の意味を定めていません。施行規則と宅建業法の本文には、「常勤」という語もありません(e-Gov 法令検索の2026-10-04 時点の現行条文)。「専任」の意味は、国土交通省の「解釈・運用の考え方」の、31条の3第1項関係「『専任の宅地建物取引士』の専任性について」が示しています。
「『専任』とは、原則として、宅地建物取引業を営む事務所に常勤(宅地建物取引業者の通常の勤務時間を勤務することをいう。ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上で、宅地建物取引業者の事務所以外において通常の勤務時間を勤務する場合を含む。)して、専ら当該事務所に係る宅地建物取引業の業務に従事する状態をいう。」(国土交通省 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方、令和8年4月1日施行版)
この文から読み取れる要素は3つです。
- ①常勤:宅建業者の通常の勤務時間を勤務すること
- ②勤務の場所:事務所。ITの活用等により適切な業務ができる体制を確保した上で、事務所以外で通常の勤務時間を勤務する場合を含む
- ③専ら:当該事務所に係る宅建業の業務に従事する状態
国土交通省の解釈・運用の考え方は、法令ではなく、国が示す運用の考え方です。条文とは区別して、出典を確かめてください。
他の仕事との兼務はできるか
同じ解釈・運用の考え方が、兼務の場面を挙げています。当サイトで表にまとめました(原文は上のPDFの31条の3第1項関係3)。
| 場面 | 解釈・運用の考え方の扱い |
|---|---|
| 事務所が宅建業以外の業種を兼業していて、事務所で宅建業の業務が一時的に行われていない間に、他の業種の業務に従事する | 差し支えない |
| 宅建業の業務が一時的に行われていない間に、ITの活用等により、同じ宅建業者の他の事務所に係る宅建業の業務に従事する | 差し支えない。ただし、他の事務所の専任の宅建士を兼ねることができるわけではない |
| 事務所が建築士事務所・建設業の営業所等を兼ね、宅建士が建築士法・建設業法等で専任を要する業務に従事しようとする | 他の業種の業務量等を斟酌のうえ専任と認められるものを除き、専任の宅建士とは認められない |
| 個人の宅建業者が宅建士で、同じ場所で土地家屋調査士・行政書士等の業務もあわせて行おうとする | 同上 |
| 専任の宅建士が、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律12条1項の業務管理者を兼務し、その賃貸住宅管理業の業務に従事する | 差し支えない |
| 事務所が、解釈・運用の考え方の宅建業法34条の2関係の項目11に従って媒介業務以外の不動産取引に関連する業務を行う場合に、専任の宅建士がその業務に従事する | 差し支えない |
アルバイト・副業・パートとの関係
宅建業法本文、施行規則、国土交通省の解釈・運用の考え方(令和8年4月1日施行版)には、「アルバイト」「副業」「パート」「フリーランス」「業務委託」「雇用」という語がなく、定めがありません(2026-10-04 時点)。語が出てこないことは、認められるとも、認められないとも読めません。判断の基準になるのは、語ではなく、上の「専任」の文にある、常勤(通常の勤務時間を勤務すること)と、専ら当該事務所に係る宅建業の業務に従事する状態です。
当サイトの読み方として、通常の勤務時間にその事務所の宅建業の業務に専ら従事できない勤務のしかたは、専任とは認められにくいと考えられます。ただし、これは解釈・運用の考え方が個別の勤務形態に答えているものではありません。勤務時間外の副業の扱いも、この記事では断定しません。実際に専任として届け出る前に、免許権者に確認するのが確実です。
宅建士のフリーランス・業務委託は専任になれるか
「宅建士 フリーランス」「業務委託」という検索の多くは、専任の宅建士になれるかどうかを知りたい場合と考えられます。条文と解釈・運用の考え方で確かめられる範囲を、分けて書きます。
| 論点 | 確かめられること |
|---|---|
| 契約の名称(雇用か業務委託か) | 31条の3・施行規則15条の5の3・解釈・運用の考え方に、「雇用」「業務委託」の語は確認できない。「専任」の基準は常勤・通常の勤務時間・専らの実態 |
| 複数の業者の仕事を並行して請け負う | 解釈・運用の考え方が挙げている兼務の場面は、上の表のとおり。同じ宅建業者の他の事務所の業務は一時的に従事できる場合があるが、別の宅建業者の業務を並行して請け負う場面は挙がっていない |
| 専任ではなく、重要事項の説明などを担当する宅建士 | 35条は、宅建業者が「宅地建物取引士をして」説明をさせると定める。専任の宅建士の設置(31条の3)は別の義務 |
| フリーランスの宅建士が自分で宅建業を営む | 宅建業を営むには免許が要る(3条1項・12条1項)。自分が宅建士の個人業者で、自ら主として業務に従事する事務所は、31条の3第2項で、自分が専任の宅建士とみなされる |
つまり、フリーランスや業務委託という契約の形で、専任の宅建士になれるかどうかは、契約の名称で決まると書かれているのではなく、事務所に常勤し専ら当該事務所の宅建業の業務に従事する実態があるかが焦点になります。この実態を満たす形かどうかは、個別に免許権者へ確認が必要です。報酬や案件の話は、この記事では扱いません。
専任の宅建士が足りなくなったときと、守らないとき
31条の3第3項は、宅建業者は、1項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が抵触するに至ったときは、「二週間以内に」、規定に適合させるため必要な措置を執らなければならないと定めています。専任の宅建士が退職した場合などが、この「抵触するに至った」場合にあたります。
| 場面 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 免許の基準 | 5条1項15号 | 「事務所について第三十一条の三に規定する要件を欠く者」は、免許を受けられない |
| 2週間以内に措置を執らない | 82条2号 | 31条の3第3項に違反した者は、100万円以下の罰金 |
| 業者への処分 | 65条2項2号 | 免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事は、1年以内の期間を定めて、業務の全部または一部の停止を命ずることができる |
宅建業法31条の3第3項に違反した場合の罰則:100万円以下の罰金(82条2号)。最終確認日:2026-10-04。出典:e-Gov 法令検索 宅地建物取引業法 82条2号。
罰則の対象になるのは、31条の3第3項の義務を負う宅建業者です。専任として置かれていた宅建士個人への罰則ではありません。
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名義貸しとの関係
専任の宅建士を置く義務があるため、実際には専任として働いていないのに名前だけを借りる、という問題が出ます。宅建業法68条1項1号は、宅建士が、宅建業者に、自分が専任の宅建士として従事している事務所以外の事務所の専任の宅建士である旨の表示をすることを許し、その業者が表示したときは、都道府県知事が宅建士に必要な指示をすることができるとしています。指示に従わない場合などには、1年以内の期間を定めて、宅建士としてすべき事務を行うことを禁止されることがあります(68条2項)。
宅建業者が自己の名義で他人に宅建業を営ませることを禁じる13条などとあわせて、宅建の名義貸しで、条文と処分を整理しています。
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宅建士ができる仕事との違い
専任の宅建士は、事務所等に置く人数の話です。重要事項の説明や、35条・37条の書面への記名を宅建士に行わせる義務は、別の条文にあります。専任であることと、独占業務を行うことは別で、宅建士の独占業務は宅建の独占業務で整理しています。免許の制度は宅建業の免許で確認できます。
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まとめ
- 専任の宅地建物取引士は、宅建業者が事務所等ごとに置く、成年者である宅建士(宅建業法31条の3第1項)。置く義務を負うのは宅建業者
- 人数は、事務所は業務に従事する者の数に対して5分の1以上、事務所以外の場所は1以上(施行規則15条の5の3)
- 「専任」は、国土交通省の解釈・運用の考え方が、原則として事務所に常勤し、専ら当該事務所に係る宅建業の業務に従事する状態と示している
- 「アルバイト」「副業」「業務委託」という語で可否を定めた規定は、条文にも解釈・運用にも確認できない。見られるのは勤務の実態で、個別の判断は免許権者に確認する
- 人数が足りなくなったら2週間以内に措置を執る(31条の3第3項)。違反は100万円以下の罰金(82条2号)
よくある質問
Qアルバイトやパートでも、専任の宅建士になれますか?
宅建業法31条の3、施行規則15条の5の3、国土交通省の「解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)のいずれにも、「アルバイト」「パート」という語で可否を定めた箇所はありません。基準として示されているのは、原則として、事務所に常勤し(通常の勤務時間を勤務し)、専ら当該事務所に係る宅建業の業務に従事する状態です。個別の勤務形態で認められるかは、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に確認してください。
Q専任の宅建士が、ほかの会社の仕事をしてもよいですか?
解釈・運用の考え方は、宅建業の業務が一時的に行われていない間に他の業種の業務に従事することを、事務所が他の業種を兼業している場合などについて認めています。一方、建築士事務所・建設業の営業所を兼ねる場合や、個人業者が行政書士等の業務も同じ場所で行う場合は、他の業種の業務量等を斟酌して専任と認められるものを除き、専任とは認められないとされています。
Q1人の宅建士が、2つの事務所の専任を兼ねられますか?
兼ねられません。解釈・運用の考え方は、同じ宅建業者の他の事務所の業務に一時的に従事することは差し支えないとしつつ、他の事務所における専任の宅建士を兼ねることができるわけではないと注意しています。専任として従事している事務所以外の事務所の専任である旨の表示を許すと、宅建士は都道府県知事から指示を受けることがあります(宅建業法68条1項1号)。
Q専任の宅建士が退職して、人数が足りなくなったらどうなりますか?
宅建業者は、規定に抵触するに至ったときは、2週間以内に、規定に適合させるため必要な措置を執らなければなりません(宅建業法31条の3第3項)。この規定に違反した者は100万円以下の罰金に処せられ(82条2号)、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事は、1年以内の期間を定めて業務の停止を命ずることができます(65条2項2号)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

