労働基準法を、14の章(第六章の二を含む)の地図と主な条文の数字で整理します。基本原則・契約期間・解雇・賃金・労働時間・年休を、e-Gov法令検索の現行条文で確かめ、社労士試験の問題数と合格ナビの問題も紹介します。
目次
結論:労働基準法は、労働条件の「最低基準」を定める法律です(第1条第2項)。基準に達しない労働契約の部分は無効で、法律の基準が代わりに適用されます(第13条)。全体は第一章から第十三章まで(第六章の二を含めて14の章)です。
労働基準法をわかりやすく:労働条件の「最低基準」を決める法律
労働基準法は、労働条件の「最低基準」を定める法律で、全体は14の章でできています。会社で働く人の労働時間、賃金、解雇などの最低限のルールを決めています。
この記事は、全体の地図を先に描き、そのうえで主な条文の数字を条文どおりに並べます。細かい論点は、各論の記事に任せます。条文は、e-Gov法令検索の現行条文(2026-10-28時点・2026-07-17施行の版)にもとづきます。
最低基準は、これより下に下げてはいけない「床」を決める決まりのようなものです。最初に押さえる決まりと定義は、次のとおりです。
- 最低基準:この法律の基準は最低のもので、これを理由に労働条件を下げてはならず、向上に努めます(第1条第2項)。基準未満の契約部分は無効になり、法律の基準が適用されます(第13条)。
- 対等な決定:労働条件は、労働者と使用者が対等の立場で決定すべきものです(第2条第1項)。
- 労働者:職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者(第9条)。
- 使用者:事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者(第10条)。
- 平均賃金:算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額(第12条第1項)。ただし書で、日給・時給・出来高払の場合などは、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60を下回ってはならないとされています。解雇予告手当や休業手当の金額を決める基準になります。
条文の版と今後の改正:e-Gov法令検索で見られる労働基準法の現行の版は、2026-07-17施行です。2027-04-01施行の版との差は、第115条(時効)と附則に関する部分で、この記事の表に書いた条文には及びません(2026-10-28にe-Govの版どうしを比べた結果)。最終確認日:2026-10-28。出典:e-Gov法令検索 労働基準法。
参考:e-Gov法令検索『労働基準法』(2026-10-28時点)
章立ての地図(第一章〜第十三章、第六章の二を含めて14の章)
労働基準法は、第一章から第十三章までと、第六章の二を合わせた14の章に分かれています。
試験でも仕事でも使う中心は、第二章(労働契約)・第三章(賃金)・第四章(労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇)・第九章(就業規則)です。
各章の条の範囲は、e-Govの現行条文の章立てから整理したものです。
| 章 | 題 | 条の範囲 | 中身(要約) | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|---|
| 第一章 | 総則 | 第1条〜第12条 | 最低基準、均等待遇、強制労働の禁止、定義(労働者・使用者・平均賃金) | 目的条文の比較 |
| 第二章 | 労働契約 | 第13条〜第23条 | 労働条件の明示、解雇の予告、解雇制限 | |
| 第三章 | 賃金 | 第24条〜第31条(第29条〜第31条は削除) | 賃金の支払、休業手当 | |
| 第四章 | 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇 | 第32条〜第41条の2 | 労働時間、休憩、休日、時間外・休日労働、割増賃金、年次有給休暇 | 36協定・変形労働時間制・フレックスタイム制・裁量労働制・管理監督者と割増賃金・年次有給休暇 |
| 第五章 | 安全及び衛生 | 第42条〜第55条(第43条〜第55条は削除) | 労働安全衛生法に委ねる | |
| 第六章 | 年少者 | 第56条〜第64条 | 最低年齢など | |
| 第六章の二 | 妊産婦等 | 第64条の2〜第68条 | 坑内業務の就業制限など | |
| 第七章 | 技能者の養成 | 第69条〜第74条 | 徒弟の弊害排除、職業訓練に関する特例など(第74条は削除) | |
| 第八章 | 災害補償 | 第75条〜第88条 | 療養補償などの使用者の補償 | |
| 第九章 | 就業規則 | 第89条〜第93条 | 作成及び届出の義務など | |
| 第十章 | 寄宿舎 | 第94条〜第96条の3 | 寄宿舎の規則など | |
| 第十一章 | 監督機関 | 第97条〜第105条 | 労働基準監督官など | |
| 第十二章 | 雑則 | 第105条の2〜第116条 | 周知義務、労働者名簿、賃金台帳など | |
| 第十三章 | 罰則 | 第117条〜第121条 | 罰則 |
第六章の二の始まりは第64条の2、第十二章の始まりは第105条の2、第十三章の始まりは第117条です。各章の終わりは、次の章の始まりの直前の条として数えています。
主な条文の数字を、条件つきで並べる
条文には条件やただし書がつくものが多いので、数字だけを切り出さず、条件と一緒に覚えます。ここでは、原則を書きます。例外は、各論の記事で扱います。
| 条 | 内容 | 数字・条件 |
|---|---|---|
| 第3条〜第7条 | 基本原則 | 第3条は国籍、信条又は社会的身分を理由とする差別的取扱いの禁止、第4条は女性であることを理由とする賃金の差別的取扱いの禁止(男女同一賃金)、第5条は暴行・脅迫・監禁などによる労働の強制の禁止、第6条は業として他人の就業に介入して利益を得ることの禁止(中間搾取の排除。法律に基づいて許される場合を除く)、第7条は労働時間中の公民権の行使に必要な時間の請求を拒まないこと(権利の行使に妨げがない限り、請求された時刻を変更できる) |
| 第14条第1項 | 契約期間の上限 | 期間の定めのない契約と、一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、3年を超える期間を定めて契約してはならない。専門的知識等で高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する労働者(その業務に就く者に限る)と、満60歳以上の労働者との契約は5年。附則第137条に、1年を超える有期契約の労働者の退職についての特例がある |
| 第15条第1項 | 労働条件の明示 | 労働契約の締結に際し、賃金、労働時間その他の労働条件を明示する。賃金及び労働時間に関する事項などは、厚生労働省令で定める方法で明示する |
| 第19条第1項 | 解雇制限 | 業務上の負傷・疾病の療養のために休業する期間とその後30日間、産前産後の女性が第65条によって休業する期間とその後30日間は、解雇してはならない。ただし書で、第81条の打切補償を支払う場合、又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合は、この限りでない(後者は行政官庁の認定を受ける。第19条第2項) |
| 第20条第1項 | 解雇の予告 | 少なくとも30日前に予告する。予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払う。ただし書で、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は、この限りでない(この場合は行政官庁の認定を受ける。第20条第3項・第19条第2項) |
| 第24条第1項・第2項 | 賃金の支払 | 通貨で、直接労働者に、その全額を支払う。毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う。それぞれにただし書の例外がある |
| 第26条 | 休業手当 | 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に、平均賃金の100分の60以上の手当を支払う |
| 第32条第1項・第2項 | 労働時間 | 休憩時間を除き、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならない |
| 第34条第1項 | 休憩 | 労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間を、労働時間の途中に与える |
| 第35条 | 休日 | 毎週少なくとも1回。4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者は、この限りでない(第2項) |
| 第36条第1項 | 時間外・休日の労働 | 労使協定(書面)を締結し、行政官庁に届け出た場合に、その協定で定めるところによって時間外労働・休日労働ができる |
| 第37条第1項 | 割増賃金 | 時間外・休日の労働には、2割5分以上5割以下の範囲内で政令で定める率以上の割増賃金。ただし書で、延長して労働させた時間(時間外労働)が1か月60時間を超えた部分は5割以上 |
| 第37条第4項 | 深夜の割増賃金 | 午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要と認める地域・期間は午後11時から午前6時まで)の間に労働させた場合は、その時間の労働について、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率の割増賃金を支払う |
| 第39条第1項 | 年次有給休暇 | 雇入れの日から6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に、10労働日の有給休暇を与える |
| 第39条第7項 | 年5日の時季指定 | 有給休暇の日数が10労働日以上の労働者について、そのうち5日を、基準日(継続勤務期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間の初日)から1年以内の期間に、労働者ごとに時季を定めて与える(有給休暇を基準日より前の日から与えたときは、厚生労働省令で定めるところによる。ただし書)。労働者の請求(第5項)や労使協定による計画的付与(第6項)で与えた日数(5日を超えるときは5日)分は、時季を定めることを要しない(第8項) |
| 第89条第1項 | 就業規則の作成・届出 | 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出る |
条文の数字:上の表の数字(3年、5年、満60歳、30日、30日間、100分の60、40時間、8時間、45分、1時間、60時間、午後10時から午前5時、2割5分、6箇月、8割、10労働日、5日、10人)は、2026-10-28時点の現行条文です。第3条〜第7条、第14条、第19条、第37条、第39条は、2026-04-01時点・2027-04-01時点の版と同じ内容です(2026-10-28にe-Govの版どうしを比べた結果)。最終確認日:2026-10-28。出典:e-Gov法令検索 労働基準法。
この表の読み方には、3つの注意があります。
- 附則(本文の後ろに付く決まり)に「当分の間」の特例がある条文があります。例えば第36条は、一部の事業・業務について、当分の間、附則で読み替えて適用されます(「当分の間」の語は、労働基準法の条文全体で7か所に出てきます。2026-10-28時点)。数字を覚えるときは、本則(本文)の原則か、特例の適用かを分けます。
- 「協定」と「決議」は別です。労使協定は、第36条のように労働組合または過半数代表者との書面による協定のことです。第38条の4の労使委員会の決議が、協定の代わりになる場合は、同条で読み替えが定められています。
- 過半数代表者などの手続は、各条の本文を読みます。この表では省いています。
参考:e-Gov法令検索『労働基準法』(2026-10-28時点)
社労士試験での労働基準法
社労士試験では、労働基準法は労働安全衛生法と合わせて1科目で、その科目で択一式は10問(10点)、選択式は1問(5点)です。
社会保険労務士試験オフィシャルサイトの試験科目の表から、問題数と配点を書き出します。
社労士試験の科目と配点:「労働基準法及び労働安全衛生法」は、選択式が1問(5点)、択一式が10問(10点)です。選択式は計8科目・8問(40点)、択一式は計7科目・70問(70点)です。最終確認日:2026-10-28。出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト 試験の概要。
| 試験の形式 | 全体の問題数 | 労働基準法及び労働安全衛生法 |
|---|---|---|
| 選択式 | 8問(40点) | 1問(5点) |
| 択一式 | 70問(70点) | 10問(10点) |

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「試験の概要」(2026-10-28確認)
労働基準法は、労働安全衛生法と1つの科目にまとめて出題されます。この表は、労働基準法だけの問題数を示してはいません。
科目ごとに合格基準点が定められ、基準点に達しない科目があると不合格になります(同ページ「合格基準」)。基準点そのものは、合格発表日に公表されます。
労働基準法の中で、どの章をどれだけ勉強するかは、章の地図の上で決めます。合格ナビの問題データ(労働基準法の論点別問題・32問・2026-10-28時点)には、割増賃金、36協定、年次有給休暇、解雇予告、賃金支払、就業規則、平均賃金、監督機関などの論点がそろっています。
参考:社会保険労務士試験オフィシャルサイト『試験の概要』(2026-10-28確認)
勉強の進め方:まず地図、次に数字の多い章から
勉強は、まず章の地図で全体を確かめ、次に数字の多い章から固めます。
1. 章立ての地図(第六章の二を含めて14の章)で、章の名前と条の範囲を確認します。
2. 第四章(第32条〜第41条の2)と第三章・第二章を先に固めます。数字が多く、各論の記事(36協定・変形労働時間制・年休など)が用意されているのもこの部分です。
3. 就業規則(第九章)、監督機関(第十一章)、雑則(第十二章)は、条文の数が少ないので、章ごとに通して読めます。
4. 各章の条文を読んだら、すぐに問題を解きます。問題は条文を読んだ直後に解くと、条件の読み落としに気づけます。
5. 暗記する数字は、社労士の暗記一覧に条文番号つきでまとめています。
独学で全体の計画を立てる場合は、社労士の独学ロードマップも参考にしてください。
間違えやすい点
つまずきやすいのは、次の6つです。
- 労働基準法は最低基準なので、就業規則や労働契約で基準を上回る条件を定めることはできますが、下回る部分は無効です(第13条)。
- 「使用者」は事業主だけではありません(第10条)。
- 平均賃金の最低保障(100分の60)は、第12条第1項のただし書の話で、休業手当の「100分の60以上」(第26条)とは別の規定です。
- 休憩は「労働時間の途中に」与えます。6時間ちょうどの場合は、「6時間を超える場合」に当たりません(第34条第1項)。
- 安全衛生の具体的な内容は、労働基準法ではなく労働安全衛生法にあります(第42条)。
- 条文の数字を、本則の原則と、附則の「当分の間」の特例とで取り違えないようにします。
労働基準法は、「最低基準」と14章の地図を持って条文を読もう
労働基準法は、労働条件の最低基準を定める法律で、基準未満の契約部分は無効です(第1条第2項・第13条)。14の章の地図で全体を確かめ、数字は条件・ただし書・附則の「当分の間」の特例とセットで覚えましょう。
社労士試験では労働安全衛生法と同じ科目で、択一式10問・選択式1問なので、条文を読んだらすぐ問題で確かめてください。
どこから解くか迷ったら、合格戦略診断(6問・登録不要)で、いまの弱点と優先する科目がわかります。
なお、社労士の講座を比べて選びたい場合は、社労士講座の比較ページで整理しています。
よくある質問
Q労働基準法に違反すると、どんな罰則がありますか?
罰則は第十三章(第117条〜第121条)にあります。第5条(強制労働の禁止)の違反は、1年以上10年以下の拘禁刑又は20万円以上300万円以下の罰金です(第117条)。第6条(中間搾取の排除)などの違反は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(第118条)。第3条・第4条・第7条・第19条・第20条・第32条・第34条・第35条・第37条などの違反は、6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です(第119条)。第14条・第15条第1項・第24条・第26条・第89条や、第39条第7項(年5日の時季指定)の違反は、30万円以下の罰金です(第120条)。違反をしたのが従業者のときは、事業主にも罰金刑が科されます。ただし、事業主が違反の防止に必要な措置をした場合は別です(第121条第1項)。条文は、e-Gov法令検索の労働基準法で確かめられます(確認日:2026-10-28)。
Q労働基準法と労働契約法は、何が違いますか?
労働基準法は、労働条件の最低基準を定め、基準に達しない契約の部分を無効にする法律で、罰則もあります(第1条第2項・第13条・第117条〜)。労働契約法は、労働契約が労使の合意で成立し、変更されるという合意の原則を中心に定める法律です(第1条・第3条第1項)。例えば、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利の濫用として無効です(労働契約法第16条)。同じ使用者との有期契約の通算期間が5年を超える労働者が、契約期間の満了日までに無期契約の締結を申し込むと、使用者は承諾したものとみなされます(同法第18条第1項)。労働契約法の条文には、罰金や拘禁刑の定めがありません。また、国家公務員と地方公務員には適用されません(同法第21条第1項)。条文は、e-Gov法令検索の労働契約法で確かめられます(確認日:2026-10-28)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月28日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

