危険物乙4の物理化学の計算を、合格ナビの問題データ(物理化学100問・2026-10-29集計)で数えた5つの型に分けます。熱量Q=m×c×Δt、蒸気比重=分子量÷29、質量パーセント濃度、気体の体積、反応式の係数の解き方を、2通りの検算つきで説明します。
目次
結論:合格ナビの物理化学100問のうち、計算が要る問題は14問で、熱量・比重・濃度・気体の体積・反応式の係数の5つの型に分かれます。どれも式に1回入れれば答えが出て、逆算で検算できます。試験会場では電卓が使えないので、筆算で練習します。
物理化学の計算は何が出るか:5つの型と問題数
計算の型で一番多いのは熱量の6問で、比重・蒸気比重と濃度が3問ずつ、気体の体積と反応式の係数が1問ずつです。
| 計算の型 | 問題数 | 使う式 |
|---|---|---|
| 熱量・比熱 | 6問 | Q=m×c×Δt |
| 比重・蒸気比重 | 3問 | 質量=液比重×体積、蒸気比重=分子量÷29 |
| 質量パーセント濃度 | 3問 | 溶けている物÷溶液全体×100 |
| 気体の体積 | 1問 | 体積は絶対温度に比例する |
| 化学反応式の係数 | 1問 | 両辺の原子の数をそろえる |
出典:合格ナビの問題データ(危険物乙4「物理化学」100問のうち、設問と選択肢に数値があり、計算して選ぶ問題。集計日 2026-10-29)。
分類ごとに見ると、計算が要る問題は次のとおりです。これは合格ナビの問題の数で、本試験で出る数ではありません。
| 分類 | 問題数 | うち計算が要る問題 |
|---|---|---|
| 熱量・比熱・熱膨張・熱移動 | 15問 | 6問 |
| 酸・塩基・有機/無機 | 15問 | 3問(濃度) |
| 物質の三態・状態変化 | 13問 | 1問(気体の体積) |
| 酸化還元・酸化熱(自然発火を含む) | 10問 | 0問 |
| 燃焼の三要素・燃焼形態 | 9問 | 0問 |
| 静電気 | 8問 | 0問 |
| 密度・比重 | 8問 | 3問 |
| 化学反応式・物質量 | 7問 | 1問(係数) |
| 引火点・発火点・燃焼点 | 7問 | 0問 |
| 燃焼範囲(爆発限界) | 5問 | 0問 |
| その他(引火点・発火点・燃焼範囲の総合、消火の理論、金属の性質・イオン化傾向) | 3問 | 0問 |
出典:合格ナビの問題データ(危険物乙4「物理化学」100問・集計日 2026-10-29)。
100問のうち86問は、計算のない問題です。計算の14問は式が決まっていて、覚える量が少ない問題です。
試験の決まり:乙種の試験科目「基礎的な物理学及び基礎的な化学」は10問で、試験科目ごとの成績がそれぞれ60%以上で合格です(試験科目の免除を受けた人は、その科目を除きます)。試験会場では、定規類・電卓・スマートフォン・携帯電話・スマートウォッチその他の機器を使えません。最終確認日:2026-10-29。出典:消防試験研究センター 試験科目及び問題数、試験の方法、注意事項。
熱量・比熱:Q=m×c×Δt に1回入れる
熱量は、質量×比熱×温度の変化で求めます。比熱は、1gや1kgを1K上げるのに要る熱量で、問題文に書いてあります。
- Q(熱量)=m(質量)×c(比熱)×Δt(温度の変化)
- 比熱の単位が J/(g·K) なら質量は g、kJ/(kg·K) なら kg で入れる
- 温度の差は、℃で引いても K で引いても同じ数になる
比熱は、温まりにくさの目盛りのようなものです。同じ質量に同じ熱を加えると、比熱が2倍の液体は、温度が半分しか上がりません。
例(合格ナビの例題):比熱 2.5 kJ/(kg·K) の液体 4.0 kg を、10℃から30℃まで温める熱量は?
- Δt=30−10=20
- Q=4.0×2.5×20=200 kJ
- 検算①(逆算):200÷(4.0×2.5)=20 で、温度の差と合う
- 検算②(順を変える):1kgあたり 2.5×20=50 kJ、4.0kgで 50×4.0=200 kJ
g と kg を混ぜると、答えが1,000倍ずれます。式に入れる前に、単位を先にそろえます。
- 比熱2.0の液体200gを20℃から60℃に温める熱量(問41)
- 比熱2.0の液体200gを20℃から50℃に温める熱量(問65)
- 比熱2.0 kJ/(kg·K)の液体3.0kgを温める熱量(問76)
- 比熱2.5 kJ/(kg·K)の液体2.0kgを30℃から80℃に温める熱量(問80)
気体の体積と液体の膨張:絶対温度で比べる
圧力が一定なら、気体の体積は絶対温度に比例します(シャルルの法則)。絶対温度は、℃に273を足した温度(K)です。
例(合格ナビの例題):27℃で3.0Lの気体を、圧力を変えずに127℃まで温めると、体積は?
- 27℃=300K、127℃=400K
- 体積=3.0×400÷300=4.0 L
- 検算①(比):4.0÷3.0 と 400÷300 は、どちらも約1.33で同じ
- 検算②(増える分):300Kから100K上がるので、もとの3分の1だけ増える。3.0+1.0=4.0
℃のまま 3.0×127÷27 と計算すると、約14Lになって誤りの答えになります。比べるのは必ず K です。
液体も、一般に温度が上がると体積が増え、密度は小さくなります。容器いっぱいに入れると、膨らむ分の逃げ場がありません。合格ナビの問題データに、液体の膨張の量を計算する問題はありません。
比重・蒸気比重・濃度:割り算かかけ算を1回する
液比重は水と比べた重さ、蒸気比重は空気と比べた重さです。蒸気比重は、分子量を空気の平均分子量29で割って概算します。
液比重から質量を出す
問題文に「水1Lを1kgとする」とあれば、質量は液比重×体積です。
- 例(合格ナビの例題):液比重0.75の液体400Lは、0.75×400=300 kg
- 検算①(逆算):300÷400=0.75
- 検算②(分数):0.75は4分の3なので、400Lの4分の3で300
蒸気比重=分子量÷29
| 物質 | 分子式 | 分子量 | 蒸気比重(分子量÷29) |
|---|---|---|---|
| メタノール | CH4O | 32.04 | 約1.1 |
| エタノール | C2H6O | 46.069 | 約1.6 |
| アセトン | C3H6O | 58.08 | 約2.0 |
| ジエチルエーテル | C4H10O | 74.12 | 約2.6 |
| 二硫化炭素 | CS2 | 76.14 | 約2.6 |
| ベンゼン | C6H6 | 78.11 | 約2.7 |
| トルエン | C7H8 | 92.14 | 約3.2 |
出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト(分子式・分子量。2026-10-29 確認)。メタノール・エタノール・アセトン・ジエチルエーテル・二硫化炭素・ベンゼン・トルエン。蒸気比重の列は、分子量を29で割って小数第1位にした値です。
表の7つは、どれも1より大きく、蒸気は空気より重くなります。同じページの蒸気密度の値(例:トルエン3.1)は、測り方の違いで、分子量÷29と少しずれます。
質量パーセント濃度
濃度(%)は、溶けている物の質量÷溶液全体の質量×100です。分母は水だけでなく、溶けている物を足した全体です。
- 例(合格ナビの例題):水150gに砂糖50gを溶かすと、50÷(150+50)×100=25%
- 検算①(逆算):200gの25%は 200×0.25=50g
- 検算②(誤りの形):水だけの150gで割ると約33%になり、分母の取り違えだと分かる
- 液比重0.80の液体500Lの質量(問39)
- メタノールと二硫化炭素の蒸気比重(問52)
- エタノールの蒸気比重(問97)
- 水180gに20gを溶かした濃度(問43)
- 20%の水溶液300gに要る溶質(問32)
化学反応式の係数と物質量:原子の数をそろえる
反応式の係数は、左と右で原子の数がそろうように決めます。炭素と水素を含む物質の完全燃焼は、次の順で決めます。
- ①左に燃える物質と酸素(O2)、右に二酸化炭素(CO2)と水(H2O)を書く
- ②炭素の数で、CO2の係数を決める
- ③水素の数で、H2Oの係数を決める
- ④最後に酸素の数で、O2の係数を決める(物質自身が持つ酸素を引く)
- ⑤両辺の原子の数と、質量が等しいかを確かめる
例1:エタノール(C2H5OH)の完全燃焼
- 炭素2個 → CO2が2個、水素6個 → H2Oが3個
- 右の酸素原子は 2×2+3=7個。エタノールが1個持つので、O2から6個、つまりO2は3個
- C2H5OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2O
- 確認(原子):炭素2・水素6・酸素7 = 炭素2・水素6・酸素7
- 確認(質量):46+3×32=142、2×44+3×18=142(C=12、H=1、O=16)
例2:プロパン(C3H8)の完全燃焼
- 炭素3個 → CO2が3個、水素8個 → H2Oが4個
- 右の酸素原子は 3×2+4=10個 → O2は5個
- C3H8 + 5O2 → 3CO2 + 4H2O
- 確認(原子):炭素3・水素8・酸素10 = 炭素3・水素8・酸素10
- 確認(質量):44+5×32=204、3×44+4×18=204
例3:メタノール(CH3OH)の完全燃焼(分数が出る場合)
- 1分子あたり CO2が1個、H2Oが2個。右の酸素原子は 2+2=4個で、O2から3個=O2が1.5個
- 全体を2倍して整数にする:2CH3OH + 3O2 → 2CO2 + 4H2O
- 確認(原子):炭素2・水素8・酸素8 = 炭素2・水素8・酸素8
- 確認(質量):2×32+3×32=160、2×44+4×18=160
問題文に「係数は最小の整数比とする」とあれば、この2倍にする操作が要ります。
不完全燃焼と一酸化炭素
酸素が足りないと、炭素は二酸化炭素ではなく一酸化炭素(CO)になります。
- エタノールの不完全燃焼の例:C2H5OH + 2O2 → 2CO + 3H2O(酸素は左5個・右2+3=5個)
- 一酸化炭素は、燃えるとさらに二酸化炭素になる:2CO + O2 → 2CO2
職場のあんぜんサイトは、一酸化炭素を可燃性/引火性ガス(区分1)、急性毒性(吸入:ガス)区分3と分類しています(一酸化炭素。2026-10-29 確認)。左右の酸素の数が合わない式は、誤りの選択肢になる形です。
物質量(mol)と質量
- 1 mol の質量(g)=分子量(エタノール46 g、O2 32 g、CO2 44 g、H2O 18 g)
- 反応式の係数は、物質量(mol)の比を表す
例:エタノール23 gが完全燃焼するとき、要る酸素は何gか
- エタノールの物質量:23÷46=0.5 mol
- 反応式(C2H5OH + 3O2 → 2CO2 + 3H2O)より、酸素は 0.5×3=1.5 mol
- 酸素の質量:1.5×32=48 g
- 確認(質量保存):CO2は 0.5×2×44=44 g、H2Oは 0.5×3×18=27 g。反応前 23+48=71 g、反応後 44+27=71 g
練習(合格ナビの例題):プロパン2.2 gが完全燃焼するとき、要る酸素は何gか
- 答え:8 g(2.2÷44=0.05 mol、O2は0.05×5=0.25 mol、0.25×32=8 g)
- 確認:CO2は0.05×3×44=6.6 g、H2Oは0.05×4×18=3.6 g。反応前 2.2+8=10.2 g、反応後 6.6+3.6=10.2 g
| 迷いやすい点 | 覚え方 |
|---|---|
| 係数と添字 | 2CO2 は「CO2が2個」。添字(小さい数字)は変えず、係数だけで調整する |
| 完全燃焼の生成物 | 二酸化炭素と水 |
| 不完全燃焼 | 一酸化炭素(有毒・可燃性)が出ることがある |
| 係数の指示 | 「最小の整数比」なら、分数が出たら全体を整数倍する |
計算でない基本で落とせない所:引火点・燃焼範囲・静電気
計算のない86問は、引火点・燃焼範囲・静電気などの定義を問う問題です。この記事では扱わず、定義と覚え方は引火点とは?にまとめています。物質ごとの性質は第4類危険物の性質一覧表、3科目の進め方は危険物乙4の勉強法にあります。計算と同じ回に、次の3問で定義も確かめておきましょう。
計算は5つの型を先に固め、迷う問題は後回しにしよう
物理化学の計算は、熱量・比重・濃度・気体の体積・反応式の係数の5つの型です。式に1回入れれば答えが出るので、まずこの5つを筆算で解けるようにしましょう。
見慣れない問題で手が止まったら、印を付けて後回しにし、知識の問題を先に解きます。最後に、10問中6問に届くかを問題で確かめましょう。
よくある質問
Q計算問題の数字は、筆算で解ける大きさですか?
合格ナビの計算の14問は、どれもかけ算か割り算を1〜2回すれば答えが出ます。たとえば熱量は2.0×200×40=16,000 J、濃度は20÷200×100=10%、蒸気比重は46÷29で約1.6です(2026-10-29集計)。0の数と小数点の位置を、選択肢と見比べて確かめます。
Q比熱や分子量の数値は、覚えておく必要がありますか?
合格ナビの問題データでは、熱量の問題6問のすべてで比熱が問題文に書いてあり、蒸気比重の計算の問題2問でも分子量が書いてあります(2026-10-29集計)。覚えるのは数値ではなく、Q=m×c×Δt・分子量÷29などの式と、単位のそろえ方です。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月29日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。
