「電験三種はやめとけ」「人生変わる」を、公的な一次資料だけで確かめました。直近3回の合格率と科目合格、電気事業法43条の主任技術者の選任義務、経済産業省の資料にある人材の需給見通し(2023年の推計と2026年2月の資料)、第三種で保安監督できる範囲を、出典つきでまとめています。
目次
結論:「電験三種はやめとけ」と言われる理由は、試験の難しさや仕事の責任の重さなどさまざまです。公的な資料で確かめられる事実は、①4科目の合格率は直近5回で12.9〜21.2%だが、科目合格(最大で連続5回の免除)で分けて取れる、②電気事業法43条で、事業用電気工作物を設置する者には電気主任技術者の選任が義務づけられている、③経済産業省の令和5年の資料では、新たな対策を講じない場合、2030年度に第三種電気主任技術者が約800人不足する可能性が示された。その後の令和8年2月の同省の資料では、電気保安協会の調査で2030年度(令和12年度)までに保安業務従事者の不足は生じない見込みとする一方、人口減少などで需給ギャップが拡大するおそれも挙げている、の3つです。「仕事がきつい」「心が折れる」と言われる点は、後半の2つの節で、条文と結果発表の数字から確かめています。人生が変わるかどうかは働き方によるため、この記事では公的な一次データがない年収は扱いません。
| 気になる点 | 公的な資料でわかること | 出典 |
|---|---|---|
| 試験は難しい? | 4科目合格率は12.9〜21.2%(直近5回)。毎回27.6〜35.7%の人が一部の科目に合格 | 電気技術者試験センターのプレス発表 |
| 誰でも受けられる? | 受験資格はない(年齢・国籍を問わない) | センターのよくある質問 |
| 資格が必要とされる根拠は? | 事業用電気工作物の設置者に主任技術者の選任義務(電気事業法43条1項) | 電気事業法 |
| 仕事はきつい? | 条文で確かめられるのは、保安の監督の職務・保安規程・事故報告(24時間以内に速報)の義務。勤務時間や夜間の呼び出しを定めた記述は、下記の条文と資料にない | 電気事業法・電気関係報告規則・経済産業省の資料 |
| 第三種で何ができる? | 電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)の保安の監督 | センターの資格概要 |
| 将来の人材は? | 2023年の推計では、新たな対策を講じない場合、2030年度に第三種(外部委託)が約800人不足する可能性。2026年2月の資料では、電気保安協会の調査で2030年度までに保安業務従事者の不足は生じない見込み | 経済産業省 令和5年3月31日・令和8年2月19日の資料 |
| 更新は必要? | 更新制度はなく、一度取得すれば原則有効 | センターの資格概要 |
合格ナビは、電気技術者試験センターが公表した電験三種の本試験問題を7回分(令和4年度上期〜令和7年度下期のうち、令和6年度下期を除く)352問収録しています。そのうち法規は89問で、電気事業法43条の主任技術者の選任そのものを問う問題(令和5年度上期)も含まれます(2026-10-02 集計)。
試験の難しさ:4科目合格率と科目合格
電験三種(第三種電気主任技術者試験)は、理論・電力・機械・法規の4科目を科目ごとに合否判定します。4科目すべてに合格した人の割合(4科目合格率)は、直近5回で次のとおりです。
| 試験 | 受験者 | 4科目合格者 | 4科目合格率 | 科目合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 令和5年度 下期 | 24,567人 | 5,211人 | 21.2% | 35.7% |
| 令和6年度 上期 | 25,416人 | 4,064人 | 16.0% | 31.1% |
| 令和6年度 下期 | 24,547人 | 4,117人 | 16.8% | 31.1% |
| 令和7年度 上期 | 24,766人 | 3,201人 | 12.9% | 27.7% |
| 令和7年度 下期 | 24,176人 | 3,164人 | 13.1% | 27.6% |
出典:電気技術者試験センターのプレス発表 令和5年度下期・令和6年度上期・令和6年度下期・令和7年度上期・令和7年度下期。科目合格率は、4科目合格者を除いた科目合格者数を受験者数で割った値です。
電験三種の合格率:令和7年度下期の4科目合格率は13.1%(受験者24,176人・合格者3,164人)、科目合格率は27.6%。最終確認日:2026-10-02。出典:電気技術者試験センター 令和7年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について。
1回で4科目そろえられる人は受験者の5〜8人に1人ですが、合格した科目は最初に合格した試験以降、最大で連続5回まで免除を受けられます(試験概要)。試験は年2回なので、科目ごとに分けて受ける計画を立てられます。期限の数え方と申請の注意点は電験三種の科目合格の記事にまとめています。
難しさを数字以外で確かめるなら、4科目の本試験問題を1問ずつ解いてみるのが早道です。どれも令和7年度下期の問題です。
電気事業法43条:電気主任技術者は選任が義務づけられている
電気主任技術者の仕事は、法律で設置者に義務づけられた役割です。電気事業法43条1項は次のとおりです。
事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。
出典:電気事業法 第43条第1項
ここでいう「事業用電気工作物」からは、直前の42条1項の括弧書き「(小規模事業用電気工作物を除く。以下この款において同じ。)」により、小規模事業用電気工作物が除かれます。43条は続けて、次のことも定めています。
| 項 | 内容(条文の要点) |
|---|---|
| 2項 | 自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)の設置者は、主務大臣の許可を受けて、免状を持たない人を主任技術者に選任できる |
| 3項 | 選任・解任したときは、遅滞なく主務大臣に届け出る(2項の許可を受けた選任を除く) |
| 4項 | 主任技術者は、保安の監督の職務を誠実に行わなければならない |
| 5項 | 工事・維持・運用に従事する者は、主任技術者が保安のためにする指示に従わなければならない |
条文の出典は e-Gov 法令検索です(2026-10-02 時点の現行条文)。「やめとけ」の理由に挙がる責任の重さは、4項・5項のとおり、保安の監督を任され、従事者がその指示に従う立場であることに対応します。
設置者には、主任技術者の選任のほかに、事業用電気工作物を技術基準に適合するように維持する義務(39条1項)や、保安規程を定めて届け出る義務(42条1項)もあります。法規では、こうした保安の仕組みもあわせて出題されています。
この論点の問題を解く:
- 主任技術者の選任・職務・指示に関する記述の正誤(令和5年度上期)
- 受電電圧7,000V以下の需要設備の保安体系(令和4年度上期)
- 事業用電気工作物の技術基準への適合(令和6年度上期)
- 自家用電気工作物の保安規程に定める事項(令和5年度下期)
「仕事がきつい」と言われる点を条文で確かめる:職務・保安規程・事故報告
「電験三種の仕事がきつい」「電気主任技術者の仕事がきつい」と言われる理由として、責任の重さや緊急時の対応が挙げられます。条文と公的な資料で確かめられる範囲は次のとおりです(条文の出典は e-Gov 法令検索。2026-10-04 時点の現行条文)。
| 確かめたい点 | 根拠 | 条文・資料で言えること |
|---|---|---|
| 主任技術者の職務 | 電気事業法43条4項・5項 | 保安の監督の職務を誠実に行う。工事・維持・運用に従事する者は、主任技術者が保安のためにする指示に従う |
| 保安規程 | 電気事業法42条1項・4項、電気事業法施行規則50条3項 | 設置者が保安規程を定めて届け出る。設置者とその従業者は保安規程を守る。一般送配電事業などの用に供するもの以外の事業用電気工作物では、保安規程に、業務を管理する者の職務及び組織、保安教育、巡視・点検・検査、運転又は操作、災害その他非常の場合に採るべき措置、保安についての記録などを定める |
| 事故が起きたとき | 電気関係報告規則3条1項・2項 | 感電などで人が死亡または入院した事故などが発生したとき、報告の義務を負うのは設置者。事故の発生を知った時から24時間以内に可能な限り速やかに電話等で報告し、30日以内に報告書を提出する |
| 複数の事業場の兼任 | 経済産業省 令和5年3月31日の資料(スライド12) | 高圧以下かつ2千kW未満の事業場を6以内とすることが、兼任範囲の目安とされている |
事故報告の期限:事故の発生を知った時から24時間以内に可能な限り速やかに電話等で報告し、知った日から起算して30日以内に報告書を提出(電気関係報告規則3条2項。表の一部の事故は報告書の提出が不要)。最終確認日:2026-10-04。出典:e-Gov法令検索 電気関係報告規則。
ここから言えることは次のとおりです。
- 責任の重さは条文にある:主任技術者には保安の監督を誠実に行う職務があり、従事者はその指示に従います(43条4項・5項)。報告規則3条が報告の義務を課しているのは設置者で、主任技術者個人ではありません
- 緊急時の期限も条文にある:感電事故などの速報は、事故を知った時から24時間以内です
- 勤務時間や呼び出しの定めは、取り上げた条文・資料にない:夜間の呼び出し・待機・勤務時間を定めた記述は、この記事で取り上げた条文(電気事業法42〜43条、施行規則50条、報告規則3条)と、経済産業省の2つの資料(令和5年3月31日・令和8年2月19日)にありません(2つ目の資料の「労働時間」の語は労務単価の注記の1か所だけです)。「きつい」かどうかを左右する働き方の実態は、これらの資料からは確かめられません
- 働き方の形は選任形態で違う:経済産業省の令和5年3月31日の資料(スライド3)では、主任技術者の選任形態(2023年1月末時点)は、外部委託91%・選任4%・統括2%・兼任2%・許可選任1%でした
保安規程に定める事項は法規でも出題されています。事故報告と保安規程の問題を解いて、責任の範囲を確かめられます。
第三種で保安監督できる範囲と、電気工事士との違い
電気主任技術者の免状には第一種・第二種・第三種があり(電気事業法44条1項)、試験に合格した人などに経済産業大臣が交付します(同条2項)。監督できる範囲は、電気技術者試験センターの資格概要で次のように説明されています。
| 免状 | 保安の監督ができる範囲 |
|---|---|
| 第一種 | すべての事業用電気工作物 |
| 第二種 | 電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物 |
| 第三種 | 電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く) |
同じページでは、高圧または特別高圧で受電するビル・工場などの電気設備や、発電所・変電所・送電線などの設置者に「原則として事業場毎に電気主任技術者を選任し」保安の監督を行わせるよう義務づけている、と説明しています。
電気工事士との違いについて、センターのよくある質問は、電気工事士は「住宅等の電気工事の作業に従事するために必要な資格」、電気主任技術者は「特定の電圧以上で受電する事業場に設置される事業用電気工作物の保安監督を行うために必要な資格」と説明しています。作業をする資格と、保安を監督する資格の違いです。
「電気主任技術者 やめとけ」「難易度」:第一種・第二種まで含めて比べる
「電気主任技術者はやめとけ」「電気主任技術者の難易度」と調べるときは、どの種類の話かで数字が大きく変わります。電験三種は第三種の試験で、第一種・第二種は試験の構成から違います(電気事業法の規定に基づく主任技術者の資格等に関する省令6条・7条。以下「資格等に関する省令」)。
| 種類 | 試験の構成 | 直近の合格率(電気技術者試験センターの発表) | 保安の監督ができる範囲(電気事業法施行規則56条) |
|---|---|---|---|
| 第三種 | 一次試験のみ(理論・電力・機械・法規の4科目) | 令和7年度下期の4科目合格率13.1% | 電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所又は蓄電所を除く) |
| 第二種 | 一次試験(4科目)と二次試験(2科目) | 令和7年度 一次試験35.0%・二次試験16.5% | 電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物 |
| 第一種 | 一次試験(4科目)と二次試験(2科目) | 令和7年度 一次試験32.0%・二次試験31.7% | 事業用電気工作物(範囲の電圧の上限なし) |
出典:電気技術者試験センターのプレス発表 令和7年度第一種及び第二種電気主任技術者試験一次試験の結果について・令和7年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について、電気事業法施行規則56条(条文の出典は e-Gov 法令検索。2026-10-02 時点の現行条文)。56条の表では、どの種類も、ダム水路主任技術者・ボイラー・タービン主任技術者が監督する範囲(水力設備・火力設備などの電気的設備以外)が除かれます。
読むときの注意点は3つです。
- 二次試験は受けられる人が限られる:資格等に関する省令6条3項により、二次試験を受けるのは一次試験に合格した人と一次試験を免除された人です。二次試験の合格率はその人たちの中での割合なので、一次と二次の率を掛けても「受け始めた人のうち免状に届いた人の割合」にはなりません
- 二次試験の科目:同令7条2項で「発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路の設計及び運用並びに電気施設管理」と「電気機器、パワーエレクトロニクス、自動制御及びメカトロニクス」の2科目です。令和7年度の二次試験の合格基準は、第一種・第二種とも「100点満点換算で60.0点以上(実得点180点満点で108点以上)、かつ、各科目ともに平均点以上」でした
- 第三種の範囲の書き方:上の「第三種で保安監督できる範囲」の表はセンターの資格概要の説明で、現行の施行規則56条の表では、第三種の範囲から除かれるのは出力5千キロワット以上の「発電所又は蓄電所」です
第一種・第二種電気主任技術者 一次試験の合格率:令和7年度は第一種32.0%(受験者1,569人・4科目合格者502人)、第二種35.0%(受験者7,211人・4科目合格者2,524人)。最終確認日:2026-10-02。出典:電気技術者試験センター 令和7年度第一種及び第二種電気主任技術者試験一次試験の結果について。
第一種・第二種電気主任技術者 二次試験の合格率:令和7年度は第一種31.7%(受験者772人・合格者245人)、第二種16.5%(受験者3,692人・合格者611人)。最終確認日:2026-10-02。出典:電気技術者試験センター 令和7年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について。
「やめとけ」と言われる理由の一つに挙がる試験の難しさは、第三種なら4科目、第一種・第二種ならその後に二次試験が加わる、という構成の違いとして確かめられます。第一種・第二種の一次試験も含めて受験資格はなく、学歴と実務経験で免状を取る「認定」の方法もあります。条件は電験3種の受験資格と認定の記事に原文の表でまとめています。
第三種の4科目で、公式を使う計算問題を1問ずつ解くと、自分にとっての難しさを確かめられます。
経済産業省の需給見通し:2023年の推計と2026年の資料
経済産業省の電気保安制度ワーキンググループ(第13回)に提出された資料「電気主任技術者制度について」(令和5年3月31日、資料1)は、需給の見通しを次のように示しています(スライド4)。
新たな対策を講じない場合、2030年度時点で、第2種電気主任技術者は、再エネ設備の増加が見込まれるとの主に需要側の要因から、約1,000人不足する可能性。
同様に、2030年度時点で、第3種電気主任技術者は、約800人不足する可能性。人口減少を背景として、その後は主に供給側の要因から、需給ギャップは大幅に拡大する可能性。
読むときの注意点は3つです。
- 前提つきの推計:「新たな対策を講じない場合」の見通しで、「不足する可能性」と書かれています
- 第三種のグラフは外部委託の需給:グラフの題は「第3種電気主任技術者(外部委託)」です
- 資料の時点:令和5年3月31日の資料で、グラフは第9回同ワーキンググループ資料(2022年1月17日)をもとに作成されています
同じ資料のスライド3では、主任技術者の選任形態(2023年1月末時点)は外部委託が91%で、外部委託従事者の年齢構成(2021年3月末時点)は、電気保安協会で50代以上が56%(50代22%・60代31%・70代以上3%)、電気管理技術者協会で61歳以上が77%(61〜70歳33%・71歳以上44%)でした。資料は今後の方向性として「受験機会の更なる拡大」「求められる経験年数の柔軟化」などを検討事項に挙げています(スライド5)。
その後、同じワーキンググループの第16回(令和8年2月19日)に提出された資料「電気保安人材を巡る現状及び今後の課題について」(資料1-2)には、電気保安協会の調査による新しい見通しが載っています(スライド16)。
全国にある電気保安協会の調査によると、電気主任技術者の需給ギャップについて、令和12年度に保安業務従事者※が約500人不足する予想(令和5年9月時点)となっていたが、これまでの制度見直しや業界認知度向上等の取組にくわえスマート保安による圧縮の効果も考慮すれば、令和12年度までに不足が生じないと見込んでいる。
※電気主任技術者免状を保有し、保安管理業務に従事する者
同じ資料は、第三種の免状取得者が令和5年度以降それまでの2倍以上に増えたこと(スライド14)を示す一方、今後の人口減少や自家用電気工作物の増加により「電気主任技術者の需給ギャップが拡大するおそれがある」としています(スライド17)。2023年の推計は第三種(外部委託)全体、2026年の見通しは電気保安協会の保安業務従事者についての調査で、対象が違う点にも注意してください。
電気主任技術者の需給見通し:電気保安協会の調査で、令和12年度(2030年度)までに保安業務従事者の不足は生じない見込み(令和5年9月時点の予想は約500人不足)。最終確認日:2026-10-02。出典:経済産業省 電気保安制度ワーキンググループ 資料1-2「電気保安人材を巡る現状及び今後の課題について」(令和8年2月19日)。
「人生変わる」「意味ない」は何で決まるか
公的な資料からわかるのは、資格がどの場面で必要とされるかという制度の側です。
- 免状が求められる場面:事業用電気工作物の設置者は、免状を持つ人の中から主任技術者を選任する(43条1項)
- 免状がなくても選任できる例外:自家用電気工作物では、主務大臣の許可を受けて免状のない人を選任できます(43条2項)。経済産業省の資料では、この「許可選任」は選任形態の1%でした(2023年1月末時点)
- 資格の期限:更新制度はなく、一度取得すれば原則有効(センターの資格概要)
一方、「人生が変わる」かどうかは、選任される仕事に就くか、今の仕事で資格を使う場面があるかで変わり、公的な統計では答えられません。年収や求人の数字は一次資料がないため、この記事では扱いません。
「役に立たない」と言われるとき:免状が使われる場面を確かめる
電験三種が「役に立たない」と言われるときは、多くの場合、本人の職場や志望先に免状を使う場面があるかどうかの話です。条文で確かめられる範囲は次のとおりです(電気事業法は2026-10-04 時点の現行条文、施行規則は同日時点の2026年4月1日施行版)。
- 免状が求められる対象:43条1項で選任が義務づけられているのは、事業用電気工作物の設置者です。工事の作業をする資格ではなく、保安の監督をさせるための主任技術者を選任する義務で、電気工事の作業は電気工事士の資格の領域です(前の節のセンターの説明のとおり)
- 選任しなくてもよい場合がある:電気事業法施行規則52条2項は、一定の自家用電気工作物(例えば電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備)について、保安管理業務を委託する契約を結び、経済産業大臣(事業場が一つの産業保安監督部の管轄内なら産業保安監督部長)の承認を受けたときは、電気主任技術者を選任しないことができると定めています。この外部委託の割合が91%であることは、前の節の資料のとおりです
- 外部委託を受ける側にも要件がある:同規則52条の2で、受託する個人事業者には、電気主任技術者免状の交付を受けていること(52条2項の場合)に加えて、「別に告示する要件に該当していること」などが求められます。免状は入口の1つで、免状を取れば委託を受けられるわけではありません
つまり、免状を使う場面があるかどうかは、勤め先や志望先が事業用電気工作物(受電設備や発電設備)を持っていて、選任や保安管理業務の担い手が必要かどうかで決まります。自分の状況に当てはまるかは、この記事の後半の「受ける前に確かめておくこと」の表で確かめられます。
この論点の問題を解く:
「仕事がない」と言われるとき:設備の数と担い手の数の公的データ
求人数や就職のしやすさを示す数字は、この記事では書きません。確かめられるのは、設備の数と、保安を担う人の数に関する経済産業省の資料(令和8年2月19日、資料1-2)です。
| 確かめたい点 | 資料でわかること | スライド |
|---|---|---|
| 自家用電気工作物の数 | 増加傾向。外部委託件数の割合は約9割から大きな変動はない | 3 |
| 太陽電池発電所の外部委託 | 全国の電気保安協会と電気管理技術者協会が受託する件数が、約14,000件から約32,000件へ2倍を超えて増加 | 3 |
| 外部委託の受託先 | 10年前と比べて電気保安協会・電気管理技術者協会の割合は減り、その他の電気保安法人・電気管理技術者が増加。ただし直近でも受託先の約3分の2は電気保安協会・電気管理技術者協会 | 6 |
| 協会に所属する主任技術者の数 | 減少傾向にあったが、令和6年度から増加傾向に転じた | 7 |
| 免状取得者の数 | 令和5年度以降、第三種がそれまでの2倍以上に増加 | 14 |
| 今後の見通し | 電気保安協会の調査では、令和12年度に約500人不足する予想(令和5年9月時点)だったが、制度見直しやスマート保安による圧縮の効果なども考慮すれば、令和12年度までに不足は生じない見込み。一方、人口減少などで需給ギャップが拡大するおそれもあるとされる | 16・17 |
この表から言えるのは、設備は増えている一方で、協会に所属する主任技術者や免状取得者の数も増えていて、資料は「不足が生じない見込み」と「拡大するおそれ」の両方を示している、ということです。仕事が増えるとも減るとも、資料は断定していません。免状を取れば仕事に就ける、という保証も、この記事で取り上げた条文と資料には書かれていません。
数字だけでなく、自分の勤め先や志望先がどちらの立場(設備を持つ設置者に雇われて選任される側か、外部委託を受ける側か)に当てはまるかを確かめると、「仕事がない」かどうかを自分の状況で判断できます。
「心が折れる」と言われる勉強の負担を、科目合格で分ける
電験三種は、4科目を一度に受けなければならない試験ではありません。科目ごとに合否が決まり、合格した科目は、申請により最大で連続5回まで免除を受けられます。受験案内には、免除の申請が必要なことも書かれています。
試験免除の権利を行使する場合は、必ず「科目合格」している科目の試験免除の申請を行ってください。
出典:電気技術者試験センター 令和8年度上期 受験案内
結果発表の数字からは、4科目を一度に受けない人が少なくないことがわかります。
- 4科目合格に届かず、科目合格になる人が多い:令和7年度下期は4科目合格者が3,164人で、4科目合格者を除いた科目合格者は6,680人(科目合格率27.6%)でした。直近5回の科目合格率は27.6〜35.7%です
- 4科目すべては受けていない受験者がいる:科目別の受験者数の最小値を4科目受験者の上限とすると、直近5回で、その回に4科目すべては受けていない受験者は、受験者全体の少なくとも31.9〜35.3%です(令和7年度下期は24,176人のうち少なくとも8,250人。当サイトの計算で、実数ではなく下限)
科目別合格率:令和7年度下期は理論23.9%・電力20.7%・機械19.8%・法規21.1%。最終確認日:2026-10-04。出典:電気技術者試験センター 令和7年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について。
「心が折れる」と感じる理由は人によって違い、公的な資料から確かめられるのは、負担を分ける仕組みがあることまでです。分け方の例は次のとおりです。
| 受け方 | 1回に受ける科目 | 4科目を終えるまでの受験回数(最小) |
|---|---|---|
| 一度に4科目 | 4科目 | 1回 |
| 2科目ずつ | 2科目 | 2回 |
| 1科目ずつ | 1科目 | 4回(年2回の試験なので最短で2年) |
免除の期間の数え方と申請の注意点は電験三種の科目合格の記事に、試験日から逆算した勉強時間の出し方は電験三種の勉強方法の記事に、科目ごとの時間配分の考え方は電験三種の科目別の勉強時間の記事にまとめています。1科目ずつ進めるなら、最初に1問解いて、自分にとっての負担を測ることができます。
受ける前に確かめておくこと
「やめとけ」と迷ったときは、次の3点を自分の状況に当てはめると判断しやすくなります。
| 確かめること | 調べ方 |
|---|---|
| 今の職場・志望先で、主任技術者の選任や保安の監督に関わる場面があるか | 職場の電気設備(受電電圧・発電設備)と、誰が主任技術者に選任されているかを確認する |
| 科目合格の期限(連続5回)の中で、4科目の勉強時間を確保できるか | 1科目ずつ受ける場合の計画を立てる(科目合格の記事) |
| 4科目のどれが自分にとって難しいか | 各科目の本試験問題を解いて、時間がかかる科目を見つける |
学習の進め方は電験三種の独学ロードマップ、第一種電気工事士から受ける場合はステップアップの記事で扱っています。
法規と理論の本試験問題で、自分に合うか確かめる
資格の価値は人によって違いますが、試験の難しさは問題を解けば確かめられます。主任技術者の制度を問う法規と、電気理論・電子理論・電気計測を扱う理論から解いてみてください。
よくある質問
Q電気主任技術者は外部委託が多いと聞きますが、本当ですか?
経済産業省の資料(令和5年3月31日)では、主任技術者の選任形態(2023年1月末時点)は外部委託が91%で、外部委託の受託者は電気保安協会が約5割、それ以外の保安法人が約1割、管理技術者が約4割でした。令和8年2月19日の同省の資料でも、外部委託件数の割合は約9割から大きな変動はないとされています。
Q電験三種の免状に有効期限や更新はありますか?
電気技術者試験センターの「電気主任技術者の資格概要」では、「電気主任技術者の資格には更新制度がなく、一度取得すれば原則有効です。」と説明しています。なお、電気事業法44条4項により、免状の交付を受けている人が電気事業法またはこれに基づく命令の規定に違反したときは、経済産業大臣が免状の返納を命じることができます。
Q電験三種と電気工事士は何が違いますか?
電気技術者試験センターは、電気工事士を「住宅等の電気工事の作業に従事するために必要な資格」、電気主任技術者を「特定の電圧以上で受電する事業場に設置される事業用電気工作物の保安監督を行うために必要な資格」と説明しています。工事の作業をする資格と、保安の監督をする資格という違いです。
Q電験三種は役に立たないと言われるのはなぜですか?
免状が法律で必要になるのは、事業用電気工作物の設置者が主任技術者を選任するときです(電気事業法43条1項)。勤め先や志望先にそうした設備(受電設備や発電設備)がなければ、免状を使う場面は限られます。また、電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備などでは、保安管理業務を外部に委託して承認を受ければ主任技術者を選任しなくてもよい制度があります(電気事業法施行規則52条2項)。役に立つかどうかは、自分の職場や志望先に免状を使う場面があるかで決まります。
Q電験三種は仕事がないと言われるのは本当ですか?
求人数や就職のしやすさは、この記事では数字では答えません。経済産業省の令和8年2月19日の資料では、自家用電気工作物は増加傾向で、全国の電気保安協会と電気管理技術者協会が受託する太陽電池発電所の件数は約14,000件から約32,000件へ2倍を超えて増えています。一方、電気保安協会の調査では、スマート保安による圧縮の効果なども考慮すれば令和12年度までに保安業務従事者の不足は生じない見込みとされ、人口減少などで需給ギャップが拡大するおそれも挙げられています。資料は仕事が増えるとも減るとも断定しておらず、免状を取れば仕事に就ける、とも書いていません。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

